2011年4月22日金曜日

OECDによる消費税率引き上げの提案

今日は金曜日のせいか面白い報道が多い。商売柄、日本経済新聞からの引用になるが、内容は同じだ:



消費税率の段階的上げ案も例示 OECD、日本に早期改革求める

 経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は21日、日本記者クラブで記者会見し、日本の財政について「はっきりとメッセージを出せば市場は信認する」と述べ、税制の抜本改革案を早急にまとめるよう求めた。債務圧縮には基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の均衡だけでは不十分として、消費税率を年1%ずつ段階的に引き上げる案も例示した。(1面参照
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 PBは国債の償還費と利払い費を除く政策的な経費を税収で賄えているか示す指標。名目成長率が長期金利を下回る状況では、一定のPB黒字額を確保しない限り、債務残高が増え続ける。
 OECDは日本の消費税率について(1)PBを均衡させるためには5~9%上げ(2)国内総生産(GDP)比3%のPB黒字を確保するためにはさらに6%の引き上げが必要と明記した。
 だが日本の消費税率上げ論議は、高齢化で膨らむ社会保障費の財源確保を念頭に行われている段階。OECDが提言した財政健全化につながる税率上げ論議にはほど遠い。グリア氏は「欧州の税率は16~26%。日本は引き上げ余地がある」と指摘。「消費税は経済に対するゆがみが小さく成長とも整合的だ」として、消費税増税を軸とする財政健全化策を提案した。
 米格付け会社が米国債の長期格付け見通しを引き下げるなど、金融市場はソブリンリスク(政府債務の信認危機)に敏感になっている。東日本大震災で歳出拡大が見込まれる日本を市場や国際機関が見る目は厳しい
(出所:2011年4月22日付け日本経済新聞朝刊)
提案をそのまま実行すると、まず少なくとも10%程度までは上げる。以後段階的に毎年引上げて、10年後には20%にする。そうすれば財政は何とかやっていける。そういう趣旨だ。所得税を引換に減税するとか、法人税を減税するとか、そのようなことはOECDの計算の前提に入ってないのではないか。そんなこともやるなら、もっと上げないと財政がもたないという指摘があったわけだ。
大体、財政がもたないとはどういうことか?具体的なイメージがわかないという向きも多い。ギリシア辺りを調べてみればよいが、上でアンダーラインを引いた最下行に尽きる。
国債が売れなくなる
という一点だ。日本は国内で消化できているから大丈夫という人も多いが、いまのような低金利の国債、よほどの円高メリットがあって初めて引きあうという理屈を忘れてはいけない。
加えて、数年から10年の間には中国が資本を自由化して、人民元が国際的に取引されるようになるだろう。そうすると、円で財産を持っているより成長率の高い中国の金融資産を持っておいたほうが有利に決まっている。10年後の中国もやはり経常収支は大幅黒字で国際競争力は一層高まり、中産階級も育っているだろう。銀行から預金は流れだし、中国へ流出し、日本国内の国債は売り叩かれる状況になる。暴落である。そんな非国民は日本にはいない?とんでもない。ミセスワタナベをご存じないか。愛国心があるからと言って、背に腹は変えられない。それが普通の人の理屈だ。
その時、財政が健全化していないと預金封鎖しかない。その後に、デノミを行って新円が発足し、旧円1万円は新円5千円程度で引き継がれよう。こうして既存国債は償還される。
他にも政策ツールは様々あるが、経済の冷厳な論理を最後まで騙し通すことは、いかなる国家、国民にも不可能だ。
「さてどうする?」という切所に差し掛かっているわけだが、大震災とエネルギー危機、それから年金大改革、これらを解決しなければならないのが現実だ。一つだけでも大変だ。国鉄改革、郵政改革、ちょろい、ちょろい。カリスマ的リーダーが二、三人は登場しないとしのげないのである。戦国末期には織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と同地域から連続して英雄が輩出し、さしもの混乱を極めた日本に天下泰平が到来した。これら歴史上の人物レベルの人間が相次いで登場しなければ日本は土俵を割って、この国はIMFかOECDといった国際機関の管理下に置かれる可能性が完全に否定できない。否定したくとも躊躇する。そこが怖い。それが、正直、昨今の政情だ。
今日の新聞は他にも「これは!」という記事があった。
  1. 品不足。値上がり続々。店頭価格、震災後に一変。 ⇒ 一過性か、それともインフレマインドが台頭するかを要注意。インフレマインドは長期金利にまず反映されてくる。国債の流通利回りの動きがポイント。通常債とインフレ連動債の金利との差が期待インフレ率に相当する。
  2. 対日輸出、アジアで停滞。シンガポールは電子機器28減。成長率押し下げ要因。 ⇒ 日本の生産低下はアジアの生産を抑える要因になる。国際産業連関表からもわかる。日本の復興投資が上向けばグローバルな生産にもプラスになる。
  3. 日銀の西村副総裁が会見「秋口から回復、可能性高い」 ⇒ 5月から6月にかけて回復へ、というのは大阪支店の見方だった。サプライチェーンは6月から7月にかけて回復へという見込み。ここが新しい内容。まあ、やはり半年程度は生産が低迷するだろう。復興への動きは秋以降に顕在化というのが妥当なところか。

それにしても県の復興本部設立と復興計画策定方針を表明した宮城県知事が「国も速く復興への総合的な枠組みを示してほしい」と言っているのは当然至極のことだ。一番不思議なのは、なぜ基本法案すら出せないのか?この点につきる。野党は協力すると言っているのだが・・・。
現在の菅内閣は故意に復興体制作りを遅らせているのじゃあるまいな?既存の統治機構を破壊して、なにか創造したいことを隠しているのではあるまいな?東電の株価が風評に翻弄されるままに放置しているのも解せぬ。あとでインサイダー取引疑惑で摘発するターゲットを既に絞っているのかもしれぬなあ・・・
色々な疑念が様々によぎる現内閣である。


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