2011年9月22日木曜日

米FRBのツイスト・オペレーション

第三次量的緩和(=QE3)がいずれ実施されるのではないかと予想(ないし期待)されているアメリカのFRBだが、今回は先ずバーナンキ議長主導下で、短期債売り、長期債買いのツイスト・オペレーションが採られることになった。

Bloombergでは以下のように報じられている。
The Federal Reserve will replace $400 billion of short-term debt in its portfolio with longer- term Treasuries in an effort to further reduce borrowing costs and counter rising risks of a recession.
The central bank will buy bonds with maturities of six to 30 years through June while selling an equal amount of debt maturing in three years or less, the Federal Open Market Committee said today in Washington after a two-day meeting. The action “should put downward pressure on longer-term interest rates and help make broader financial conditions more accommodative,” the FOMC said. (By Scott Lanman - Sep 22, 2011 8:17 AM GMT+0900)
効果としては、いまの実体経済の状況から、短期金利はわずかに上昇あるいは横ばい。長期金利は低下。長期金利の低下は設備投資需要を刺激するはずであるという目論みだ。

学部レベルのマクロ経済学の目線で議論すれば、金融政策で長期金利を低下させれば設備投資需要を増やせるという話しになり、投資需要の増加は経済全体に波及して景気拡大に結びつくという結論になる。しかし、実際に設備投資を決めている要因は長期金利ではなく、長期的な期待成長率であり、さらに現有設備の稼働率がもっと重要だ。従来事業とは別の新規事業に打って出るのであれば、従来事業とどう取り組むか、現有設備をどう処理するか。バランスシート全体のバランスなども考慮するべきポイントになる。金利が低いままで続くこと自体はいいのだが、金利だけではいかにもインパクト不足だ。

マネーの量的緩和ではなく、ポートフォリオ管理政策を使って短期金利を強めにしようと考えたのは、為替レートへの配慮だろう。しかし、開放体制の下で金融政策が財政政策よりも景気拡大政策としては有効である理由は、金融緩和が安めの為替相場を誘い、それが輸出需要を刺激するという副次効果を期待できるためだ。為替相場も両にらみで、長短金利のイールドカーブを補正することで経済全体を上に持っていこうと考えるのであれば、それよりは量的緩和をしっかり行った上で(=長期国債を買い支えた上で)、政府が財政政策を行う方が、景気拡大にはずっと確実だ。かつ即効性もある。加えるに、いまの時期にドルの短期金利を上げるのは、欧州金融機関にとっては、切ない仕打ちになるのではないだろうか。

要するに、このところの野田新政権への批判 — というより政治評論サービス専門家たちの流行の言い回しでもあるが — 「何をしたいのか、それが分かりませんね」。同じく、今回のFRBの措置も、何が目的であるのかハッキリとしないと思うのだな。

いずれにしても国際通貨としてのドルの信認は、アメリカ経済の構造を考えれば、長期的に低落するのに決まっている。今後時間をかければ、金融部門を立て直すことくらいはできるだろうが、経常収支で黒字を稼げない以上、できるのは海外から借りて高利回りで運用することしかないわけである。である限り、ドルが国際通貨の座を降りるという今の流れを逆転させるのは、もう不可能であると見る。アメリカはまず自国経済の回復を確実にするという観点に立つべきではないだろうか。

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