2011年12月8日木曜日

オランダ病と無縁であるのは日本の幸運ではないか

日本のデフレと政府・民間の資金偏在も困った問題だが、資源国は資源国で悩みは深いのではあるまいか?この10年で資源高・製品安がずいぶん進んだ。日本にとっては交易条件が悪化したわけであり、買うものは割高になり、売るものは買い叩かれている状況だ。円高が進むと、製造業は「売れなくなる」と叫ぶのだが、それじゃあ円安になって安く売れればいいか?製造業は作ったものが安値販売できるからいいが、日本全体で見るとそれは数がさばけるだけのことだ。Made in Japanが安くしか売れなければ、結果として、生活水準は下がるのが必然だ。問題のコアは、買うものが割高になり、売るものが割安になってしまっている点にある。つまり日本品と外国品の相対価格=交易条件が悪化したことが、生活水準の悪化を招いている。本当に怖いのは石油価格の上昇、鉄鉱石の上昇、輸入農産物の上昇であり、円レートの上昇ではない。

資源高・製品安で打撃を受けるのは、同じく製造業立国で暮らしている韓国も同じことだ。「ウォン安がうらやましい」などと言う人は経済の理屈を知らないと言われても仕方がない。この点だけは、日本も韓国も同じ悩みをかかえている。売り手としては競争関係にあるが、利害はかなり一致している二国なのだな。

さて、それでは資源国は濡れ手に粟で悩みは全くないかというと、そう決まったわけではない。日本銀行がコモディティ価格と資源国通貨との相関を分析したレポートを公表している。天然資源を豊富に供給できる資源国としては、真っ先に中東産油国を思い浮かべるだろうし、他にもオーストラリアやカナダが該当する。北海油田で潤ったイギリスにもある程度は当てはまるかもしれない。日銀の結果では
近年、ファンダメンタルズが示唆する以上に、コモディティ価格と資源国通貨の相関が高まっている可能性があること、またそうした中で、これまで資源国通貨がコモディティ価格に対して有していた先行性も失われていること(両者の同時性が強まっていること)がわかった。こうした変化が生じている中では、コモディティ価格と資源国通貨が相乗的な形で急変動する可能性がないかという点は、国際金融市場の動向をモニタリングするうえで、注意を要すると考えられる。
このように資源国の為替レートが国際商品市況とシンクロして変動する傾向がある。つまり資源高が続けば、当該国の通貨は恒常的に割高に評価される傾向が出ているわけだ。もし日本が幸運にも新たな金鉱脈を見つければ、それが原因になって円高が一層進むだろう。通貨が急速に増価してしまうと、外国品は安く買えるので国民の生活水準は守られるが、その国の生産物は(農林水産業、製造業などを含めて)すべて割高になるため、輸出が困難になり、また外国品が安価になるので、国内の産業発展は困難になる。埋蔵量に限界のある天然資源があるばっかりに、それを売って暮らしていくしか、暮らしようがなくなる。これまた<比較優位の原理>のなせる結果ではあるが、将来を考えると、これまた不安の種に違いない。このような症状を<オランダ病>という。

日本は無資源国であり、持たざる国であるため、やむなく輸出立国でやってきたとよく言われる。しかし、持たざる国でなく、持てる国であれば、持っているものを売るしか生計のみちがない。そんな可能性もあった。人を育て、技術を磨き、毎日努力することが採算にあっていたのは、資源を持っていなかったためである。同じないなら、ないことのもたらしたプラスの面を見たらどうか?何も持っていないことですら、それがマイナスとは限らないのだ。

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