2012年1月6日金曜日

The Year of Europeで年は明け、増税論争で春を迎えるか?

ロイターがソロスの発言を紹介していた:
[6日 ロイター] 著名投資家のジョージ・ソロス氏は、ユーロの崩壊と欧州連合(EU)の分裂は国際金融システムに破壊的な結果をもたらすことになるとの見方を示した。インドの各紙が報じた。 
ビジネス・ライン紙によると、ソロス氏はインド南部の都市ハイデラバードで、「ユーロは現在、EUの政治的結束を脅かしている可能性がある」と指摘。「ユーロが崩壊した場合、EUの分裂につながるだろう。それは欧州だけでなく、世界の金融システムにとって破壊的な事態となる」と語った。 
エコノミック・タイムズ紙によると、同氏は「(ユーロ圏危機は)2008年の危機よりも深刻で脅威になっている」と指摘した。 
また、ミント紙によると、同氏はビジネススクールのイベントで、「債権国と債務国」の不均衡によって、一部のユーロ圏諸国は短期的に、さらなる緊縮財政措置を取る必要があるかもしれないと述べた。 
「残念ながら、彼らは深刻な金融危機をまだ解決しておらず、状況悪化につながっている。しかも解決策が見つかるかも全く分かっていない」と指摘した。(配信:2012年 01月 6日 15:24 JST)
 EU加盟国の間では、共通通貨ユーロを将来とも維持していこうという誘因が弱まり、一部に脱落国が出ても仕方なしという割り切りが浮上しているという状況をさしているのであり、この点は極めて当然の判断だと小生も考える。大体、英国はEUのメンバーであって、通貨ユーロは使っていない。ユーロを使うのが当該国にとって損失であると判断すれば、その国はユーロ圏から離脱すると考えるのが理屈である。

ただ現実に離脱国が出てくると、それは世界に対する強烈なコミットメントになり、世界が欧州を見る目線が大きく変わるだろう。

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日本国内は、税と社会保障の一体改革。具体的には消費税率引き上げで盛り上がるだろう。普通に考えれば、内閣と政府が<不退転>の決意で臨み、与党もそれを支えるのであれば、その政策は可決されて、実行される。仮に参議院で否決され、首相が衆議院を解散して国民の信を問えば、国民は再び民主党を支持する可能性が高いと、小生はみている。仮にそうなれば、現内閣は長期政権になるだろう。ただ、これは足もとの民主党が一枚岩になっているときのことだ。増税反対が得票数増加につながると予想する議員は、当選したいがために党の方針に反対するだろう。数的に限定的であれば、何という事はないが、与党内が粒状化し、与党体制が空中分解する可能性もある。その可能性が出てきた時、敵前逃亡のごとく方針を転換すれば、野田現政権はそこで終わりである。造反が100名未満にとどまり、与党内が純化されれば、執行部は正面突破を選んで政界再編成を仕掛けるか、仕掛けられるかという可能性がある。戦前期日本でも政党はダイナミックに離合集散を繰り広げた。当たり前である。

これからの日本は、「首相一年の使い捨て」どころか、「半年もてばいいほうだ」という政治状況を予想の視野に入れておいたほうがいいだろう ― いやあ、これは目が離せません。そう思うのは小生だけではないはずである。

いまNHKのニュースでは、前回(1997年)の消費税率引き上げでは、半数近い中小企業が販売価格に転嫁できなかったことを紹介している。地元のスーパーでは、3%から5%に引き上げられた消費税率をそのまま販売価格に転嫁したが、大手スーパーが販売価格を据えおいたので、販売数量が10%程度落ち込んでしまった、そんな声を紹介していた。

消費税率引き上げにもかかわらず販売価格を据え置くのは、低価格販売攻勢の意図がこめられている。マクロ経済上のデフレという症状は、ミクロのレベルにおける<自作自演の安値戦争>によって引き起こされている面が無視できない。小生思うに、大手スーパーが消費税率引き上げという好機を利用して、低価格攻撃をしかけ、競合店舗から顧客を奪うとすれば、それはコストや顧客評価からは根拠づけられない<不当廉売>に該当する。コストや顧客評価とは無縁の安値戦術は、市場による公正かつ効率的な流通を阻害することを忘れてはならない。大手企業が低価格攻撃をしかけるのは中小規模のライバル企業を屈服させて支配するためである。そのようにしてシェア上昇を目指す真の目的は、より強い交渉力を得て、売り手には低価格を押し付け、買い手には高めの価格で販売する状況を作ることである。有利な業界構造を形成するための投資として、現在は安値販売を選んでいるだけである。政府は呑気に<低価格は消費者の利益にかなう>などと傍観するべきではない。一度、市場支配力が形成された後、それを抑制するのは大変難しい政策課題である。

デフレーション下で政府が本気で消費税率を引き上げるつもりなら、公正取引委員会と経済産業省は、<便乗値上げ>のみならず<攻撃的安値販売>を防止することにも、厳重な注意を払う必要がある。インフレ下、デフレ下によらず企業の機会主義的行動を抑止することが政府の大事な責務である。

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欧州、税制、そして震災復興。それに経済産業省がリークし始めているエネルギー市場の構造改革。今年は日本の将来を決める一年になるかもしれない。

経済的にも、政治的にも。

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