2012年2月13日月曜日

左の小指をつめれば、右もつめろ、最後は詰め腹となる

野田総理、岡田副総理の「まず身を切れ」戦術が中々功を奏することができないでいる。消費税率引き上げ、社会保障と税の一体改革へ国民の「より一層の」理解を得ようと、自民党谷垣総裁の地元(京都府舞鶴市)に副総理が乗り込んだとのこと。そうしたところ「官僚の給料や数を減らしてほしい」、「衆院の比例定数削減をやってほしい」との声が相次ぎ、専守防衛に徹さざるを得なかった。北海道新聞を読んでいるとこんな記事が目に入った。

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なにかそんな感じで議論が進んでしまっているのだなあ、と。最近よく口にされている数字に沿ってもう一度書く。大体、国の予算規模は支出が90兆円。ところが、税という自己収入は半分の45兆円もない、というかまあ半分とみてよい。身を切れというが、議員・職員の人件費は5兆円位だ。給料をゼロにしたって、まだ40兆円の赤字である。「これどうするの?」というのが、正に今しなければならない議論である。岡田副総理、このこと分かっていらっしゃるのか?身を切る議論などしている場合じゃあ、ないのである。

赤字事業をどうするか?これが議題である。「給料をさげれば、クビを切れば、何とかなる」話しではないのである — クビを切ってしのごうという経営自体がそもそも失敗の象徴ではあるが。

だから岡田副総理は地方公務員の給与も下げてほしいと言い始めた。だとすれば、国家予算だけではなく、中央・地方の政府全体で赤字を考えないといけない。<国民経済計算>という日本株式会社の決算報告がある。そこから「一般政府の部門別勘定(GFS)(6ー2表)」を取り出してみる。国の予算とは少し違う様子が見えてくる。

支払い項目のうち<雇用者報酬>をみると、平成22年度は中央政府が6兆円、地方政府が23兆円、他に社会保障基金という部門があるが、会計上の存在なので、発生している人件費はせいぜい7千億円程度だ。つまり政府部門全体の人件費は、約30兆円という金額になる。これに対して、業務収支(=収入−支出)は38.3兆円の赤字だ。更に、固定資産の取得など資産取引を加算すると、結局、政府全体の借金は40兆円増えた。これが平成22年度である。全国・全職員の給料をゼロにしても10兆円の赤字だ。

給料ゼロにするんですか?あとはどうするの?これが最大の問題なのである。そもそも、いま検討されている給与引き下げは25年度までの時限措置であり、恒久的な引き下げ措置ではない — 団体交渉権なくして人事院勧告を超えて使用者側の裁量で恒久的に給与を引き下げるのは明らかに憲法違反だからだ。

民間企業であれば、赤字はどの事業部から発生しているかを問うだろう。「赤字なら仕方がない、賃下げを飲んでもらおう」と経営陣が言うのは仕方がないが、賃金が高いから赤字が出ているわけではなく、赤字は赤字事業から出ている。市場賃金を下げないで、その企業の賃金を下げれば、人が出て行く。残るのは低賃金が相応の人材である。賃金をゼロにしても、その企業の赤字は解消されない。組織がなくなるだけの話しである。政府部門の管理の話しをしないといけない。身を切る、指をつめる話しをせよと言っている訳ではない。自からそんな話しにしているだけのことである。そんな話しに自らするのは、身を切るから、あとは任せてくれと言っているのに等しい。

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26年度になったら公務員給与を元に戻すんですか?戻せるんですか?左の小指を詰めたら、右も出せと言われませんか?最後には、腹を切れと言われませんか?恒久的に給与を下げたままにしようと言い出したら、労働組合は行政訴訟に出て、憲法裁判に持ち込まれますよ、と。そうなったら政府には打つ手がないよ、と。日本社会は混乱するよ、と。それが心配なのではありませぬか。

野田総理、岡田副総理、ならびに民主党は、国民と正面から向き合って、正々堂々、議論を開始するべきである。この赤字を何としましょうか、と。ギリシアはそれで往生しているが、欧米先進国は淡々とやっている。日本にできないはずがない。

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