2013年1月31日木曜日

2013年は本当に景気拡大するのか?

アベノミクスによる緩和政策で世の中の体温が大分温まってきたところだ。安くなるのを待っている人はともかくとして、株価は、落ちるより騰がった方がやはりムードは明るくなる。株価は先行指標の一つである。先行指標が上がってくると、経営者の姿勢も前向きになる。そうすれば設備投資も増えるはずだ。本当に増えると、先行指標が再確認され、経営者マインドはもっと明るくなる。こうして好循環がはじまるわけだな。

しかし・・・というと、またまた小生のへそ曲がりであるのだが、GDP統計をはじめ主なデータが利用できる最終四半期である昨年7~9月期までの数字を見る限り、必ずしも今年の景気の先行きが明るいという予測数字は出てこないのではないか。

たとえば景気動向指数を四半期化した数字をGDP統計の設備投資(IP)と並べて描くと下図のようになる。上が先行指数、下がIPで、前年比で描いている。
景気の山、景気の谷、どちらで比較してもやはり先行指数が設備投資に先行して変動していることが分かる。この二つにVARモデルを当てはめて、推定・予測したのが次のグラフだ。
やはり上が先行指数、下が設備投資である。データの終期は昨年第3四半期である。これをみると、ミニ景気後退が底打ちするのは本年第1四半期にかけてである。その後、先行指数は上向くのであるが、設備投資の回復への動きはそれほど勢いの強いものではないと思われる ― もっともVARモデルを当てはめる以上、定常性を前提しているのだが、上の前年比の動きはそう見えないかもしれない。

設備投資を単独にとり出してボックス・ジェンキンズ流にARIMA予測してみると、以下のようになる。設備投資の前年比は定常であると判断してよいとわかる。ここではARIMA(3,0,0)(0,1,1)と同定している。ドリフトはない。

縮小された図では判別しにくいが、右端6期、青い線で描かれているのが設備投資の実質原系列の予想ラインである。やはり必ずしも拡大とは予想されていない。

いうまでもなく統計的予測は、従来のパターンに沿って変動するとすれば、足元ではどちらに向かうのか、そういう短期予測に優位性をもつ手法である。だから数年、ましてや20年程度の長周期循環を追跡するのは苦手である ― というか、GDPデータ自体、1994年以降のデータしか提供されておらず、10年を超える長期循環をGDPデータから捕捉するのは難しい。

現在のアベノミクスが日本の経済政策決定メカニズムを根本的に変え、市場の期待形成メカニズムを変え、これまでとは別のレジームで経済が動いていく。そんな期待から日本経済の新たな成長が始まりつつあるのだとしたら、それはそれで結構なことであるし、それは昨年秋までの経済データを観察していても分からないことである。まあ「分からない」と言い切ると、足下のレジームを憶測する方法は複数あるので間違いになるが、これは別の機会に。

文字通りに景気とは<気>、みんなの気分、市場のムード。そういうことかもしれない。だとすれば、失われた20年もかなりの部分は、実態というより心理的な結果であり、自ら招いてしまった経済停滞であったことになる。本当にそうなのかねえ・・・心理だけじゃないだろう。小生は、そう思ったりもするのであるが、それほど昨年10~12月期以降の好転、というより<好転への期待ぶり>は予想を超えるものである。

ずっと続けばいいんすけどネ。そう思う。



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