2013年2月12日火曜日

疑問 ― 北朝鮮核実験の目的は?

本日午後、北朝鮮は三回目の核実験を実施したとの報道。
【ソウル時事】北朝鮮は12日、朝鮮中央通信を通じ、「北部の地下核実験場で第3回地下核実験を成功裏に行った」と発表した。「以前と違い、爆発力が大きいながらも、小型化、軽量化された原子爆弾を使って高い水準で完璧に進行された。多様化されたわれわれの核抑止力の優秀な性能が物理的に誇示された」と表明。事実なら、ミサイルに搭載できる核弾頭化に近づいたことを意味し、国際社会にとって大きな脅威となる。・・・
(出所)時事通信、2月12日(火)14時48分配信
 ここで多くの人が抱いている共通の疑問。なぜ北朝鮮は核実験を行うことに意義があると考えるのか?

<1>

核実験成功のあとには核弾頭ミサイル開発が進められ、仮に北朝鮮が安定した性能の長距離核弾頭ミサイルを保有するとする。この場合、核弾頭ミサイル保有が北朝鮮の利益になるのか?

ありうべき攻撃に対して十分な報復能力を持っておくことは、相手による攻撃を確かに抑止する。では、北朝鮮を攻撃する誘因をもつ国がいま存在しているか?

一国もないのではないか。攻撃し、その地域を支配する誘因をもつには、その地域に人的、物的あるいは有望な自然資源がなければならず、その資源を自国の利益のために活用できる見通しがあって初めて先制攻撃する動機をもつ。北朝鮮にそんな資源があるとして、その資源を利用したいのであれば、軍事的に攻撃するよりは、北朝鮮は食糧、エネルギーなど国民生活を支える生産力が不十分なのだから、経済援助、貿易政策を通して利益を追求する方が低コストである。

<2>

北朝鮮が他国を攻撃する目的で核兵器を保有する意志をもっているのか?

実際には核兵器を使えるわけではない。しかし、<まさか使うことはあるまいが>と思わせる大量破壊兵器を保有していて、その国の政治体制、意思決定システムに不安定性が認められるとき、その大量破壊兵器が偶発的に使われるのではないかと懸念される、その懸念こそが既に他国にとっては<脅威>である。その分、北朝鮮は他国に対して交渉上の地位を強化できるだろう。とはいえ、合理的に考えれば、「使えない兵器」であることに違いはなく、危険の存在がどの程度まで、北朝鮮の外交交渉上の地位を強化するのか、定量的評価は難しいと思う。

<3>

他国による侵略を抑止する手段としても、そんな侵略を考えている他国は実はなく、逆に他国に脅威を与えるための手段としても、本当に北朝鮮の交渉上の優位を形成できるのかどうか、明らかではない。

意味がないことをやっているように見えるのだな、北朝鮮は。

他国に対して軍事的脅威を与えるアグレッシブな姿勢を貫き、それが他国によるタフな反応を誘発し、それが自国にはマイナスとなる。そんな場合には、攻撃を控えめにして他国にはソフト・コミットメントをとる。ビジネススクールでは、こんな<子犬戦略>を推奨するはずである。が、実際に北朝鮮が選んでいるのは<狂犬(Mad-Dog)戦略>である。

合理的な根拠から、狂犬戦略が選ばれることはない。

<4> 

確実であるのは、核開発を進めるための巨額の資金を投入しているということだ。

その巨額の資金を農業開発、産業開発に投入していれば、食糧支援、エネルギー支援を続ける中国政府に対しても、現在のようにヴァルネラブル(Vulnerable)な状態に陥ることはなかったかもしれないのだ。いやいや・・・何をしても、中国は北朝鮮を支援する政策を変更することはないだろう。それは北朝鮮もわかっている。とすれば、自国で農業開発をするよりも中国の農家に必要な食料を生産させておくほうが北朝鮮には得である。北朝鮮が得をすることによって、その利益を失いたくないと、そう北朝鮮が考える、そのこと自体が中国には利益となる理屈だ。少なくとも、北朝鮮のミサイルが中国に飛んでくるはずはなく、飛ぶとすれば中国の外である。とすれば ― 全ての非共産主義国は中国の敵であるとすれば ― これまた中国の利益であろう。これも確かにロジックだ。

もしもそうなのなら、こういう関係を<中朝腐れ縁>というのだろうなあ、と思う。どうも共産主義政権の思考回路という奴は、50年は遅れている。何年前の時計をみているのか、そんな黴臭さはそこから漂ってくる。

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