2013年5月7日火曜日

本当に株価は上がっていくだろうか?

「今年の株価は今までとは違う」とロイターが書いている。
[東京 7日 ロイター] 投資家のリスク選好度が大きく回復している。市場予想を上回った4月米雇用統計で、米景気の停滞懸念が後退。欧州利下げもドイツが態度を軟化させたとの見方から一段の緩和に期待が広がっている。
ドルは100円手前で再び足踏みしているものの、日経平均は1万4000円を回復した。期待先行の市場の状況は変わらないが、欧州問題などで年央にかけて相場が調整した過去3年間とは違うとの強気ムードが広がり始めている。
夏場にかけて低下するというより、5月には米株は下がるので、ここで売っておいた方がいいとは言われてきた。実際、今年初めに買った米・Amazonの株価は以下のようだ。


Source: Yahoo! Financeで作成

赤い200日移動平均線をみると、昨年はほぼずっと停滞していた。Amazon株を長期でみると、2000年のITバブル崩壊後には大暴落したし、その後の上昇トレンドの間にも長い低下局面が繰り返しみられている。とはいえ、リーマン危機後には安定した上昇を続けてきたから、昨年の停滞は強い印象が残り、アマゾンの経営戦略は今後もうまく行くのかという心配も広がったようだ。移動平均ではなく時点間の比較でみても、2011年秋の250ドルをいまだ完全に抜けてはおらず、Amazon株は文字通り停滞している。Facebookに至ってはIPO後の急落の後、ずっと30ドルを抜けないままで、とても将来的な成長を窺える状態では(まだ)ない。

アメリカの株式市場は、たまに高値更新のニュースが飛び込むものの、全体としては今年の1月からずっと期待はずれであった。

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ところが、ロイターが報じているようにアメリカの雇用統計でいい数字が出た、住宅投資はもともと底打ちの兆候がある。アメリカの家計もいよいよリーマンショックから本格的に回復してきた。欧州もドイツ経済が踊り場にさしかかり、それもあって金融緩和を容認しつつある様子だ。欧州中央銀行はゼロ金利政策はとってこなかったので金利引き下げ余地があるという理屈だ。
Der ifo Geschäftsklimaindex für die gewerbliche Wirtschaft Deutschlands ist erneut gesunken. Die Unternehmen bewerten zwar ihre aktuelle Geschäftslage weiterhin mehrheitlich als gut, jedoch deutlich zurückhaltender als im Vormonat. Auch die Erwartungen an den zukünftigen Geschäftsverlauf sind nochmals zurückgenommen worden. Die deutsche Konjunktur legt eine Verschnaufpause ein.

今年の世界景気は、欧州から冷水を浴びる心配は遠のいたという判断だ。
過去3年間、市場センチメントが夏場に崩れたのはいずれの年も欧州債務問題がきっかけだった。今年はECBが打ち出したLTRO(長期資金供給オペ)やOMT(国債買い入れプログラム)で信用不安は後退しているものの、ユーロ圏の経済は依然悪化している。「金融システムの維持が最優先課題で景気は二の次」(国内投信エコノミスト)との批判もあったECBが緩和路線に踏み出せば、市場はリスクオンへの障害が一つ減ることになる。
短期金利がゼロに張り付いている日米と違って欧州はまだ0.5%の利下げ余地がある。ドラギECB総裁は追加緩和の可能性を示唆しており、今回と次回合わせて50ベーシスポイントの利下げが実施されれば、景気への刺激効果も期待できる。財政面でもイタリアのレッタ新首相のように緊縮財政路線の方針変更を打ち出す国も出てきた。(出所)ロイター、5月7日15時59分
世界経済に暗雲を投げかけていたのは何もヨーロッパだけではない。日本の何も決められない政治、円高を放置する開き直った姿勢、これらもまたマイナス要因の一つに数えるべきであったろう。それも安倍内閣の発足で正反対の状況になった。

新興国のどこかで突発的な混乱がない。もちろんこれが大前提だ。

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現在の<アベノミクス>が成功するか失敗するかは予断を許さず、成功するという理論的見通しもあるわけではないと小生は思うが、経済理論は概して間違っていることも散々経験させられてきた。そもそも標準的理論を支える重要な仮説が、データから立証されてきたとはとても言えない。そう見ている。とすれば、<アベノミクス>にもチャンスはあろう。

「ホントはこうするべきなんだよね」と常に正論を言う人はいる。というか、いなければならない。しかし、医学にしても経済学にしても相手は人間だ。どうしてもその正論を実行する意欲がない、実行したくない、別の方法をとりたい。そんな場合は、あくまで説こう、聞くまで待とうでは知恵がないだろう。時間は無限にあるわけではないのだから。

その意味で、今度ばかりは株価が上昇軌道を歩み続ける。そんな期待も出てきているわけである。本来の政策というよりマインド・コントロールである。

オーケストラが良い響きを出すためには技量を上げる、楽器を交換する、楽員を交代させる、練習量を増やす。そういう実際の行動の裏付けが必要であり、マスメディアに露出して人気が出ても、チケット販売枚数が増えたとしても、弾く人、弾く曲、使う楽器が同じなら同じだと言うのが本筋だろう。しかし、ドイツの名指揮者フルトベングラーが部屋の入り口に立っただけで、その瞬間、ベルリン・フィルの音色は一変して、音の温もりが増したそうである。

もっと良好なパフォーマンスをやってのける能力をもっているのであれば、能力を発揮するためにはメンタル面も大事である。まずは心理に訴えるという発想も政策ツールの一つでありうる。これまたロジックであることは認めなければなるまい。<ホントかいな?>政策は、そうはいっても、まずは1年か1年半。この位が限度なのじゃあないか。昔ならこの間に『▲▲総合計画』を新たに公表したところだ。今度はどうつないでいくのだろう?

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