2013年6月10日月曜日

昨日投稿の補足ー日本とフランス

昨日は、訪日したフランス・オランド大統領の<いい間違い>を書いた。これは井戸端会議の域を出ないが、対フランス関係はこれまでも日本にとって貴重な外交的リソースであり続けたことは、しっかり記憶しておくべきだ。

戦前期、駐日フランス大使を勤めたポール・クローデルの著書『孤独な帝国 日本の1920年代』は、以前、本ブログにも投稿したことがある。1920年代というと、アメリカは「永遠の繁栄」と称される黄金期であったが、日本は第一次大戦中の好景気の反動に関東大震災の復興負担も加わって、経済的には苦渋にみちた時代になった。クローデルの著した本は、「大正デモクラシー」や「国際協調主義」という言葉でくくられることが多い反面、アメリカの拡大志向ーと言ってしまうと間違いなのだろう、大国化し国際的影響力を強める新興国が必然的にとる姿勢というべきかーの中で展開される外交戦略によって、徐々にアングロサクソン陣営から切り離され、孤立化を深めるこの時代の日本を、東京で観察し続けた職務日誌である。

その中でクローデル大使は、アメリカの戦略にはまりつつある日本へ同情を交えた眼差しを向け、日本との関係を強化することによるフランスの国益拡大、それが日本の利益という観点からも望ましいはずであるという報告を、フランス本国に定期報告していたことが分かる。

実際には、日本はワシントン体制に組み込まれ、29年の世界大恐慌後は満州事変、その後は日中戦争、インドシナ進駐、真珠湾奇襲、インドネシア侵攻へと文字通りの右往左往をたどったわけだ。ドイツを利用したといえばその通りだが、対日経済制裁の看板にもなった「ABCD包囲陣」にフランスのFの字はなかったー前年の1940年6月にフランスはドイツに降伏しているので当然でもあるのだが。

フランスはいま中国から貿易戦争を挑まれている。中国は、ドイツを味方につけ、フランスを狙った報復戦術をとろうとしているー具体的にはこの報道を。フランスも、まあ、日本カードを使う時機なのだろうが、今後の日欧FTA交渉を考えれば、フランスが日本にとってのリソースであるとも考えられる。フランス側に立てば、対欧農産品関税率で日本が譲歩することが頭にあるのだろうが、日本にとってフランスは貴重な外交的リソースであるというのは、幕末も、戦前期も、今も変わらない事実である。

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