2014年11月10日月曜日

日中会談-とりあえず損をしない選択が「定石」である

考慮するべき要因が多すぎ、一つ一つをとっても確実な見通しが得られないとなると、これは真の意味での「不確実(=Uncertainty)」である。

展開が不確実なゲームには、トランプや麻雀があるが、碁や将棋、チェスなど運の入り込む余地がないゲームであっても、その時々の選択肢は複数ある。こちらの選択に応じる相手の反応は確定的には予測できない。となると、これまた先行きは不透明、真の不確実性が生じてくるわけだ。日中二国間の外交ゲームも状況は似ている。
領土問題や歴史問題、そして靖国神社参拝をめぐって高まっている緊張を乗り越え、安倍晋三首相と習近平中国国家主席は10日、北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)の開催に合わせて握手を交わし、より機能的な外交関係の構築に向けて歩み寄った。これはスタートと言える。

 とは言え、このビデオでも分かる通り、両首脳の会談はあまり友好的と言えるものではなかったようだ。習国家主席は見るからに安倍首相の挨拶に応えるのを拒否し、写真撮影の間中、まるで、尖閣諸島(中国名:釣魚島)から乏しい草木をむしり取っている一匹のヤギと握手しているかのように見えた。
(出所)WSJ, 2014-11-10

何と日本国の首相がヤギの扱いをされているのだが、たとえ相手をヤギと思おうが、ウシだと思おうが、ここで握手をしておけば損はしないと。そんな判断が双方にあったから握手となった。そう見るのが理屈だろう。まずは双方、「定石」を選んだというわけだ。

日本の方から主導的に宥和的姿勢をとるのは可能だが、中国側は「引かば押せ」とばかりに自国の利益を強硬に求めてくる可能性を否定できない。この目線は中国側もそっくり同じであろう。市場ゲームと違って国家には「退出」という選択はない。攻撃を続行しても最後には反撃を予期しなければならない。相手側から協調的姿勢を引き出そうと思うなら、いずれかの時点で和解を提案する必要がある。とはいえ、そうするにはそうするで"When"と"How"という難問を解かなければならない。

要するに「名案」がないのである。握手のほかには。

アジア経済圏にとって最良の結果は、いずれかが「大国」となり、安定的なアジア経済圏が形成されることだ。それが可能なら全てのプレーヤーが利益を得られる。覇権を握らなくともフォロワーの利益が十分大きければ、覇権を得るための闘争は損である。が、(残念ながら、これが最大の問題だと小生は思っているが)中国は地理的な大国であるが大国にふさわしい文化・文明を提案できていない。日本は(今となってはそう呼ぶ人もいないかもしれないが)「経済大国」はともかく、歴史を通して多民族国家を円満に運営したことがない。更に、中国だけではなく、アメリカにもアジア経済圏のプレーヤーであろうとする強い意志がある。

中国はアメリカの同盟国である日本を弱体化することは国益であるし、と同時に強い日本との距離を近づけることもアメリカに対して相対的な国益となる。どちらの方向をとっても中国には国益だろうから、<いまAPECで握手をする>くらいは妙手とまではいえないが、中国にとっては好手となるはずだ。

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