2015年4月30日木曜日

本日の株価急落の見方は

本日の東京市場・日経平均株価は10時15分現在で前日比300円安の急落を演じている。米景気の先行き不安が主因だという。

確かに先日公表された2015年第1四半期の実質GDPをみると、季調済前期比で僅かに年率0.2%の微増と急低下していて、これがちょっとしたショックであったようだ。

しかし、前期比というのはランダムな要因で凸凹があるものだ。というより、そもそも統計数値には誤差がつきものであり、季節調整計算も不完全だ。

同じ実質GDPを前年同期比でみると、先行き不安でショックをうける数字ではない。



非農業雇用者数と概ね同じ拡大傾向を安定的に続けている。前年同期比は、過去1年間の前期比を後方移動平均(というか移動合計)した値なので位相のずれが混じる。なので、景気の山谷を判断するには不適切だ。とはいえ、季調済前期比の低下が最も重要だというには、前年同期比の回復傾向は余りに安定している。ITバブルとミレニアムショックのような一過性要因もこれといってない。

やはり「5月になったら売りにげろ」という米市場の格言とそれを見越した東京市場の株価独演会。そんな風に見ているところだ。



2015年4月28日火曜日

日米首脳会談―「天王山」になるか

訪米中の安倍総理にとってオバマ大統領との首脳会談は正に政権の持続可能性にもつながってくる「天王山」と言えそうな行事、というか「ハードル」なのだろう。

米紙の報道はかなり厳しいらしい。Yahoo! ニュースではWall Street Journalの記事を紹介しているが、こんな下りもある。
記事はまた、安倍首相が第二次大戦中の日本の行動に関する謝罪について「あいまい」な態度を取っており、アジア地域の緊張を高め、米国の不信を招いていると解説。
27日付一面だから、良きにつけ悪しきにつけ、何を言い出すかと視線を集める渦中の人物なのだろう。ある意味、V.I.Pなのだと。そうなのかもしれない。

上の記事は訂正するべきだ。

『アジアの緊張をたかめ、米国の不信を招いている』の次に、『さらに、首相の言動には日本国内でも疑問や不安が広がっている』という語句を挿入するべきだろう。そう書いていないのは、訪米中の安倍総理に対する米側のリスペクトを表現するものだろう(としておく)。

どうしても戦前期・日本による「侵略」という文字には抵抗があるようである。報道記事を通してそう伝えられている。植民地経営が是とされる時代から門戸開放と非戦を旨とする時代に急速に移り変わったのが19世紀末から20世紀初頭にかけての潮目の変化である。その分水嶺はもちろん第一次世界大戦であったのだが、リアルタイムで同時代に生きていた日本の指導部は、時代の先手を打つという世界戦略的思考ができるはずもなく、ただただ少し昔に獲得した利権を守ることを最優先事項にしたのであった・・・・・・。そして少数の跳ね返りのエリート分子が軍部を押さえ思うがままの政策を実行した。国民や政治に基盤をもったものではなく、コップの中の軍国主義、大多数の日本人はやはり被害者であるという歴史認識はそう大きく間違ったものではない。こんな歴史観なのだね、小生は。

数学のように是非が明確につけられるわけでもないのが、世界史に生きる人間社会の現実だが、大日本帝国がもう少し賢明に行動できる余地は十分にあったと思う。しかし、これらはすべて「敗軍の将、兵を語る」であり、言えばいうほど愚か者扱いをされるだけの話しであろう。

やはり自国の首相である。一人の日本人としては今度の日米首脳会談が戦略的な中身に支えられた充実した会談になってほしいものだ。そう願うのだ、な。




2015年4月25日土曜日

「事変」≠「戦争」の議論が今後増えるだろう

本日の道新の1面はその対照ぶりが大変面白かった。

一つは『自衛隊、海外活動全面拡大へ 安保法制、27日実質合意』というヘッドライン、もう一つは『昨年の衆院1票の格差』で、札幌高裁が違憲判決を出したというものだ―違憲ではあるが選挙は有効という結論だから、最近主流になっているロジックに沿っている。

う~~む。小生個人としては、武力の裏付けがある自衛隊が海外で広く活動するほうが違憲であるという感じがするし、一票の平等と不平等が憲法で明確に定義されていないにもかかわらず公職選挙法など選挙関連法が違憲だと判断するのは奇妙な思考だと感じる。

まあ、これから安保関連法案が可決された後、山のような違憲訴訟が相次ぐであろうことは今から予想できることである。

集団的自衛権については確かに内閣が憲法解釈を変更する権限があるとは思う。が、世界のどこでも自衛隊が活動できるということになると、結局は「国益」の存在に基づいて派兵、いや派遣されるのではないか。だとすると、国権に基づく武力の派遣、つまりは武力の行使とどこが違うのだろう。

いやまあ、出てくるわなあ・・・、神学論争のテーマ候補が続々と。大変だと思う。多分、法学部の憲法学者は、いかにこの行動方針が日本国憲法と両立しうるのかで頭を悩ませるだろう。

いずれにしても言えることは、自衛隊が活動する中で発生する紛争は全て単なるトラブル、つまり「事変」であり、敵対勢力との「戦争」ではないという議論になるということだ。この点だけは憲法で禁止している以上、結論は決まっている。行われる議論は、結論から逆向きにどうロジックを通していくか。そういう仕事が今後は議院内閣制国家の僕たる官僚の仕事になるのだろう。

ヤレヤレ・・・。

これって「政治の堕落」に該当しないか。というか、民主主義の堕落ってことか……。

☓ ☓ ☓

北海道ではフキの新芽が大分伸びて、タンポポの花が満開だ。桜も例年になく早く開花した。チューリップが咲くのももうすぐだ。

この季節に似合うのはマティスの絵画だと思っていて、一年周期でパラパラと画集をめくっている。




内地では桜の花見が習慣だが、先日投稿した通り、桜にまつわる小生の個人的記憶はどれも淋しくて憂鬱になるものばかりだ。

だから、此の地に来てライラックが咲く季節こそ花見に好適であるのを知って嬉しくなったものだ。とはいえ、上のライラックはちょっと違うねえ・・・。まあ、マティスにはマティスで何かの記憶がライラックにはあったのだろう。


2015年4月24日金曜日

経済の日経にしては解せんこと

ドイツの一般紙"Frankfurter Allgemeine (FAZ)"にアマゾンの直近四半期の業績が報じられていた。今月23日付けである。
Der weltgrößte Online-Einzelhändler Amazon arbeitet wieder mit Verlust. Im ersten Quartal gab es ein Minus von 57 Millionen Dollar nach einem Gewinn von 108 Millionen Dollar vor einem Jahr. Der Umsatz wuchs um 15 Prozent auf 22,72 Milliarden Dollar, wie Amazon nach amerikanischem Börsenschluss am Donnerstag mitteilte. Beides war am Markt in einer ähnlichen Größenordnung erwartet worden. 
Die Aufmerksamkeit der Investoren zogen aber die erstmals veröffentlichten Zahlen zum Cloud-Geschäft auf sich. Demnach setzte Amazon im vergangenen Quartal mit den Dienstleistungen rund um Services aus dem Netz 1,57 Milliarden Dollar um. Das war ein Sprung von fast 50 Prozent im Jahresvergleich. Das Cloud-Geschäft verdient auch Geld mit einem operativen Ergebnis von 265 Millionen Dollar. Die Investoren wollten schon lange mehr Klarheit darüber, wie das kostenintensive Cloud-Geschäft bei Amazon läuft. Die Aktie legte nachbörslich zeitweise um mehr als vier Prozent zu.
Source: Frankfurter Allgemeine Zeitung, 23-4-2015

 見出しだけを見ると”Amazon macht 57 Millionen Dollar Verlust"となっていたから、『やれやれまた赤字決算か・・・』と、うかない気持ちでアマゾンの株価を確認したところ、意外に上がっていたので驚いていたのである。

赤字は赤字でも投資家は内容の良さを評価した。そういうことであるようだ。アマゾンのクラウド事業が前年比50%のペースで急速に規模を拡大しつつある。クラウド事業は恒常的な収入源にもなる。この分野はITメガ企業がどこも関心をもっていて価格競争が激化しているということであったが、アマゾンの提供するAWS(Amazon WEB Services)はここにきて業界標準となりつつある。そんな機運が出てきているのだろう。それでアマゾンの株価は4%あまり上がっている、と。

さてと・・・やっぱり独語は読みづらいわい。というので日本経済新聞を検索してみた。ところが出ないのだね。

上に引用したFAZの記事はこの後、マイクロソフトの業績、グーグルの業績を紹介している。小生が見たかったフェイスブックは前四半期に赤字決算を出して、案の定、株価は2%ほど下がっていたので、この辺をどうみるか。投資家の見方を知りたかったのだが、FBの解説はなかった。それでも、米国のITメガ企業の足元の業績については、当然のことながらドイツ人も関心をもっている様子が伝わってくるではないか。ドイツ人でアマゾン株やグーグル株を持っている人も多いだろうし、クラウドサービスの将来性を把握したい人も数多いるだろう。そして、この点は日本人も同じであるはずなのだな。

ところが、日本を代表する日本経済新聞ともあろうものが、何も書かない。おかしいねえ・・・ないはずはないのだが。しかし紙面にはないし、検索にもかからない。

小生の調べ方が下手なのか……。

Wall Street Journalは自国のことなので勿論このAmazonの成果は記事にしている。

【追伸】

おかしいねえと思っていたら、本日の夕刊でAmazonの報道が出た。
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アマゾン・ドット・コムが23日発表した2015年1~3月期決算は、最終損益が5700万ドル(約68億円)の赤字(前年同期は1億800万ドルの黒字)となった。赤字は2四半期ぶり。積極的な先行投資に加え、ドル高の影響で海外収益が目減りしたのが響いた。売上高は前年同期比15%増の227億1700万ドルとなった。

 今回の決算で初めてクラウドサービス「アマゾンウェブサービス(AWS)」の業績を公表した。利益は前年同期比8%増の2億6500万ドル、売上高は49%増の15億7千万ドル。収益性が市場の一般的な想定よりも高いことが分かった。同分野でアマゾンは市場シェア約3割を握る最大手。ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は「AWSは(売上高で)年間50億ドル規模の事業で、急成長が続いている」との強気のコメントを出した。

 新たな事業の柱が順調に成長していることに反応し、同日の米株式市場の時間外取引でアマゾンの株価は同日終値から一時7%上がった。
何だか文章の展開順序は上のドイツ紙とほとんど同じだなあ・・・。まあ、いいか。どちらにしても、ビッグデータビジネスの覇権争いから当分目が離せないのは分かっているだろう。

2015年4月23日木曜日

「就活」の人間関係における非対称性

経済学や経営学を学んでいる人なら「情報の非対称性」という言葉を知らない人はいないだろう。

情報が非対称であると、たとえば中古車市場では(というか、人材紹介業でも金融市場でも医療市場でも)レモンの問題が発生する。組織管理で非対称性があれば、手抜きが蔓延する。

情報ばかりではない。此の世はいたる所に非対称な関係がある。就活市場も非対称であるし、面接当事者、つまり面接を受ける学生と面接をうける人事担当者の人間関係も非対称である。

★ ★ ★

非対称であるのはフェアではないというなら、この世でフェアなのはせいぜいスポーツの試合くらいなものであろう。

ビジネスは大体が非対称でありフェアではない。というか、あらゆる企業は強者となって支配力をもちたいと願っているものだ。消費者は商品の詳細を全て知ってはいないものだ。支配力の行使があまりに目に余る場合は不当な行使ということになり、労働基準局や公正取引委員会の事案になる。言えるのはこれ位ではあるまいか。

就活では、学生もさることながら、面接をする担当者もまた「吃驚▲▲」、「不愉快○○」、「スマホ□□」、「傲慢◇◇」等々、多種多様な驚くべき生態が観察されているようだ。

学生が真剣に人生のハードルに立ち向かっているのだから、面接をする社員の方も同程度に真剣であってほしい。それがフェアである、と。おそらくそんな心理は広く共有されているのだろう。

☆ ☆ ☆

雑駁に割り切ってしまうと、こちらが真剣であっても、相手が真剣になってくれないというケースは山のようにある。というより、それが常態である。それ故に、問うべき質問は『これだけ自分が真剣であるのに、先方が真剣になってくれないのは何故か?』と、こうでなくてはなるまい。

問題があれば、それは発生するべき原因があって発生しているのであり、なすべきアクションは原因を確認して、解決が必要であれば解決することである。解決の必要がなければ、問題とされる現象はそれが合理的な現実なのだから容認して放置するべきである。

困ったことが全て「問題」であるとは限らない。利益を得たり、損失を被ったりするのは社会的メカニズムの重要な側面の一つだ。就活は「公正な評価」を行うべき場であると同時に、「ビジネス」を経験し、発生した問題があれば解決する、その最初の経験が就活である。そうも言えるのではないだろうか。

2015年4月22日水曜日

『国家の責任としてやるべきだ』と、世論がまとまる時こそ歴史の分岐点だ

人は誰でも自分は間違っていない、そう考えるところから怒りを発したり、相手を攻撃したりするものである。間違っていると認めた瞬間に気分は萎えるものである。
過ちて改めざる、是を過ちと謂う
わが過ちを認識しながらも改めないのは、主観にとらわれているためで、煩悩だ。

しかし、自分が間違っていることを事実として容認するためには、明確なエビデンスがいる。たとえば、数理関係なら計算をして合わないのですぐに分かる。道徳的なことは世間からバッシングされることで、痛い目にあい、それでかたがつく。戦争に負けることで痛切に反省することもある。

ここには、正しいことをしていれば結果が悪いはずはなく、結果が悪いのはどこかが悪かったからだ、と。そんな単純で功利主義的な同義反復がある。

戦前期・日本の「誤り」だが、日露戦争のあと相対的に平和な時代を30年近くの間ずっと続けていながら、突如として1931年になって満州事変という攻撃的侵攻に打って出た背景には、ちょうどその頃、日本が満州に持っていた利権が中国の民族主義の高まりの中で危機に直面していた。そんな背景が本質だろう。『10万人の英霊と20億円の国費を投じた聖域』を国が守らずして誰が守るのか。当然、そんな議論になる。海外旅行にもいかなかった大多数の日本人が「外側からみた日本像」などを語れるはずはなかったろう。

この「許せぬ」という感情が広く国民に共有されていたからこそ、満州事変を企画した作戦参謀・石原莞爾達は何ら軍律違反で裁かれることもなく、逆にその後の栄達を得ることができた。

同じ感情は現代の日本にもあるのではないか。

  1. 高齢者を守る責任は国にある。彼らこそ高度成長を支えたのだ。
  2. 格差が拡大する中で貧困に悩む多数の人たちがいる。彼らを国は守らねばならない。国の政策で現在の境遇に至ったからだ。
  3. 高い福祉を実現することが、それ自体として正義に反するはずはない。後退は許さぬ。
  4. 一票の格差は許すべきではない。権利の平等に反するからだ。

戦前には、国民の正義が戦争を許し、求め、拡大し、戦後は社会保障を求め、拡大した。それが正しいという理念があるからだ。

ベクトルは正反対だが、正しいことを実現するためには犠牲をかえりみない。議論すら許さない。この哲学だけは共通している。この行動原理もまた日本病といえば日本病であろう。

2015年4月20日月曜日

アメリカ株の急落の影響はないようだ

先週末の米国株がダウ平均で前日比280ドル安のかなりの急落となったので、今日の東京市場はツレ安になるのじゃあないかと思っていたところ、先週末比55円高と案外しっかりしているので一安心しているところだ。

まあ、アメリカの株価低落だが、景気の実態が悪化したことによるものではないことはハッキリしている。



3月までの鉱工業生産指数の前年度比をグラフにしているが、上にみるとおり、足元では落ちているがリーマン危機後は概ね3%程度の安定的な回復を続けている。この基調に変化は全くない。



同じデータソースから非農業雇用者数を対前年増加数でみると、基調としては横ばい、というより増加トレンドにある。雇用の増加に懸念がないのであれば、景気が今後悪化していくと予想する根拠はない。

多少の心配があるとすれば物価である。


消費者物価指数の前年比上昇率は次第に低下傾向にあり、足元では<デフレ入り>寸前である。この背景に石油価格低下があったことはいうまでもない。

株価の低下は景気の悪化というより、物価の低下がもたらした貨幣的現象である。こうみるのが穏当だろう。


その株価も低下基調に入ったと即断できるステージではない。2014年の17000ドル水準から2015年は17500~18000ドルへ切りあがったか、と。そう思っていたところが、中々、抜けない。生産がリーマン危機後ずっとジワジワと回復・拡大している。そんなペースとバランスしながら、株価もジワジワと上昇している。まあ、そんな状態である。金融当局がいわゆる「流動性相場」を演出しようという意思をもっていない。これも図から読み取ることができるし、それが本筋でもある。



下がってきた石油価格(WTI)も、上のグラフにみるとおり、4月に入ってからは低落トレンドが一先ず落ち着いて、今後は(どこまで上がるかは不確定だが)反転上昇することはまず確実である。

米経済は、従来の常識とは真逆の状態になっていて、石油価格が下がれば先行き不安が広がるようになっている。ということは、石油価格があがれば楽観的な見方が広がる理屈だ。

例年であれば"Sell in May and Go Away"がNY市場の鉄則であったようだが、今年の5月がどうなるかは分からない。



2015年4月18日土曜日

何事もうまく行かない方が当たり前なのだが・・・

知人の娘婿が仕事の関係から鬱病を発症して大変苦しんでいるそうだ。実は、小生の亡くなった父も ― 当時は「鬱病」という用語自体が馴染みがなかったから精神内科で受診することさえ不名誉の限りであったが―担当したプロジェクトが職場の労働争議で座礁したのをきっかけに、何年か鬱病を患い、家族がみるのも辛い毎日を送ったものだ。心の病の怖いところは、たとえ寛解しても全治というわけではなく、一度骨折したところがもろくなっているのと似ていて、何度も繰り返し心が弱まるときがやってくることである。父も回復したものの、子どもの時から知っている父とは別の人柄となり、同じ性格の人には遂に戻ることができなかった。父はもう随分昔に亡くなっているが、こんなことを書いていると、またその頃のどこにも逃げ場がないような押しつぶされそうな心境になってくるのは不思議である。

学校で何かを教わったり、年長者が自分の経験を語り継ぐことによって、どれほど苦悩に直面している当人を救えるのか正直分からない。分からないのだが、この世の現実を言い表す言葉はいくつもある。
不自由を常と思えば不足なし
は徳川家康の遺訓だが、ゲーテの名言もある。
もっとも悪しき日に生まれたものには、悪しき日々すらも快適だ。 
西東詩集『箴言の書』
TVの新番組でも精神内科医が登場した。それだけ罹患している人は多数に上っているのだろう。ドラマをみていると精神分析系の治療法から脳科学系のアプローチまで最近では複数の流儀に分かれてきているようだ。

どちらにしても心の病は、風邪やインフルエンザのように1週間や2週間たってから『どう?よくなった?』とは言えず、まあざっとみて1年が相場、というか半年たって悪化してきたのなら、良くなるのも半年はみておく。そのくらいの心構えで焦らずに快方をまつ。それしかないようである。まして、特効薬など、あと二十年もしたら市販されるのだろうかと。待つしかないようだ。

話しだけを伝え聞くと父が苦労をした時と状況はいまだに本質的には変わっていないようである。

2015年4月16日木曜日

Pythonで難儀するよりPowershellで楽にいくか・・・

統計分析をやるならいま流行のPythonよりRが圧倒的に簡潔であり高機能だ。

それならデータファイルのハウスキーピング的な役回りをやらせようとしたものの、その日本語の扱い方がどうも好きになれず、結局、Powershellのコマンド1行で済ませてしまった。半角$でMathJaxのTeXモードになってしまうので、全角$を使っている。ちょっと恥ずかしい。

ls . -Recurse | where{
($_.Extension -eq ".pptx") -and
($_.LastWriteTime -gt (Get-Date).AddMonths(-7))}
 | copy-item -Destination ".\AllPPTX"

結果は

PS C:\Users\茂\Dropbox\統計分析‐2015\Lecture> ls . -Recurse


    ディレクトリ: C:\Users\茂\Dropbox\統計分析‐2015\Lecture


Mode                LastWriteTime     Length Name                                                                                                     
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da---        2015/04/16     11:52            AllPPTX                                                                                                  
da---        2015/04/14     10:19            M1                                                                                                       
da---        2015/04/07     17:22            M2                                                                                                       
da---        2015/04/06     10:43            M3                                                                                                       
da---        2015/04/14     10:57            M4                                                                                                       
da---        2015/04/14     10:58            M5                                                                                                       
da---        2015/04/06     10:44            M6                                                                                                       
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da---        2015/04/06     10:44            PDFNote                                                                                                  
da---        2015/03/05     21:14            QC-Slides                                                                                                
da---        2015/03/27     16:08            素材                                                                                                       


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-a---        2015/04/13      9:31    4783799 パワーポイント‐M1‐2015.pptx                                                                                     
-a---        2015/04/10     10:21      20627 統計分析‐当日プリント‐2015‐M1.docx                                                                                 
-a---        2015/04/13     10:10      21215 統計分析‐当日プリント‐2015‐M1‐回答例つき.docx                                                                           


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-a---        2015/03/28     18:41    3910866 パワーポイント‐M2‐2015.pptx                                                                                     
-a---        2015/03/16     19:48     635108 余市アンケート‐質問票.pdf                                                                                          


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-a---        2015/03/12     12:17      76684 Data_Science_VD.png   


色々と調べても、ちょっとした作業がうまく行かない開発言語よりは、一寸確かめるだけでやりたいことがすぐ出来るシェルスクリプトのほうが、よっぽど効率性が高いツールだ。

なので、せっかくインストールしたPythonなのだが、また失業してしまった次第。何をやらせるかねえ・・・。福島真太朗『Rによるハイパフォーマンスコンピューティング』では、定番の航空管制データ"airlines.csv"をPythonで前処理していたが、あれもなあ・・・、確かに大きすぎてExcelでは開けない。VBAが使えない。それなら、本来のVBでやってしまえばいい。

やはりWindowsは.NETでできている。Powershellは.NETで動いている。直接.NETを操作できる。Windowsでしか仕事をしないのなら、Pythonの失業期間はどうやら長引きそうである。

2015年4月14日火曜日

安倍政権:時代錯誤の妄言の一例

保守と右翼は本質的に意味の違った言葉であるし、まして日本の極右は国家改造を目指しているうえでは共産主義にも類似したいわゆる過激派である。違いは方向性だけである。

今日書こうと思っていることは本日の日経が社説にしていたので書くことがなくなった。
国立大学でも入学式の国旗掲揚・国歌斉唱を義務づけようという総理と文科相の国会答弁である。
 しかし学習指導要領に定めがある初等中等教育と、大学とは根本的に違う。大学はその運営も教育・研究の中身も自主性、自律性が尊重されるべき存在だ。世界中から人を受け入れる空間でもある。大学のグローバル化が急務となるなかで、国公立、私立にかかわらず画一的な統制はなじまない。(中略)
大学に対する政府の役割は、入学式をどう営むかといったお節介でなく、教育・研究の水準向上や多様性確保である。政府はこの問題で、これ以上の口出しは控えるべきだ。国立大学協会など大学サイドでも、きちんと対応を議論すべきではないだろうか。
そもそも天皇絶対の古代政権下の和歌に歌詞が由来し、旧幕時代の大奥で歌い継がれてきた君が代は現行憲法下の国歌にふさわしくない。ま、そんな議論は置くとして、非生産的なコントロールはただですら周回遅れの日本の大学全体のパフォーマンスを更に低下させるだけである。上層部に上がれば上がるほど、そこにいる人の中身は空ッポになるのが、日本の昔からの伝統であるとしても、『〽情けなきこと涙コボルル』という感覚は、民主党政権以来久しぶりのことであった。

大体、学習指導要領・・・、あれは何なんだろうね。もちろん義務教育には一定の必修的要素があるべきで、これは当たり前だ。とはいえ、教える内容と教え方まで全部決めることはないだろう。ま、常識的には5割を必修・検定付き。あとの5割は指導要領や教科書検定もいらない自由授業とするべきである、な。

半分も自由科目としたら日本国民の知的水準が低下する、はたまた反社会的な内容が教えられるのではないかという、そんな心配はご無用だ。普通の人は役に立たないことは勉強したくないものだ。反社会的な事柄を最初から勉強しても損である。真に自分の力になることを学びたいはずなのだ。故に、学習指導要領の運用範囲を半分にすれば、日本人の知的水準や創造力はまず確実に高まるはずである。良い結果を出してこそ税金が生きるというものだ。無駄に使っちゃあ、またまた『〽情けなきこと涙コボルル』だ。

そういう戦略の下で、学校組織を最適化し、最適化された学校に適した教員スタッフを任用・配置する・・・というのがマネジメント専門家なら誰でも語るはずの常識だ。

2015年4月12日日曜日

RとPython: ファイル・ディレクトリー操作と日本語

統計ソフトであるRは実際には開発言語である面がある ― というより、言語そのものである。しかし、複数のディレクトリーに散在している同一修飾子のファイルをまとめて、別の一つのディレクトリーに移動するような、単純だが大量にあると耐えられない作業は、やはりRでなくて普通の開発言語でやるものだ。

統計分析自体に限れば、最近人気が出てきているPythonは、とてもとてもRの代わりになるものではない。そう断言してもいい。

しかし、▲▲分析の計算に入るのは統計分析のどちらかと言えば最終段階なのだ。それ以前に多数のデータファイルを整理したり、まとめたり、ディレクトリーをきれいにしたりする、そんなHousekeeping作業が無秩序に進行するのが普通である。

そういうゴタゴタ仕事にRを使う御仁は(よほどのマニアでない限り)いないだろう。最近の小生はもうWindowsでしか仕事をしないので、雑用は手でやるか、量が多ければVBでやるか、そんな意識が強かったが、せっかくインストールしたPythonだ。言語なんだから、科学技術計算ツールのPython(x,y)でもこの位は出来て当然。そんな役の振り方をしているのだな。

しかしというべきか、それにしてもというべきか、Pythonのあの日本語処理。あれは何なんだろうね……。

今日はこれだけを一言メモしておこう。

Rでは何かプログラミングをするとき日本語の扱いで面倒になることはない。分析自体に日本語は不要だし、面倒になりそうな作業ははじめからRではやらないと言う方が正確だ。しかしネ・・・、Pythonって開発言語でしょ。多言語のコードをユニコードで統一的に扱いたいというのは分かるが、日本には日本の事情というのがある。一寸したことを一寸やるために、何故こんなに学習しないといけないのか、と。前にもスーパーの経営幹部の人と話したことがあるが、大半の会社においては "Python + R"、というより、"Excel VBA + R"のほうが、いわゆる「つぶしのきく」データマイニング・チームになるだろう。いや出来れば"Excel VBA"だけで業務をこなしたい。ま、それはかえって難しさを増すことになるのだが、それでも(非大都市圏にある)普通の企業はそう思っているはずである。

営業だけでも言葉の壁があって昨今大変なのに、システム開発作業の中にまで言語のゴタゴタを持ち込まないでほしい。これが共通の思いだろうねえ・・・、そんな風に感じるこの二、三日であります。

ま、多言語をまたいで作動することが鍵となるWEBビジネスでは、複数言語を統一的に記述できるほうが有難いのだろうが。この辺はまた改めて。

2015年4月10日金曜日

ああ、老いも自然でありたいものだ

小生が東京で小役人をやっている頃に「長寿社会」という言葉が流行し始めた。一時の間、広報誌の編集長をやっていて、巻頭座談会に掲載する写真を自ら撮影するため都内を放浪していたのが、今では懐かしい。ある号の座談会のテーマが正に長寿社会だった。それに合わせた写真を小生は公園のベンチを撮った風景にしたのだ。そうしたところ、いやあ怒られました、その部署のトップだったOBに。『齢をとったら公園のベンチに座ってろということか!』と。なぜそんなに怒るのか、何を威張っているのかと、若い小生には怒っているOBの心情が理解できなかった。が、今になると、まあ分からないこともない。そんな風に思うようになった。

しかし、これは個人個人でまったくバラバラなのだろうが、齢をとって公園のベンチに座って、近隣の風景を眺めながら、時間を過ごす。いいではないか。個人的には好きなのだな。やっぱりそんな風に年老いたあとは時間を過ごしたく思う。

老人が孤独に陥らないように地域社会が手をつなぎあって協力しようではないか。分からないでもないが、何か社会的正義をまず先に確立して、その正義にかなった行動を若者世代に要請するという政治哲学は小生は大変嫌いである。その果てに太平洋戦争に黙って出征した学徒兵がいるのだと思っている。

大体、そもそも「正義」というのははじめは誰かの「単なる意見」である。無数の意見が離合集散しているうちはいいが、ランダムな要因からある考え方が核となり、自己組織化されてしまうと、単なる意見であったものが社会的な「正義」となり、「権力」となり、人に対して強制力を発揮するようになる。ま、小生はそんな風に「正義」の生成プロセスを考えている。

話を戻そう・・・

自然でよい。そう思っている。いかにそれが不平等であろうと、いかにそれが淋しそうであろうと、それが年齢相応の過ごし方であれば、それが生物自然の道である。自然の道が神意にそっている。哲学らしきものを小生はもっていないが、持っているとすれば、こんな希望くらいだ。

今日、ノートPCの雑多なファイルを整理しているとバイロンの詩を写した画像がみつかった。


どこで手に入れたのか…、これは『チャイルド・ハロルドの巡礼』の中の一句だろう。『ああ、人工の巧にてその途汚さざる処、あらき姿に自然は最も美なりけり』。

人の手が入ったり、人の考えが入れば、必然的にレベルは落ちるのだ。いいねえ。その通りだ。ありのままの自然に人の尊厳もあり、神が定めるからこそ天寿は神聖なのである。そう思いませぬか。『この世界は、本来、諸行無常。それが真なら、明日をも知れぬ身となって、そこで生きて死ぬのが我が定め。そうは思わぬか、おぬし』。こんな台詞をどこかで使いたかったねえ。

自然の全ての物、現象に神聖を感じる。汎神論的なロマン主義である。ロマン主義でありながら、神聖であるはずの現実を写実する自然主義にも根が通じているというのは正に逆説的である。教会という宗教法人から自然の中に神をみる意識転換があったあと、やがて神は存在せず、人間が人間社会を改善していくしかないという人間が現れる。それが思想となって影響を与える。当局や責任という言葉が頻りに使われるようになる。改良を目指す社会主義はすぐそこにある。窮極的な共産主義と全体主義への共感の芽がそこにある。人間社会は有為転変。風に漂う凧のようでどこにでも行く。

とはいえ、老いたあと時間をどう過ごすかは自分で決めたいものである。神から頂戴した理性と感情でそうしたいと思うなら、たとえ社会がどんな人為的な政策をとろうと、その人の意志が優越すると見るべきである。過激ですかねえ…これは。法治主義に違反するかねえ…、これは。

2015年4月9日木曜日

ビッグデータの罠

伝統的な統計学の大きな柱が推定と検定であったことに疑いを持つ人は(この分野でメシを食う人であれば)いないはずだ。

その統計的推測の基盤が標本分布と標準誤差にあることは、そもそも無作為サンプルが普通は小標本であるのだから、当然のロジックだった。大体、データを集めるには時間もコストもかかる。そんな背景があったのだな。

ビッグデータは必ずしもコスト・ゼロではないが、しかし、「大数の法則」という理論的仮定でしかなかった状態を現実の状態にしつつある。ここが新しいのだ。

実際「ビッグデータ」を小生はGoogle Alertのキーワードにしているが、毎日必ず数件のメディア情報がメールで届く。まるでビッグデータ時代の到来でこれまで分からなかったことが分かるようになった。そんな事実を伝えるかのようにだ。

★ ★ ★

確かにビッグデータによって「これまで分からなかったことを知ることができる」、この点に間違いはない。しかし、ここにビッグデータの罠がある。これまた一つのロジックである。

大体、相関が厳密にゼロという状態は、たとえていえば摩擦がゼロという状態にも似ていて、現実にはありえない。月の月齢と地球上の出生数に何らかの関係がある、だから相関があるというのは古来言われてきたが、では軽井沢の雲の量とパリ市内の交通事故に相関はあるだろうか?そんな相関があるはずはないが一つの思考実験をしよう。実際に毎日毎時のデータを300年間(=2628000レコード)集めるとして、(これでもビッグデータといえるデータではないが)計算される相関係数は厳密にゼロには合致しないはずである。そして260万のデータから計算される相関係数は有意になるはずである。

ビッグデータは、小標本で有意性が出ない、いわば「データの偶然」として判定されてきた関係を全て「有意」とできる。というか、どんな関係も全て有意判定できる。それが常態になる。

「なるほどこんな因果関係もあったか」と。このこと自体は、確かに新しい知識だ。「分からなかったことが確認できたでしょ」というわけなのだが、では「この要因をプラス方向に変化させると、目的変数はプラスに反応するはずだよね」と、「次の結果」を予測しようとしても、「いや、そうとは言えません」と。

ビッグデータを活用してもノイズの作用がなくなるわけではなく、現実はなにも変わらないのだ。分かりにくいことが見えた。ただそれだけである。そして、分かりにくいことというのは、要するに微妙でハッキリしないことであることに変わりはない。

★ ★ ★

ある食品に毒性があるかどうか。それはビッグデータによって確かに立証可能である。では、そのビッグデータで「初めて」毒性が証明された食品は食べない方がいいのか?それは違うでしょ。実はこれがロジックだ。

もしも特定産地のコメを普通サイズの茶碗を1杯と数えるとして1億杯も食すれば有害であることがハッキリしてくる……としよう。思うのだが、ビッグデータで毒性が証明されるとしても、それは無用の証明であろう。なぜなら百歳まで必ず一日三食そのコメを茶碗一杯だけ食べるとしても一生で食べられるコメは11万杯に届かない。11万杯のコメを食べるだけで毒性が出てくるか、有害であるかという問題はやはりハッキリとはしないのである。ビッグデータと関係なく、小標本で有意性を認められないという事実はやはり事実である。

というか、小標本で確認可能な事実こそ、本当に確かで知るに値する事実なのだ。そんな風にすら言えるのはでないか。

日常のビジネスなり、生活は基本的に小標本の結論を信用して用いるべきだ。そんな側面も非常にある。そうも思われるのだ。いやあ、逆説的!そうは思いませんか。

ビッグデータではじめて分かったことがあるとしても、それまでデータが少なかったために「分からない」としてきた結論そのものが誤りであったことにはならないのである。

ビッグデータは確かに新しい利益機会をもたらすものだ。有用なものだ。埋もれていた「情報のクズ」をカネに変える錬金術でもある。しかし、ビッグデータ活用の投資コストがカギであることはこれまでと同じ経済学の理屈が当てはまっている。

2015年4月8日水曜日

悪行の汚名を雪ぐのは至難の業と決まっている

アメリカのランド研究所のことを書いた本となると核戦略の大家・ウォルステッターが半ば主人公のようになる。

その体の文庫本である『ランド 世界を支配した研究所』(文春文庫)をまた本棚から出してパラパラ読んでいると、最後の文句がきいていた。シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」に出てくる一句だ。
人の悪行は死後も生き長らえるが、善行はしばしば骨とともに葬り去られてしまう
人を国と読み替えても(あるいは会社と読み替えても)意味が通じる所が面白い。『知らず悪行を犯すものこそ哀れなれ・・・』。親鸞の悪人正機説にたてば悪行は罪であると同時に業でもあり阿弥陀如来の慈悲の対象となるのだが、残念ながらこの思想は世界に普遍化されてはいない。

それにしても、中国のインフラ投資銀行(AIBB)をめぐっては「戦わずして勝つ。これまさに孫氏の兵法である」などという評論家も多いようだが、この辺、あまり面白い論評を米紙でもあまり見ない。多分、小生の勉強不足なのだろう。

2015年4月5日日曜日

子供の貧困を基本的にどう見ればいいのか


一昨日のNHKの夜のニュースだったか、今の日本に広がる子供達の貧困問題がとりあげられていた。視聴者からもTwitter経由でコメントが寄せられていた。

中でもショックだったのは
子供を資産ではなく負債と考えている。
大きくして大学を出ても、正規社員になれないなら、つくらないほうがマシ
一言一句まで正確ではないかもしれないが、上のコメントだった。まことに暗然とした気持ちになる。

今日もまた新年度が始まる中、非正規労働者の惨状がメディアで紹介されている。


たしかにねえ・・・今の世の中、大学を出ても「正規社員」になれる人は多くはない。小生の上の愚息も大学を出てからずっと非正規労働を続けて糊口をしのいでいる。親と同じ市内にいるから、緊急の時は行ったり来たりできるのが、せめてもの幸せだ。『才ある息子は遠く旅立ち、才なき息子は用なきが故に親元にとどまり孝をなす』。まったくその通りだ。

話しを戻す。

大体において、なるほど正規社員になれないというのは悲しい現状なのだが、では日本の普通の大学を出て、一体どんなスキルとスピリットが身に付くのか?どんな仕事を任せるに足る人間になれるのだろうか?こんな問題意識をもっても的外れではない。



特別のスキルがなくてもすぐ出来る、そんな業務であれば、必要になった時にスポットで人を調達するほうが理に適っている。仕事が終わればスポット契約を一度解消するほうが合理的だからだ。

その単純業務だが、昔の日雇い労働は肉体労働が主であった。しかし今はスキルを要しないホワイトカラーが最も楽な職種になってしまった。そんな現実がまずあるのだな。


すぐに覚えられることはすぐに真似をされる。「すぐに」というのは「安い費用で」と言い換えてもよい。

率直に言って、日本にある大多数の日常的な大学の文系学部で、日本語の教科書を通読し、情報処理センターで何時間かの実習を受けるとしても、高度なスキルは身につかない。真に重要な基礎概念を理解することも難しい。卒業後も日本語・外国語を問わずに良いテキストを読んで勉強を続け、知識を吸収し、持続的に知力を高めていけるのに十分な知的基盤を大学4年間で構築するのは、現在では至難、というより不可能であろう。

構築可能なのは先輩・後輩を通した人的コネクションだろう。しかし、知識とモラルに裏付けられ経済合理性が伴ったコネクションならともかく、いわゆる友達関係は頼むに値せず、結局は10年、20年という時間の中で風化し、裏切られるだけである。

教育は、教師の対面授業を柱とした労働集約的サービスから最新鋭の設備を必要とする資本集約的サービスへと変わった。もはや初等・中等教育の充実で底上げをして何とかなる状況ではなくなってきた。多くの若者が教育を受けても貧困に沈む根本的要因はこの点だと思う。

結局、支払う授業料に見合った教育しか期待できないものだ。当たり前の鉄則がここにある。

年額100万円を日本で4年間支払って高々400万円ほど。やや高級な自動車1台程度の授業料では、アメリカのトップクラスの大学に1年間在籍できるだけだ。医療産業と同じく、教育産業でも最先端高度サービスが手に届く範囲に入ってきた。人を育てるハイウェイが出来てきた。つまり教育イノベーションがいま進んでいる。その波に乗れない人(そして国)は相対的な知的劣位に追い込まれる。

世界には超富裕層が多数いる-というか、増えてきた。そんな富裕層が子弟に最高の教育を与えたいと思う。以前なら『唐様で書く三代目』という格言が当てはまったが、それは役に立たない「虚学」を頭に詰め込んでいたからだ。いま成長しつつある教育産業は上澄み価格戦略をとっている。その内容はアクセスしやすい安価な教育とは異質のものである。

技術革新が速いと陳腐化も速い。先端的な教育基盤を公的教育に大規模・画一的に導入するのは極めてリスキーだ。それ故、支払い能力が高度専門教育へのアクセシビリティを決める状況はここ当分の間は続くに違いない。それは高額かつ間口の狭い教育サービスとなる。

こういう現実が世界にあって、日本の現実に及んでいる。そう見る方がよいと思うのだ、な。


どんな風に生きていけばいいのか?いま稼げる職種は何なのか?こう考える方が自然で合理的な発想だ。

いま人が足りない職種は何か?「大学」や「正規社員」という学制上の学歴や従業上の地位に執着するよりは、実質を求める方がよほど自然である。

そんな「儲かる職種」が何一つなくなってしまえば日本はおしまいだ。しかし、そんな職種はちゃんとある。おしまいなのは「正規社員」という呼び名に執着する常識の方であろう。
建設職人の不足がいっこうに解消しない。建設不況が長引く間に多くの職人がやめた半面、景気が底入れしたあとも若者の建設への就業が進まないためだ。落ち込んでいた職人の待遇の改善は徐々に進み、一部には年収が1000万円を超す人も現れた。しかし、今のところ職人離れの流れが反転する動きは目立たない。構造的な職人不足は今後も続きそうな雲行きで、建設や不動産から流通の出店戦略まで関連企業は労務費高騰への対応の巧拙で業績や成長力が左右されそうだ。

■型枠職人、29歳で大台

 

高層建築の溶接は高い技術が求められる。 
 精密な平面図から建物の立体構造をイメージし、分厚い合板を切り分けてコンクリートを流し込む木の枠を組み上げる。型枠職人は作業の正確さが求められるだけでなく、重い資材を担いで高所で作業することも多い重労働だ。東京中心に仕事を請け負う独立自営の職人、羽鳥浩さん(仮名、29)は「抱えている工事の量からみて今年の年収は1000万円強になりそう」と淡々と語る。年配の職人が不況時に次々とやめていく一方で、自分と同世代の職人がほとんどいない。景気の回復で工事量あたりの単価が上昇し、年収はこの2年間で6割増えた。
(出所)日本経済新聞、2015年3月7日

『大学を出ても……』などと、もはや言うべき時代ではないのだろう。そもそも入れる大学がこれほど多く今だに残存していることのほうが、不思議であり、ガラパゴス的である。

戦後ずっと教育の品質を顧みることなく増えてきた低コスト志向の大学が今は過剰になっている。過剰投資であったのだ。その大学が適正水準にまで淘汰され切ってしまえば、若い世代が「大学=安定した生活=高い収入」という迷信に迷い、進路を誤ることもなくなるに違いない。

その意味では、大学という最後に残った護送船団の一隊を今もなおコストをかけて死守し続ける文科省こそ、「大学を出ても非正規労働の仕事にしかありつけない」時代を、ある面で演出しているのかもしれない。

教育市場の対外開放が、遅きに失するかもしれないが、ほとんど唯一のとるべき道であろう。

2015年4月3日金曜日

キャッチコピーの一見盗用確率は高いかも


YouTubeでチャンネル登録をすると新規投稿の案内が届くようになる。

今日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)から、というよりYouTubeからメールが届いた。案内されていたのは海外広報目的の機構紹介である。これをみて、偶々気が付いたのだが、JAXAの広報用キャッチコピーは

Into the Sky, into the Space, into the Future

なのか、と。そう感じられたのだな。

実は小生が勤務しているビジネススクールの案内パンフレットには毎年

Career To The Future!

というフレーズを印刷している。開設以来ずっとそうしている。

似ているねえ・・・。もちろん偶然である。

とはいうものの、未来志向でなければ気力はやはり湧いてはこないものだ。

Memory Of The Past!

過去を直視して、過去を記憶し、過去を清算する姿勢は、常に大切なことである。しかし、過去を直視せよというキャッチコピーは、いま生きている人間の立場に立てば、やはり賞味期限がある。風化はいけないが、風化をゼロにすることは歴史的事実一般について不可能である-もし可能なら、原始時代から続いてきたあらゆる悲惨をすべて昨日の事件であるかのように記憶しているはずだ。

それは現実と矛盾している。

要約しきってしまえば、歴史とは偶々残った資料を並べて浮かび上がってきた化石のような「事実」、いや「事実の化石」である。そう思いませんか。

そう考える方が人間自然の理に適っている。

2015年4月2日木曜日

「目標」にも賞味期限はある

10年余り小役人を東京でやって中年にさしかかった頃、関西の某国立大学に出向したら、余りの余裕のある生き方に改めて衝撃をうけ、結局は北海道の大学を職場と定めて、ずっとやってきた。

そうは言っても、大切な仕事を辞めるからには大義名分がなければならない、と。そうハッキリと意識したわけでもないが、大学で生きるからにはこの問題は解明したいというライフワークは当地に持って来た(つもりだった)。

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三点あったのだが、一つは最新の情報が追加されるごとに将来予測をどう合理的に変更すればいいかという問題だった。マクロ統計の速報は実は推計であって、不足するデータは予測した上で実績値の代わりに使う。それ故、時間が経つにともなってデータが追加され、公表値は改訂されることになる。その改訂幅を小さくするには、推計段階で誤差の少ない予測をしておく必要があるのだ。ところが言うは易く行うは難しいのが予測である。前月のデータが非常に大きなブレを示した時、まだ情報がない当月の予測で、どの程度大きなブレを織り込むべきか。それによって速報値は変わる。そんな問題だった。

ま、結果的にはARIMAモデルでやればいいわけであるし、状態空間モデルでやってもいい。しかし、当時は同時方程式モデル全盛の時代だった。外生変数も数多あるのに、簡単な一変量の予測で同時方程式を作るなど考えなかったのだ、な。

二つ目の問題は、特にGDP統計の中の消費系列で明瞭なのだが、マクロ統計とミクロ統計との乖離を説明することだった。言い換えると、ミクロ統計の未回答に関する問題。いわゆる "Misreporting" 、ないし "Underreporting" がいかにして発生するか。そのメカニズムを説明するモデリングである。発生モデルがあれば、たとえば耐久消費財支出が他に比べて小額の世帯が過小記入している確率を求めることができる。そんな問題意識だった。

幸いにして、この問題はDeaton-Irishが提案した方法を発展させて、うまくモデリングすることができた。何度かに分けて専門誌や国際学会にも出せたので、二番目の問題については目標を達成できたわけだ。

最後の三番目の問題は季節調整に関するものだった。すべての場合に問題はあるのだが、特にひどいのがGDP統計の内訳である設備投資だった。設備投資系列は、原則的には毎年実施される工業センサスが基本情報だった。最も正確であるというのが理由だったが、GDP速報は毎四半期に公表する。四半期ベースのGDPも出していたわけだ。しかし、GDPは暦年が基本である。それを四半期に分割し、その後で年度を計算する。だから、暦年の実績から四半期系列を導出する過程が非常に重要である。その四半期分割にはリン・チョウ法など普及した方法があった。ところが、方法は合理的なのだが、補助系列に使う四半期データと基準になる暦年データがあまりに異なった動きをしていると、四半期分割がうまく行かないのだな。

『暦年の工業センサスは上がっている。四半期の法人企業統計は下がっている。下がっているデータをみながら、どうやって上がっているデータを分けていけばいいんだろうネ・・・」。担当セクションの課長補佐がぼやいていたのをまだ記憶している。

無理に四半期分割すると、季節パターンが不自然になる。季節調整済みのGDP統計が時に変な動きをするのは、季節調整がうまくいっていない、というよりも四半期分割がうまくいっていないためだ。三番目の問題はこの点で上手い方法はないかというものだ。

これは難しかった。そもそも季節性を扱うには時間領域で攻めてもダメで、フーリエ変換して周波数領域も見ないといけない。季節調整を精緻化するだけではダメで、正確な暦年データを不正確な四半期データでどう分割するかも考えないといけない。

それで苦闘してきたのだが、考えているうちに「実質GDPの季調済前期比」は大体が0.1%(年率で0.4ないし0.5%程度)、せいぜいが0.5%(年率で2%程度)くらいになってしまった。そんな僅かな凸凹のピークがどうだ、ボトムがどうだ、もっといい方法を使わないといけないなどと言い募ってみても、所詮は下らない話しで、重箱の隅をつつくような議論である。そもそも誤差の範囲ではないかと指摘されればそこで終わってしまう問題でもある。

それより日本の成長力が低下した真の要因は何か。そんな問題について「大量の情報」から統計的にアプローチする。ずっと面白いではないか。そうも感じるようになったのだね。成長力の違いは先進国と新興国という切り口だけで説明されるものではないだろう。

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問題には賞味期限がある。社会の実態が変われば、昔には大きな問題であったのが、どうでもよくなることがある。癌の治療を進歩させることが大きな課題であった時代の次には、(同じ問題はまだなお存在してはいるが)長寿社会の中で大量に発生した独居高齢者と認知症がより大きな問題になった。

問題を解決するにはコストがかかる。問題解決からは社会的な利益が期待される。それ以上の利益が小さくなれば、それ以上のコストをかける意味が小さくなるのは当たり前だ。

それ故、小生が大学に持って来た三つの問題は、一つは解決済みであることを確認、一つは解明、一つは時間切れで自然消滅。どうやらそんな決算で終わりそうだ。

ただ新しい問題が出てきているのも事実だ。それは、やはり、ビッグデータに関係しているのだが、既に投稿した「ビジネス統計の新・七つ道具」。今後将来に最も有効なデータ分析ルーティンはどんなメニューで構成するとよいか。そんな問題である。まだ人によって、問題によって、複数の方法が重複しながらバラバラの状態なのだが、いずれQCのように体系化され、制度化され、ブラックボックス化されながらビジネスマンの標準ツールになっていくだろう。その頃には、どの企業の役員会資料でも定番のグラフとなり、誰でも図の見方がわかっている。そんな時代になっていくはずだ。

そんな時代とはどんな時代だろう。今の楽しみはそれだ。