2015年5月5日火曜日

ヤレヤレ今度は「世界遺産登録騒動」が起こるのか

八幡製鉄所や軍艦島など九州・山口に散在する「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産として登録するべきとの勧告がユネスコ諮問機関から出された。名称も「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」に変更するよう言われているようだ。

キリスト教伝来を伝える長崎の教会群が対抗馬であったらしいが、日本ではあくまで産業革命遺産を優先したようだ。

それはやっぱり山口県も関係するからだろう・・・と、誰でも思うだろうねえ。しかし、八幡製鉄所や長崎造船所はともかく、山口県にどんな遺産施設があっただろう。勉強不足もあって、そんな疑問はあった。すると、ヤハリ見つかりました。吉田松陰の松下村塾。今年のNHK大河ドラマの舞台でもある。

最終的には7月にドイツで開催される世界遺産委員会で決定されるが、委員国に韓国も入っており、韓国は今回の勧告には絶対反対であると伝えられている。紛糾は必至だが、これまで本委員会で勧告が覆ったことはないという、イヤ稀だときく。が、あまりに激論になれば、国際機関の文化的活動には馴染まないので残念ながら決定見送りになる可能性はあるようだ。

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率直なところ、小生の感覚とは違うなあ・・・。

まあ、明治維新論をブログという場で語っても仕方がないし、専門分野でもない。

しかし、松下村塾が・・・。絶句するねえ。こりゃあ韓国も反対するはずだ、この点だけは小生もどこか共感できるような気がする。

松蔭の思想の根幹は進んだ文明に帰服する王化思想にあると見ているが、同時に水戸学流の尊皇思想もあり、故に文明的に(=産業面で)先行する国が遅れた国を指導するのは当たり前であるという侵略正当化論というか、一つの思想につながりがちである。武力よりも文明を重視する姿勢はなるほど尊重できるが、それが日本固有の皇室崇敬と合体すると、極めて危ない。大陸からみると極めて危険な侵略政策につながりやすいのは、古代の神功皇后による『三韓征伐』以来、「倭冦」という言葉が使われていることからも窺われる。相手からみれば「倭冦」であっても、日本から見れば「征伐」となる。吉田松陰という人は、そんな思想を実践する明治期の政治家を「育てた」と言えばまだいいが、「煽動」したと言われても仕方のない意見を実際に書き残している。

そもそも、その時点の政府である幕府からみれば、吉田松陰という長州人は罪人である。にも関わらず、吉田松陰を礼賛するのは、一つの革命思想を是としているのであって、倒幕・戊辰戦争絶対正義論に立っているわけである。この点にも、最近は違う見方が歴史学界では出てきていると耳にしている — もちろん明治維新で成立した政府は1945年の敗戦で倒壊した。ついでに敷衍すれば、韓国で安重根を崇敬する思想と長州の流れを汲む人たちが吉田松陰を尊敬する立場とどこが異なるだろうか。

ま、どちらにしても、不毛の議論である。が、また一騒動おこりそうだ。

事情は政治的にも色々とあるのだろうが、より歴史のある長崎の教会群で良かったのではないのかねえ・・・。

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今年の憲法記念日は例年になく盛り上がったようだ。というか、盛り上がるべきタイミングであった。

分からない点が一つある。自民党の憲法改正草案。天皇は国家元首であると規定されている。その点は前にもこのブログに書いたことがある。

国家元首ではあるが、天皇は国政に関する権能はもたず、自衛のための武力行使ももっぱら内閣が責任をもつ。「国防軍」も総理大臣の指揮に置かれる。

昔の征夷大将軍が今の総理大臣になったと思えばいいかもしれない。長期安定政権を維持する大首相が時に「幕府」だと批判されるのも理解できるというものだ

ま、ドイツ連邦軍も国家元首である大統領が指揮するわけではなく、戦時においては首相が最高司令官になる。

明治・日本はプロシアの法制に学んだ所が多かったようだが、今に至っても日独はどこか似た道を歩んでいる。歴史も思想もまったく違うのに不思議だ。



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