2015年8月30日日曜日

『4分の1の有権者が与党に3分の2の議席を与えた』という迷妄

2014年12月の衆議院選挙で与党は定数475人のうち3分の2を超える326議席を確保した。

ところが、その日の投票率は52.7%と大体半分の有権者しか投票所には行っていない。そして小選挙区における自民党の得票率は48%であったから(資料)、ザックリと計算すれば4人に1人が自民党を支持しただけで、自民党は衆議院の60%超を制するに至った、と。よくこんな指摘がされる(資料)。


確かに小選挙区制では、特定の政党が僅差で勝つことによって全体としては大勝するという現象も起こりうる。しかしながら、自民党はたったの4分の1の有権者を得ただけで第1党になった、残り4分の3の民意が無視されている、と。まさかこんな風に考える人は数理的な感覚がまったくないとしか言い様がない。

比例区で議論しよう。2014年衆院選比例区の自民党得票率は33%である。得た議席は38%だ。ここで当時の政党別支持に関するNHKの世論調査をみてみよう。そうすると2014年12月時点における自民党の支持率は38%と出ている。(資料)。NHKの世論調査はサンプルが2000名程度、回答数が約1350名である。未回答の発生で何等かの系統的バイアスが混入しないと前提すれば、誤差は真値を中心にして概ね±2.6%程度までの範囲に収まる。実際には、世論調査よりは有意に低い得票率になっているが、サンプル数が1000名程度のアンケートであっても、有権者全体の意識は、マアマア、かなりの程度まで正確にとらえられていることは分かる ― だからこそ、サンプル調査の威力をビジネスに取り入れたアメリカのアンケート調査会社ギャラップの発する情報には価値があると認められたのだ。

衆議院選挙では、有権者総数1億人のうち約半分にあたる5千万人が投票している。確かに投票率は半分にしかならないが、もし投票率が100%であっても結果は大差なくほとんど同じであったと。まず確実にそう言える。というか、そもそも開票直後にしばしば当選確実の速報が流れる。あの報道は、出口調査などを利用しているサンプル調査の一種である。それでもほぼ確実に当選・落選は予測できている。投票率が高いことは、有権者が自らの参政権を現に行使しているという意味であり、確かにそれは「良い」ことである。しかし、投票者の代表性という統計的側面に着目すれば、投票率は100%である必要はなく、また50%程度で十分であり、もっと低くとも民意は十分正確に反映されるということも理解しておく必要があるだろう。

そもそも政党別支持率などは、千名少々で十分精度の高い情報は得られるというのが数理的な結論だ。であるので、4分の1の有権者が3分の2の議席を与えたという理解は不正確であるし、政治的プロパガンダとしても非文明的であろう。3分の2の議席を与党が占めたという結果は、有権者すべてが投票していていたとしても、変わらなかったはずだ。だからこそ、「選挙」という意思決定システムは、権力的な投票妨害行為などがない限り、民意を反映し、故に信頼されるのだとも言える。投票率によらず、だ。


もちろん得票率が48%であるのに60%にも達する議席を自民党が占めてしまう小選挙区選挙に疑問を抱く余地はある。が、これはまた別の問題だ。何より野党が意味なく多数分立していることがほとんど全ての原因である。というより大事なことは、小選挙区は、同じ選挙区から同一政党に属する立候補者が立ち、そのため党内が派閥に別れ権力闘争をするという中選挙区制に嫌気がさした日本人が選んだ選挙制度である。現に自民党内の派閥抗争は衰退してきており選挙制度改革は所期の目的を達成したと言える。得票率や投票率とはまた別の問題であるのは明らかだ。

【追記】それから、選挙に関しては「一票の格差」という問題点もあった。これについては以前に投稿しており、見方に変更はない。



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