2015年9月4日金曜日

「天才的名参謀」というカテゴリーはない

天才的参謀と言うと、中国・三国時代に蜀帝劉備に仕えた丞相・諸葛亮孔明が引き合いに出されることが多い。

特に日本の講談ではそうだ。

しかし、もし孔明が天才なら、天才を使いこなした上司の劉備は何になるか?凡人には、孔明が天才であることすら洞察できなかったはずだ。かといって劉備は秀才ではなかったそうである。その劉備が孔明を求めるに三顧の礼をもってしたことは余りに有名だ。

臣、亮、言(もう)す。
先帝 創業未(いま)だ半(なか)ばならずして、中道に崩ソ(ほうそ)せり。
今、天下三分して益州疲弊す。
此れ誠に危急存亡の秋(とき)なり。
然れども待衛(じえい)の臣、内に懈(おこた)らず、
忠志の士、外に身を忘るるは、
蓋(けだ)し先帝の殊遇(しゅぐう)を追(おも)い、
これを陛下に報いたてまつらんと欲すればなり。
誠に宜しく聖聴(せいちょう)を開張し、
以(もっ)て先帝の遺徳を光(かがや)かし、
志士の気を恢弘したもうべし。
宜しく妄(みだ)りに自ら菲薄(ひはく)し、
喩(たと)えを引きて義を失い、
もって忠諌(ちゅうかん)の路(みち)を塞ぎたもうべからず。
宮中府中、倶(とも)に一体と為(な)り、
臧否(ぞうひ)を陟罰(ちょくばつ)するに、
宜しく異同あらしめたもうべからず。
若(も)し姦(かん)を作(な)して科(とが)を犯し、
及び忠善を為す者有らば、
宜しく有司(ゆうし)に付して、
其の刑賞(けいしょう)を論じ、
以て陛下の平明の治を昭(あき)らかにしたもうべし。
宜しく偏(かたよ)り私(わたくし)して、
内外をして法を異にせしめたもうべからず。
侍中・侍郎(じちゅう・じろう)
郭攸之(かくゆうし)、費?(ひき)、董允(とういん)等は、
此れ皆良実にして志慮(しりょ)忠純なり。
是(これ)を以て、
先帝簡抜(かんばつ)して以て陛下に遺(のこ)したまいけり。
愚(ぐ)、以為(おも)えらく
宮中の事は、事の大小と無く、
悉(ことごと)く以てこれに諮(はか)り、
然(しか)る後に施行せば、
必ずや能(よ)く闕漏(けつろう)を裨補(ひほ)し、
広く益する所有らんと。
将軍向寵(しょうちょう)は、性行淑均(しゅくきん)、
軍事に曉暢(ぎょうちょう)せり。
昔日に試用せられ、先帝これを称して能と曰(のたま)えり。
是れを以て衆議、寵(ちょう)を挙げて督(とく)と為す。
愚、以為(おも)えらく
営中の事は、事の大小と無く、
悉く以てこれに諮らば、
必ずや能く行陣(こうじん)をして和穆(わぼく)し、
優劣をして所を得しめんと。
賢臣に親しみ、小人を遠ざけしは、
此れ先漢の興隆せし所以(ゆえん)なり。
小人に親しみ、賢臣を遠ざけしは、
これ後漢の傾頽(おとろ)えし所以なり。
先帝在(ましま)せし時、
毎(つね)に臣と此の事を論じ、
未だ嘗(かつ)て桓・霊二帝に嘆息痛恨せずんばあらざりけり。
侍中・尚書・長史・参軍は、
此れ悉く貞亮(ていりょう)節に死するの臣なり。
願わくは陛下これに親しみこれを信じたまわば、
則(すなわ)ち漢室の隆んなること、
日を計えて待つ可(べ)し。
臣は本(もと)布衣(ほい)、躬(みずか)ら南陽に耕し
苟(いや)しくも乱世に性命を全うせんとし、
聞達(ぶんたつ)を諸侯に求めざりき。
先帝、臣が卑鄙(いや)しきを以てしたまわず、
猥(みだ)りに自ら枉屈(おうくつ)して、
三たび臣を草盧の中(うち)に顧いたまい、臣に諮(はか)るに当世の事を以てしたまえり。
是に由(よ)りて感激して、
遂に先帝のために駆馳(くち)せんことを許(うべな)えり。
後、傾覆(けいふく)に値(お)うて、
任を敗軍の際に受け、命(めい)を危難の間(かん)に奉ぜり。
爾来(じらい)二十有一年なり。
(後略)
(出所)漢詩の朗読­‐「出師の表」諸葛亮孔明

やはり「為しうることを為そうとした」、己が任に忠実であらんとした、孔明はその意味では「秀才」といわれる人物であったに違いなく、天才的な人材選択と人心収攬を実行できた劉備の方が実は「天才」であったのだろう。

ま、そもそも創業をなす人は世に現れること稀な、その意味ではいずれも「天才的人物」である。そして、天才が天才を部下として活用するというのは、もっと遥かに稀である理屈だ。

リアルな孔明も光背を背負うような人物ではなく、一見普通であったそうである。そんな記録が残っている。


3週間続いてきた某企業グループのための特訓ゼミが本日で終了となった。

ビジネス戦争は、いわばエンドレス・ウォー、つまり「終わりのない戦争」だ。敗北のかわりに追従が、降伏のかわりに無力化を強いられる。熱い戦争、冷たい戦争、ビジネス戦争と、いずれの戦争においても負けたくはないものだ。

負けたくはないが、ハトに甘んじる損失が、タカになるための限定戦争リスクを下回れば、多くのプレーヤーはハトとして生きていこうとするものだ。志を捨てるといえばそれまでだが、それもいいではないか……。

ヤレヤレ…、今回は実につかれた。

夏休みが、やっと来た感じがする。

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