2015年9月6日日曜日

安保法案の違憲性: 司法からのシグナルかも

参議院で審議中の安保法案はいよいよ採決日程が検討されている。ここまで来たら、一度は採決して正面突破しなければ、政権はもたないだろう。

そんな中で、山口・元最高裁長官が発言している。
元最高裁長官の山口繁氏(82)が3日、共同通信の取材に応じ、安全保障関連法案について「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反と言わざるを得ない」と述べた。政府・与党が1959年の砂川事件最高裁判決や72年の政府見解を法案の合憲性の根拠と説明していることに「論理的な矛盾があり、ナンセンスだ」と厳しく批判した。
(出所)毎日新聞、2015年9月4日

憲法学者が今になって反対の論陣を張っているのは確かに知的怠慢である。とはいえ、成立後の安保法制に対して違憲訴訟が相次ぐのは必至の情況である。そして最高裁の考え方に法学界全体で支持されている学説は大きな影響力をもつ。


この辺の事情は、なぜ東京電力は福島第一原発で予想される自然災害について甘めの予想しか持てなかったのか。この点とも相通じていると思うのだな。現場のマネジメントは、結局、その時の学界主流派の知見から無縁ではいられないのだ。

要するに、専門的学界に広く共有されている意見なり、見解が、最終的には官庁や企業の行う大事な判断となって現れてくる。トップが何でもすべて知っているわけではない以上、これがロジックの基本である。

だとすると、上に引用した記事は、司法からのメッセージと見ることも可能であり、いよいよ日本の安全保障政策はこれから深刻な迷走へと入っていく。こんな予想は先日の投稿でも書いた。少し昔の「加藤の乱」、稚拙な民主党政権あたりとは比べ物にならないほどの深刻な混迷に入ってくる前兆とも思われる。

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戦後70年。時間的な位相を戦前期に求めれば、維新後70年は1937年。日中戦争が始まった盧溝橋事件の年である。崩壊への確実な一歩はこの年だった。

そろそろ戦後日本の体制がもたなくなってきている。その兆しということでもござんしょう。

話しは変わるが、いまの安倍政権。小生が好きな歴史小説に当てはめると、何だか幕末に井伊直弼が幕閣を率いた安政時代を連想するのだな。その前よりは強力であり、方向は正しかったのだが、結局、原理原則との矛盾を克服できずに体制瓦解への道を開いた。デジャブ、既視感というか、似ているね。そんな感覚である。

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