2015年12月17日木曜日

夫婦別姓合憲判決に思う

表題の件で最高裁判決が出た。夫婦同姓は合憲という判断だ。

これに対して、(新聞紙上では)女性差別の現実を見ていないという反発がある。もちろん家族の伝統を守るものだという肯定論もある。

フ〜ム……、思うに夫婦同姓を法律が求めるからといって、女性を差別することにはならないのではないか。男性が女性の姓を名乗ってもいいのだから。

韓国(中国も)は夫婦別姓である。日本も江戸期以前は夫婦別姓が原則であったようだー北条政子は通称ではなく、源政子ではない、あくまで北条政子であったのだな。夫婦別姓だからと言って、韓国や中国、近代以前の日本が男女平等社会かといえば、決してそうではないだろう。

日本は、子供は父の姓を名乗るという父系社会できた。これは東アジア全域でそうだと思われる。父系社会といっても、財産相続その他で父系か母系かという実質的な伝統はもう残ってはいないが、父と母の姓が違ってもよいとした場合、子供はどちらの姓を名乗るのか。これは「通則」を決めておかないと、やはり混乱するかもしれない。

たとえば、先祖の祭祀権は『慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者』が相続すると民法で規定されている。そして、慣習的には祖先の祭祀を行うのは、その家の長男であろう。実際、位牌には『▲▲家先祖代々之霊位』と記されている家庭は多いと思う。墓石には『□□家之墓』と彫られているところが多いと思う。ならば、特に長男は父の姓を名乗ることが期待されるのだろうか。長男は差別されるということなのだろうか。確かに、夫婦同姓により女性が苦痛を感じるときがあるのだろうが、農耕社会となってから以降千年以上も日本が父系社会の歴史を歩んできた。そして、それ故の慣習もある。これも現実だろう。

社会とはそもそも同調ゲームだと言える。男女のデートゲームと言うともっと簡単だ。同調を強いるからには、意にそまぬ選択を強いられる人たちにはプレッシャを感じさせるであろう。それでも、プレッシャを感じつつ、結局は社会に同調して生きているのだな。この現実をありのままに見ることを小生は選びたい。

安定している暮らしの現実をお上が混乱させることは避けた方がよい。

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日本人の苗字は「どこの誰だ」という名乗りを上げる時の「どこ」に当たる部分だ。それに対して、昔の侍社会には氏があった。氏とは出自であり、社会階層と直結する。たとえば、源尊氏は氏+名、足利尊氏は苗字+名である。足利に住んでいる尊氏という意味だ。しかし、姓を支えるこうした親族・同族システムは社会的にはもう機能していない。というより、会社も店も同族集団の財産というより社会の公器である。日本人は日本で暮らしており、同族という傘のもとではもはや暮らしていない。

日本全体で考えればよいということになれば、氏名は、要するに個人が特定できればよいのだ、な。生活が混乱しないように慣習に従えばよいわけである。使いたければ「我こそは木曾冠者義仲なり」と、通称をつかえばよいわけだ。ただ、法律上の手続きを行うときは『正式の名前を記載されたし』と。この位は許容範囲なのではないか。忠臣蔵に出てくる吉良上野介の正式の氏名など誰が知っていよう。それでも(ジェリクル・キャッツではないが)本当の名前を求められる時はあったのだ。本当の名を誇りをもって名乗れるなら、そんなシステムが最上のシステムではないか。

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いまでも同族関係は空虚となり、親子関係すら希薄になっているが、このうえ相続税率を100%に引き上げ、親子関係からほぼ全ての経済的側面を奪ってしまえば、そもそも姓に実質的な意味合いなどなくなるであろう。

父と母、いや別姓であれば父方、母方の祖父と祖母、父方、母方それぞれの父方、母方の曽祖父と曽祖母・・・、みな姓が違うだろう。どれを名乗ってもいいんじゃないの?経済的にはどの苗字を名乗るかによって実質は何も変わらないよね。お好きにどうぞ、と。未来の社会はそんな名前=記号である社会になっていくかもしれないのだ。となれば、マイナンバーだけあればいいよね。番号で行きますか。公的文書に氏名は書かなくともよろしい。マイナンバーを記載してください、と。

番号1924562238の方、窓口までお越しくださあい・・・(ディスプレイニモ番号ガ点滅スル)

名前はすべて通称となる。

ええぞなもし。いいねえ。これまたクールな社会ではないか。現在はそれまでの過渡期であろう。


それよりはもう一つの判決。女性の再婚禁止期間だ。

すでに以下の報道がある。
政府は16日、女性の再婚禁止期間の100日超部分を憲法違反とした最高裁判決を受け、民法の規定を見直し、禁止期間を現行の6カ月(約180日)から100日に短縮する方針を決めた。(時事通信)
これよりは、女性が妊娠の事実に気がつかないままに結婚し、結婚後に妊娠の事実を知った時に、その子の権利はどう守られるのか。男性の権利は?女性の権利は?某タレントの騒動もあったが、今という時代、むしろこちらのほうが実態とより密接に関係するのではないだろうか。

なぜかって・・・?
だって、結婚とはそもそも子弟養育システム。いろいろな見方があるだろうが、9割方、ほぼ全面的に、「結婚」とは子供を育てるためにあった方が安心で便利だから存在するに過ぎない。「家」を捨象した現代社会では、とどのつまり、そうだろうと思われるのだがどうだろう?

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