2016年1月18日月曜日

「訪日観光客2000万人」から官僚的で古臭いカビの臭いがする

スキーバス転落の悲劇でTV報道は持ちきりである。

国土交通省が示している標準額を下回る金額で受注したバス会社もモラルを問われているし、そんな発注をした旅行会社のモラルも問われている。

TVのコメンテーターは「基準に反する発注をした側が、そのプラン自体を警告される。そんなシステムが必要です」、と。

同感だ。日本社会では<計画をしたことが最も悪い>という犯罪概念はない。しかし、現場で実行をした人たちは、組織ないし組織間の取引の中で業務としてその行動を(やむを得ず)とったに過ぎない、そんな場合が非常に多い。

時代は法制度をこえて先を行っている。

+++

旅行価格を安くしようとすればバス調達コストを安くするのが最良だ。そのためには価格引き下げを交渉するのが最良だ。故に、交渉した。これ自体は真っ当な商行為だ。

価格引き下げは低価格を求める客がいるからだ。低価格を求める客をターゲットにすれば、数量としてはその業界のビジネスは拡大する。

いま旅行ビジネスでは拡大戦略がとられている。かつ、日本国としても<訪日観光客2000万人>という大目標が掲げられている。


拡大戦略を実現する特効薬は低価格戦略である。そのためには低コストがよい。

悪循環であろう。これで本当にいいのか?日本として得するのか?


★ ★ ★


人数ベースで観光客2000万人という目標を掲げるなど、愚かしいことである。

愚かと言うのが過激なら、経済音痴であると言っておこう。

そもそも外国から人が押し寄せてきたとき、ホテルは足りるのか、バスは足りるのか、運転手は足りるのか、道路状況はもつのか・・・?

だから物的施設を整備する必要があるのだというのは、愚かである。日本に住んでいる普通の人はそんな状態を望んでいないと思う。

生産要素に制約があるなら、要素価格が上がるべきである。それを販売価格に転嫁するべきである。賃金も上がるべきであり、ホテル料金も上がるべきであり、旅行価格が上がるべきである。そう考えるのが経済の理屈だ。

ロジックと反対のことをしようとすれば、どこかで社会的に容認できない現象が出てくるものだ。

+++

旅行価格を上げれば、訪日観光客は減るだろう。しかし、旅行に高い満足を感じる堅い顧客層はそもそも現行価格は安いと感じている。故に、高い価格を受け入れ、それと同時に混雑が緩和され、高いクオォリティが維持された日本旅行に満足を感じつづけるであろう。

日本がなすべきことは、多くの人数を日本に招くことではない。来日する人に高い満足を感じてもらい、堅いファンになってもらうことなのだ。カネは必然的についてくるだろう。

適切な人数にきてもらうとき、現場の疲弊は解消され、観光ビジネスは持続可能になるはずだ。

+++

人数を目的にしたがる心理は、台数や重量を誇ったり、領土面積のような物理的存在量を自慢する帝国主義時代の残りかすである。

客の人数を目的とするのではなく、利益と品質を目的とする。これがビジネスの根本だ。

0 件のコメント: