2016年4月26日火曜日

予想: 災い転じて福と(なそうと)する政略を現政権はとる

年明け後の株価急落、景気後退色を強める実態経済、甘利経財相の失脚、TPPの国会審議停滞、与党議員の数度にわたる失言・放言・妄言と、現・安倍政権には俄かな逆風が吹きつけている。

札幌5区の衆院補欠選挙では与党候補が僅差でやっと勝利した。表現は穏当ではないが、かたや与党の大物議員の娘婿が後を引き継ぐ弔い合戦。かたやずっと苦労して生きてきた社会福祉畑の女性候補。これは勝負にならんというのが、従来の予想のパターンであった。それが大接戦となった。なぜ?・・・となる。

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この夏に衆参同時選挙に打って出て、一挙に逆境を挽回するという選択もあった。

しかし、熊本大地震という要因が突発的に発生してしまった。

災害に対しては、懸命に間違いなく取り組むのが当たり前であり、問題なくやって当たり前、しくじれば決定的なマイナスとなる。災害対応は、完璧を求められるというプレッシャがあるので、現・政権にとっては大きなリスクである。

この群発地震がいつ収束するか不確定である。震源地が移動する可能性もあるし、阿蘇山が噴火する可能性もある。原発停止要望、再稼働への判断など難しい問題もある。

それらの被災地救済が円滑に進むかどうかが、現政権の評価に非常に影響するわけだ。

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その災害対応では現地対策本部長が(早速に)更迭(交代?)されるなど、はた目からみると、決して順調に行っていない。

避難者が10万人を超え、車中泊を続ける人も多い。商店街なども被災しており、今後の経済活動がいつ回復軌道に戻るのか、予想が難しい。

窃盗などの犯罪も多発しているようだ。

たしかに東日本大震災と同じ「震災」ではあるが、細かい側面ではかなり異なる所がある。

某社のアンケート結果によれば、熊本地震に対する政府の対応は不十分であると感じる人の割合が60%を超えている。

まさかとは思うが、現地で暴動、そこまで行かずとも避難者側と救済側の間で何かの紛争が発生したり、国と自治体の間で何らかのミス・コミュニケーションが起これば、1件ごとに内閣支持率は3~4%のペースで下がるだろう。

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たとえ野党が政権の座にあっても、もっとマシな対応をしていたかと言えば、とてもではないがそうは予想できない。とはいうものの、現政権の対応は評価されてはいない。

今夏の参院選を予想するうえで、突然にわかに<作戦正面>となったのが<熊本地震対策>である。つまり、ここでしくじると、政権の屋台骨が揺らぐ。すでに同じ被災地であるはずの大分県には不安や懸念が生まれているようだ。

しばらくは地雷原の中を前進するようなものだろう。

ということは、逆に言えば、今回の災害対策で何らかのプラスのサプライズをつくることに成功すれば、それもまた今回の政治闘争に勝利をもたらす要因たりうる。そしてサプライズを与えうるのは、実際に政権にある側だ。

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熊本地震の発生は、戦略的・政治的状況を混沌とさせているようにも見えたが、実は自然の力によって<作戦正面>が強制的にこの地に定められ、状況は寧ろ単純化されたと見るべきだろう。

逆風に見舞われていた現・安倍政権から観れば、起死回生の一手(?)、イヤサ反撃の機会が向こうから訪れたことでもある ― もちろん、ここで失敗して政権の終幕となるリスクもある。

5月中下旬にかけて、世間の想像を上回る被災地総合対策を打ち出し、十分な人的・物的資源を投入すれば、夏の初めの参院選で全国の有権者が野党に-たとえ統一されていても-投票するはずがない。

いま政権側が思案しているのは、その辺りだろう。
そうでないとすれば……、うまくやって当然、失敗すれば致命傷。期待値としてはマイナスである。それに気がつかないとすれば、慢心があるか、油断があるか、ま、どこかが足りないのだろう。

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