2016年9月20日火曜日

政治は必然的に劇場になる

最近はTVドラマ不毛の時代である。なので、バラエティだかニュースだか分からないようなワイドショーが花盛りになっている。

我が家もカミさんが友人(=四国に居住する年下の義理の姉)から送ってもらっている韓流ドラマの録画をみないときは大体はワイドショーを観ている。

ワイドショーというのは、同じテーマで何日もずっと話し続けるという傾向がある。登場するコメンテーターの顔ぶれもほぼ一定である。同じ配役のドラマに相通じるところもあるし、それは同じ面子の井戸端会議でいつも同じ話をし続けるのと大変似ている。これ即ちFacebookでも提供しているTrendingというものなのだろう。

この一週間、いやもう二週間になるか、このところずっと築地と豊洲の話を続けている。どのチャンネルをみても、ワイドショーであれば全局そうである。午前も午後もだ。

一つの地方自治体の流通卸センター移転の問題でこうである。もし万が一、尖閣諸島に中国の武力集団が(あくまでも民間の過激派グループであるとして)上陸したとしたなら、日本の全放送局は狂ったようにそればかりを一日24時間ずっと放送し続けるであろう、と。

いやいや杞憂に終わってほしいものだ。

いずれにしても、いま民間のTV放送局の経営理念では限定的であるにせよ突然勃発する武力衝突について日本社会を啓蒙するようなバランスのとれた番組を放送する能力はどこも有していない。これだけは言えると。そう感じるのだ、な。


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築地と豊洲。一体どうするのだろうか。

いまこのくらい面白いトピックがあるだろうか。

単なる「移転延期」から「誰も知らない地下空間の存在」へ話が進み、そして工事契約時点ですでに地下空間が工事内容に含まれていた、それを石原元都知事も承認していた。

安全性に根本的疑問がついてしまった以上、食品流通センターが豊洲に移転すること全体の適否が改めて検討課題になってしまった。

小池都知事は築地移転の問題に世間の目を集めることには成功した。「旧勢力」の弱点を突くことには成功した。しかし、自分の手でボールを握ってしまった。今後、都知事が下す判断にはすべて政治リスクが伴う。

粛々と築地から豊洲への移転をするなら安全面で発生する全てのリスクはこの時点で移転を決定する小池都知事が負担する。

移転を中止するという決定も可能である。豊洲に建設した建物は、スポーツアリーナ、衣料・雑貨などのショッピングセンターなどであれば使用に問題はないという。用途変更のうえ、どこか民間企業に売却し、改めて築地の今後について議論する。こんな方向転換も可能だ。

しかし方向転換をするとすれば、その後の進展については100パーセント、小池知事が責任を負担する。そもそも2020年のオリンピック道路はどうするのだ。築地移転をまっているはずだ。

どんな判断をするかによらず、小池都知事は大きな政治リスクを負担してしまったことになる。

責任回避のスキルにたけた官僚出身政治家であれば、いまは粛々として当初のプラン通りに進め、(確実に発生するであろう)具体的な問題が(現実に)発生した時点で調査委員会を立ち上げ、後手の先をとるような戦略をとったに違いない。

小池都知事の戦略は、後手の先ではなく、先手必勝の一手である。が、その一手に含まれているそもそもの意図、そして次の二手が見えているわけではない(と思われる)。

これからどうするつもりなのか。戦闘は華々しいが、戦略が見えないところは、豊洲移転を推進してきた旧勢力も小池都知事をとりまく新勢力も同じである。

シナリオなき政治ドラマがいま進行中なのだろう。一人の脚本家の脳みそにうかぶ架空のドラマより余程面白いのは当たり前である。

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