2017年10月18日水曜日

メモ: 経済問題、最近の七不思議にまた二つ

今日時点で疑問に感じている点が少なくとも二つはある。なぜ本筋の議論をしようとしないのか、小生にとっての七不思議にリストアップした(もう七つは超えてしまったが)。

疑問1: 給付型奨学金の拡大
とりあえず簡単のため大学・大学院に議論の対象を限定しておきたい。「貸すのではなく、お金をあげるのだ」とすれば、どんな学生にお金をあげるのか、給付型奨学金の支給対象者の選別方法で紛糾するのは必至だ(授業料免除などは予算枠があるので学内で適否が審査されている)。 万が一、税金をドブに捨てるようなケースが発生するならば、どんな理想があれ、それ自体が悪(というより、退廃?堕落?)であろうから、支給による効果を最初にチェックするのは当然であろう。規模が小さいなら、世間の関心を呼ばずに「なんとなく支給」という方式もありえるだろうが、拡大するなら合理的に説明可能な方式を決める必要がある。これは非常な難問であるに違いない。
給付型の「学費支援」は日本は既に実質的に広範にやっている。 
公費で運営する国公立大学の授業料を一律的にさらに引き下げればよい。 
授業料をゼロにするセグメントがあってもよい。必要なら、国公立大学、学部・学科を新設したり、定員を増やせばよい。 
大学への合否判定で自動的にスクリーニングできるので来年度からでも実施可能だ。特に地方圏の子弟にとっては「希望の道」になる。経営の拙い割には不透明で国民の目が届きにくい私立大学を淘汰できるというプラスの効果も期待できるだろう。
戦前期は、陸海軍の士官学校、兵学校(現代の防大も同じ)、教員など教育指導者を育成する師範学校は授業料がゼロであった。ただ公費支給範囲がいかにも狭かった。が、経済的に恵まれない子弟が学問を志し、才能を開花させる道は提供されていた ー このことは日本が貧しさからスタートしたことの現れでもある。危機感の現れと言ってもよい。同じ危機感をもてば同じ選択につながるのではないか。
引き下げようと思えば簡単に引き下げられる国公立大学の授業料をまったく検討することなく、はるかに難しい制度設計が伴う給付型奨学金を議論するのは、やっぱり七不思議だネエ。そう感じてしまう。 

疑問2: 企業の内部留保課税
同じことは配当に対する分離課税税率を20%から(たとえば)30%に引き上げればよい。しかし、こうすると株主は配当で受け取るのではなく、内部留保による株価上昇という形でもらう方を選ぶはずだ。だから配当課税を重くしても税収は増えない理屈だ。 
故に、内部留保課税。目的は資本所得課税の強化である ー 資本課税にまで踏み込んでくると財産権不可侵とぶつかり社会主義に近くなる。同じことは所得税の累進度強化でも達成できる。アメリカなら共和党ではなく民主党政権がやりそうな政策である。 
配当・内部留保など資本所得に対する税率を引き上げるなら、日本企業に資金を投じる魅力が外国企業に比べて下がる。いまでも日本人にとってイギリス株を買うのは魅力的だ。というのは、配当の源泉税率はイギリス側でゼロである。加えて、イギリスでは法人実効税率が20%で日本の30%弱より随分低い(資料はここ、イギリスはもっと引き下げようと言っている)。それもあって英企業の配当利回りは非常に高い。だから日本株を買うより英株の方が有利だ ー アメリカ株ならいわゆる「配当の二重課税問題」があり複雑になるが、概して米企業の配当利回りは高く、米株有利の状況がある。今でも日本企業は資本調達で不利なのだ。 にも関わらず、もっと日本企業を不利にしようとしている。これは不思議である。
日本で新規事業が減れば、優良な就業機会が減る。収入は伸びず、低劣な仕事ばかりが増える。アメリカならこんな反対論が必ず共和党支持者から噴出して、与野党が伯仲するだろう。が、日本では「実は財務省も腹のなかでは考えていたのだ」などと、あたかも内部留保課税が正しい道であるかのような流れが出来かかる。これ、実に不思議だ。どちらが正しいなどと簡単に結論が出るような問題ではないのだ。
まあ、自民党政権では所得税の累進度強化は言い出せないだろう。分離課税廃止などは絶対無理ともいえる。これは自明だ。資本所得課税も言えない。だから消費税の税率引き上げを提案している。消費税率の引き上げは<党派的>と言えばたしかに党派的ではある。自民党の党益からみれば仕方のない選択だ ー 大衆福祉国家の理念が強かったヨーロッパは、それでも付加価値税20%の世界を築いているのだが。資本所得課税強化より穏やかな選択、たとえば所得税の累進度強化(さらには配当・譲渡益の分離課税廃止)を正面から訴えている政党が日本にないのは、やや不思議だ。低所得層から中の下までを減税、中所得層の上からは増税。人口でいえば利益を得る人が多いはずなのだが誰も言わない。近年の格差拡大は株式運用益の大小でほとんど説明できるはずだ。これを言う政党が一つもない。不思議だ。七不思議にリストアップしてもよいのだが、多分、ブレーンらしいブレーンがいないだけの話なのかもしれない。でなければ、自分の所得にとってマイナスだからかもしれない。

ついでにいうと、今度の選挙でどこかの党が口にしているベーシック・インカム。『私たちも言葉は耳にしています、良さそうネ、公約に入れておきましょうカ』という感覚で、まるで『サンタクロースが住んでいるお伽の国があるのヨ、そこではネ、・・・』という母の寝物語にも似ていて、どう考えておけばよいのか分からない。

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