2017年12月28日木曜日

慰安婦問題再燃は韓国政府の意思であるということの意味は何か?

先日投稿したとおり、いま従軍慰安婦問題を単に日韓関係から考えても本質が見えなくなっている。先日はこう書いている。
韓国という国は、中国が対日優位を構築するために間接的アプローチをとるとき<役に立つ駒の一つ>になりつつある、というよりなったと思ってみている。韓国の最適反応戦略は(中国からみると)極めて分かりやすいから。
明治以来、日本は朝鮮半島を国防上の最前線と見なしてきたが、いま現代において中国からみても朝鮮半島は地政学的にも、歴史的にも、自国防衛上の最前線としてみていることは自明だろう。
韓国の外交行動は中国の戦略的意図の反映であるとみる視点が大事だ。韓国もそのことを理解しているはずだが、ナッシュ均衡を崩すための勇気あるコミットメントを政府が行うには常に政治基盤が不安定である。
朴槿恵前政権との間に成立した「日韓合意」の検証結果とそれに対する所感が文在寅大統領から発表された。「政府間合意によって従軍慰安婦問題が解決されるものではない」という風な見方は当然予想されるものだった。まあ、聞き様によっては(というより、直ちに)本件に関する外交的努力そのものを否定するものになった。

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さて、

設問1: 今回の判断が韓国にとってプラスになると韓国政府は考えているのか?
設問2: 今回の判断が韓国にとってプラスになると韓国政府は考えていると韓国国民は考えているのか?
設問3: 今回の判断が韓国にとってプラスになると韓国政府は考えていると韓国国民は考えていると韓国政府は考えているのか?
・・・以下、無限に続く。

すでに、韓国は韓国政府と韓国国民との間で展開されている展開型ゲームのプレーヤーになってしまっている。これが一つの見方かもしれない。いや、韓国国民も幾つかの対立するセグメントに分割して分析するべきかもしれない。

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上の設問は日本政府や日本国民にとっても解くに値する面白い問題であるかもしれない。

しかし、解いたところで問題そのものがエンプティで内容空虚な戦略ゲームであることは確かだ。むしろ、中韓関係においては中国がリーダー、韓国がフォロワーであるのは明々白々たる事実であると認めるべきだろう。

だとすれば、従軍慰安婦問題に関する韓国の対日外交ゲームにおいて最大化されつつある利得は、韓国の国益というより中国の国益であるとみるべきで、中国の戦略に反応する韓国の行動が中国にとっては予測可能であるが故に、中国は中国の国益が最大化されるような韓国の対日外交を韓国が自ら選ぶように中国は対韓外交を展開している。そう見ると状況の変化がよく理解できるのではないだろうか。

要するに、韓国は中国の駒として利活用されている。今回の韓国の判断は中国の対韓外交の中で予想しておくべき一つのステップと見るのが合理的ではないか。

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韓国は韓国で韓国の国益を最大化しようと努力しているはずだが、その努力を先読みして、中国にとって最も利益にかなうような韓国の行動を導くような戦略を中国がとっている。そう言ってもよい。

なので、韓国の今回の判断に対して日本が予想されるような反応をとれば、それがまた中国側の国益に寄与することになろう。

中国側の国益ということは、日本にとっては戦略的損失に近く、アメリカにとっても現在の日米韓の枠組みを前提すれば戦略的損失かもしれない。

歴史問題に関連して日本の対決的姿勢は韓国が想定している反応であり、韓国(及び中国)が最も緻密な外交戦術を構築している領域だろう。相手の予想する行動はとらないのが紛争で優位を得るための王道である

「相手が予想する行動はとらない」。どのような戦略的ゲームであっても優位を形成するための王道である。

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