2018年6月13日水曜日

中国の夢、日本の夢、アメリカにとっての理想型?

米朝会談は一場の政治ショーであった、という向きもあるが、非核化で合意という根幹だけは確認された。平和体制構築(=朝鮮戦争終結)への歩みが米朝で確認された。米朝で戦争終結への意志が確認されれば、中国も加わり、正式に戦争終結文書署名も見えてくる。その第一歩を刻むための米韓共同軍事演習の停止を大統領は発言した。さらに長期的には在韓米軍縮小・撤退の可能性までが口の端に出た。小生思うに、この点が最も大きい。

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中国の夢(かつロシアにとっても?)は、朝鮮半島から米軍が撤退することである。この点はほぼ自明。

ということは、非核化された北朝鮮は中国の保護下に入り、大韓民国はアメリカとの繋がりが強いにせよ、最終的には朝鮮半島を統一する連邦国家(?)に参加するという方向に踏み込んでいくだろう。これも王朝時代の中華文明圏再興の一環である。

では、その時点で中国はアジア文明圏全域から米軍が撤退することまで求めるか? 

日本には強力な米軍基地が散在している。日本はアメリカと軍事同盟を結んでいる。中国にとって(ロシアにとっても)それは邪魔である。この体制がある限り、ロシアは日本との北方領土交渉にまともに応じることはない。ロシアが北方領土交渉にまともに応じないのは、第2次世界大戦終了とその後の冷戦、米ロ対立を起源としており(いやもっと遡れば、19世紀から続くアングロサクソンとスラブ間の相互不信の歴史を源流とするもので)その強固なことは「岩盤」どころではない。

日本の夢は「一国独立」していた明治維新直後の状態に復帰することかもしれない。幕末から明治にかけて、日本が近代化に取り組み始めた当初、日本は100パーセントの主権国家であった。なるほど法制面での未成熟から関税自主権の放棄、領事裁判権の承認などを余儀なくされた。この不平等を日本人は恥とした。が、それでも日本は経済的に発展できたし、日本国内に外国の軍隊は駐留してはいなかったのだ。日本が近代化を目指した根源的動機は尊皇攘夷であった。三つ子の魂、百までである。日本国内の米軍基地をホンネでは嫌悪している部分が日本人の深層心理には隠されている、と。そう観ることも(ひょっとすると)可能かもしれない。

ならば、中国の海上覇権確立、アメリカ排除に悪ノリして、日本も米軍撤退を求めるか?明治初年の原状に戻って「一国独立」して、大国ロシアと交渉し、超大国アメリカ・中国とも100パーセント対等の立場で外交を進めるか? それだけの覇気を持てるか?
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しかしながら、中国は自国の拡張戦略にとってアメリカが邪魔であるにもかかわらず、日本から米軍が撤退する状況は望ましくないと考えるに違いない。

要するに、これは中国にとっての二択になる。

  1. 米軍が日本国内に駐留し、日本が中国にとっての軍事的脅威になる可能性を摘む。これは中国伝統の「夷を以て夷を制する」という戦略である。
  2. 米軍が日本から撤退し、日本が核武装で代行する。「代行する」というのは、アメリカの利益に沿って引き受けるという意味になる。
結局、中国にとってより安全なのは、日本かアメリカかという二択である。

日本の核武装路線はアメリカも認容しようとする見方が出始めている。欧州もそうだ。何と言っても、第二次世界大戦が終わって既にもう73年がたっているのだ。

その73年の間、日本は中国の軍事的脅威には一度もならなかった。アメリカが中国の海上覇権確立を妨害しているといって、73年間続いた安全保障システムを中国が自ら崩すのかといえば疑問であろう。また、アメリカは日本との軍事同盟を(絶対に)放棄しないだろう。日本の核武装をまで認めるならばよけいにそうである。中国もそれは分かっている。もしそうであれば、1+1よりは、1だけのほうが良いに決まっている。

もちろん、日本が核武装し、それを契機に日米安保という「くび木」から脱するという事態も絶対にありえないとは言えない。しかし、これを実現するための外交戦略があるとは考えられない。奇跡のような曲芸でしか可能ではあるまい。ま、一寸先は闇ではあるのだが・・・

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いずれにしても、日本はアメリカが統制してくれている。管理コストはアメリカが負担する(原資は日本のカネが相当あるのだが)。中国は経済的利益だけを得ればよいのである。中国は自国の東方をこうみているはずだ。

中国が太平洋の西半分をとりたいとさえ思わなければ、日本が中国の脅威になる可能性はない。どの線で中国は満足するか?アジアの国際関係のカギ、即ち平和のカギはアメリカではなく、まして朝鮮半島でもなく、中国の夢がどこににあるか。この点にかかっている。




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