2018年6月20日水曜日

理屈になっていないメディア企業の「世論調査」をどうみる?

もう止めようと思いつつ、カミさんの「でもチラシもほしいし・・・」という希望もあり、ダラダラと続けている地元紙購読。

安倍内閣の支持率が上昇したという報道だ。支持率上昇という点は複数のメディア企業による「世論調査」で共通しているようだ。

それに反して、「モリ・カケについては国民は納得していない」と、「カジノ(IR)法案を今国会で成立させることには国民は賛成していない」と、「文書改竄を指揮(?)したS国税庁・前長官が不起訴になったことには国民は納得していない」と。要するに、安倍現政権がやっている個別の事を国民は評価していない、と。そんな結果をも伝えている。

まあ、書いた側の意識は
支持率は上がっている。しかし、こんなに多くの点で国民は納得していない。
そんなことを言いたいのだとは思う。

しかし、ズバリ言えば、理屈になっていない。中学生の自由研究発表だとしても、これほど理屈の通っていないレポートは稀だろう。それほど駄目である。

***

個別の事項については納得していない。納得できないなら支持はできないはずだ。にもかかわらす結果として支持率は上がっている。

何がよくて支持率は上がっているのか?

単に「他に人がいないから」・・・。こんな説明で国民は「納得」しないでしょう。

レポートする側の責任というのは
結果として、支持率が上がっているのは、〇〇▲▲という要因があるからだ(と思われる)。
ここを言わないと駄目でしょう。理屈が通らず、支離滅裂であるにもかかわらず、社会に向けて公表する。その無神経に呆れる。

***

メディア各社の(もはや「いわゆる」である)「世論調査」をより信頼性あるものとするには、調査側が恣意的に質問を設定しては駄目だ。

そもそも、日本に生活している人であれば『モリ・カケ騒動には納得していますか?』とか、『財務省のS前長官不起訴には納得していますか?』とか、そんな特定の質問のされ方をすれば『納得はしていない』と回答するだろう。当然の反応である。聞かなくともよいのだ。小生だって、納得はしていない。

客観的な世論を把握したいと思うなら、たとえば以下のように質問することだ。

以下の事項の中から関心をもつ五つの事項を選んでください:
□ 1.働き方改革(裁量労働制、高度プロフェッショナル制度を含む)
□ 2.消費税引き上げ(2019年10月実施予定)
□ 3.待機児童問題
□ 4.人出不足と賃金動向
□ 5.カジノ法案(IR)
□ 6.モリ・カケ騒動(政府の説明、S前長官不起訴を含む)
□ 7.北朝鮮の非核化
□ 10.北朝鮮による拉致被害者問題の解決
□ 11.対アメリカ外交
□ 12.対ロシア外交
□ 13.対中国外交
□ 14.イギリスのEU離脱(BREXIT)の経済的影響
□ 15.従軍慰安婦問題の解決

事項1を選んだ方は、現政権の取り組みをどの程度評価するかをお答えください:
1.高く評価する
2.評価する
3.評価しない
4.まったく評価しない
5.評価については判断が難しい

事項2から15まで同じ選択肢を設ける。

最後に、次の質問を置く:
あなたは安倍政権をどの程度支持しますか?
1.強く支持する
2.支持する
3.支持しない
4.まったく支持しない
5.支持・不支持いずれでもない

この間に、支持政党を質問しておくことも必要だろう。

最初の項目リストはランダムに並べるべきである。また、その時々で列挙する項目、並び順は更新する方がよい。

これでも、個別の回答と結果としての支持率とが論理的に整合しないケースが多数発生すると予想される。アンケート調査をすれば、個別のケースでノイズが混入するのは避けがたい。故に、集計して統計的に大づかみするのである。

要するに、国民は何に最も関心をもっているのか、どんな問題を解決してほしいと最も願っているのか? その願いに対して現政権の取り組みは評価されているのか、どうなのか?これらを調べることが「世論調査」でないとすれば、一体なにが「世論調査」になるのだろうか?

もちろん何をどう聞いても、『これも世論だよね』という人はいつでもいるものだ。日本ハム・ファイターズ対ソフトバンク・ホークスの試合を観に、札幌ドームに出かけていって、自分の好きな1塁側内野席に座って『ソフトバンクのファンなんていなかったよ』と。これもまたファイターズ・ファンの多さを知るデータといえばデータなのだ。

***

ホント、勉強というのはするべきものだ。『知は力なり』ではない。『知こそ力なり』というべきだろう。『神よ彼らを許したまえ、彼らは何をしているか分からないのです』。この言葉は何もモームの名作『人間の絆』に限らず、近代小説に何度も登場するバイブルの古言である。

聞きたいことだけをきいて、説明できない結果が得られているにもかかわらず、説明しようとする努力をせず「こうなりました」と紙面にそのまま掲載するのは、実に無責任であり、最近年の日本国内のマスメディア企業を象徴しているようだ。

その理由は、基本的な知識・学問的蓄積・交友範囲をもっていない人が、報道の前線にいるからだ(と思われる)。

納得できないのは安倍政権についてばかりではない。国内のメディア企業が実施しているいわゆる「世論調査」もまた納得できないのだ、な。


0 件のコメント: