2019年11月14日木曜日

一言メモ: 「いじめ」をどう考える

既に言い古されたことだが「いじめ」という現象は小生の幼少時代からあった。というか、ずっと昔からあったことであるには違いない。「いじめ」が社会化され、固定化されると、即ち「差別」となる。

「差別」は改善されるべき前近代的悪習だと思うが、一過性の「いじめ」くらいは自分に与えられた試練だと思って『乗り越えんといかんだろう』と、そんな感覚が正直小生にはあった。

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茨木市消防署で起きた消防士同士の「いじめ」事件がまたワイドショーをにぎわせている。この種の話題はテレビ局の大好物である。これからどんな展開を見せるか分からないが、加害者である上司3名は既に懲戒解雇されたようである。被害者の20代の消防士がこれからどんな職業生活を送ることになるかはまったく想像がつかない。

30代から40台にかけての中堅が若手を「鍛える」と称して、実質的には「いじめ」を繰り返していたとなると、先日神戸市内の某小学校内で起きた教師同士の「いじめ」事件を思い出す。こちらもまた加害者が「じゃれあった」と語っているそうだから、今回の消防士同士の「いじめ」事件と共通した側面をもっているようである。

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前にも書いたのだが、小生が大学に戻った平成初めの時代に比べると、この20余年間で大学生の幼稚化はものすごい程のスピードで進んだ。その幼稚化の進行が逆転したとか、進行が緩やかになったということは聞いていないので、今もなお大学生の幼稚化は進行中なのだと憶測する ― もちろん急増しつつある留学生は除いた話である。キャンパス全体の雰囲気とは別であることを付言しておく。

どう「幼稚化」しているのかと聞かれると困る。実地に体験するのが一番だが、多分、ほとんどの人はビジネスマンとして若手同僚とコミュニケーションをとったり、あるいはアルバイトに採用した若者と話し合ったりしているに違いない。同様の感想をもっている人は、40代、50代のかなりの割合を占めるのではないかと、小生、想像しているのである。

やはり現在の20台は20年まえの10代、現在の30代は昔の20代である。いまの大学生は昔の高校生か中学生、そろそろ中堅のはずの30代は昔の20代ルーキーに近い雰囲気を漂わしている。マ、あくまで小生の主観ではあるが……。

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幼稚化現象の本質的要因が何であるかは実は小生にも分からない。人生80年どころか人生百年の時代が到来して、ゆっくりと成長するように人類が変容しつつあるのかもしれない。あるいは、21世紀に入って普及したインターネットとIT化の流れが人間全般の幼稚化と何らかの関連性をもっているのかもしれない。「鍛えてやる」が「いじめ」になっているという想像力が失われつつあるのかもしれない。相手に共感する能力、相手の表情を読み取るデリカシーがいま弱体化しつつあるのかもしれない。更には、一人っ子の増加、親戚づきあいの減少、近所づきあいのない核家族の増加、地域社会のつながりの喪失などなど、現在の社会状況のあらゆる特徴が「幼稚化」の背景として挙げられるのかもしれない。

幼稚化とは「未成熟」であることなので、社会的交際の機会が減るとともに人は未熟になり、幼稚化するというロジックは一般的にはある。とはいえ、大都市出身の人が人口の希薄な田舎出身の若者よりは成熟していたか、地方出身の若者は大都市の青年より幼稚であったかと言われると、ものの見方にもよるが、そんなことはなかったと言いたくなる。

要するに、幼稚化の本質的原因は小生には分からない。

いずれにせよ、そんな事情がまず先にあって継承されてきた組織内ディシプリンが機能しなくなるとき、そこで経験を重ねてきた人は怒り、焦り、過激な行動をとる。そんな一面も現在の社会にはあるのかもしれない。そういえば、先ごろ、大相撲の巡業中に観客席で笑い興じていた若い呼び出しを拳骨で叱り、それが「暴力」だと判定されて退職したベテランがいた。あれもまた類似したケースではないかと感じられる。

法的に言えば、加害者は悪く、被害者は悪くない。しかし、すべての社会現象には原因があるものだ。組織内の「いじめ現象」を社会問題として把握するのであれば、何がこの現象をもたらしているのか。まず問題を把握しなければ問題は解決されない。

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そもそも同種の不祥事は一定の頻度で実は発生していたのであるが、被害者による告発やマスコミの興味の高まりなどによって、あたかもこの種のトラブルが増えてきているという印象だけが高まっている可能性すらある。だとすれば、なぜこれまでは表面化しなかったのか、どのように解決されてきたのか等々の疑問がわいてくるのだ、な。しかし、小生にはやはり発生頻度として高まっている。何か社会的な要因があって組織内状態が変容し始めている。そんな気がする。とはいえ、意識調査などのデータを視ているわけではない。

特定のタイプの犯罪は毎年ほぼ一定の頻度で発生するものである。個別のケースは関係法令を適用して裁けばよい。しかし、年を追って発生頻度が上昇するなら、上昇をもたらしている原因を探るべきである。個々のケースを法律的に裁いているだけでは問題は解決されない。

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