前稿の続きのようなことを書いておきたい。
世界史には色々なスーパーパワーが登場した。しかし、どれほど長くとも、概ね100年ほどの「黄金時代」を謳歌できたに過ぎない。昔なら5世代かもしれないが、人間の寿命が長くなった現代では3世代ほどの長さでしかない。100年というのは意外と短いのだ。
イギリスは「大英帝国」と呼ばれたこと(それとも自称?)があったが、名実ともに指導的位置についたのは、ナポレオン戦争終息後の1814年に開催された「ウィーン会議」から1914年に始まった第一次世界大戦までの100年間に過ぎない。確かに18世紀末には他のヨーロッパ諸国に先駆けて「産業革命」がイギリスから始まったが、その当時はまだフランスが大陸欧州の主役のような役割を続けていた。イギリスが欧州を代表する指導国になり得たのはフランス革命の勃発とナポレオンの台頭と没落が直接的なきっかけである。加えて、自由貿易と金本位制によって英ポンドを国際通貨として通用させたことも大きい。
中国の清王朝は乾隆帝の時代、大いに国境線を拡大して現代中国の領土の基礎を築いたことが最大の貢献だと(勝手に)思っているが、清王朝の黄金時代である「康熙乾隆時代」も「三藩の乱」鎮圧後の1683年から乾隆帝が没する1796年までの100年少々にすぎない。
古代ローマ帝国の盛時で"Pax Romana"とも呼ばれた「五賢帝時代」も時間の長さで言えば最初のネルヴァ帝が即位した西暦96年から最後のマルクス=アウレリウス帝が亡くなる西暦180年までの100年弱に過ぎない。
日本史で最も長い平和を築いた徳川幕府もその黄金時代と言えば(人によって異なるだろうが)小生は綱吉将軍の下で元禄時代が始まった1688年から松平定信による寛政の改革が始まる1787年までの約100年間だと思っている。寛政の改革は統治組織としての江戸幕府の余命を可能な限り延ばしたという点では歴史的意義をもつ。しかし、中心人物の松平定信がたった6年間在職しただけで老中を退いた後の幕府政治には活発な創造力が欠け、むしろ地方の諸藩の統治能力の方に先進性があった(と勝手に考えている)。幕府政治が輝いていた時間もせいぜい100年ほどに過ぎない。
キリがないので止めるが、後は推して知るべしで、
歴史的節目をなす程の強力な統治システムであっても、その黄金時代は高々100年ほどで終焉する。これが歴史を通した経験則である。
と(これまた勝手に)思っている。
アメリカ合衆国が世界的なスーパーパワーとして登場したのが、第一次世界大戦に連合国の一翼として参戦した1917年。今年はそれから108年後に当たる。
世界のスーパーパワーとしてのアメリカ合衆国の黄金時代は過去のものとなりつつある。そう観るのは、これまでの経験則と合致していると思う。
今後進むのは《世界の変質》だろうと予想している。
すいぶん以前に経済発展と民主主義という問題意識で似たようなことを書いた。
一つの企業の寿命はよく30年であると言われる。30年ほどが経つと成長してきた企業も老化するというわけだ。社内改革を断行せずして、30年を超えて同じ企業を安定的に存続させるのは至難の業である。そんな経験則がよく言われる。
国家も企業もシステムである点では共通している。自ずから寿命があるということだ。文字通り《諸行無常》。100年も経って同じ国家が繫栄していれば、名称は同じでも実質は別の国家になっているという理屈になる。
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