2025年10月21日火曜日

ホンノ一言: 国債の需要創出へ「家計が吸収する仕組みを」・・・ついに出てきましたか

 <財政破綻>をキーにしてブログ内検索をかけると、夥しい数の投稿がかかって来る。繰り返しになるが

思うに、王朝が宮廷の華美によって次第に退廃し、財政が破綻するのと同様に、民主主義国家も自らの過大な要求から財政肥大化を免れることはできず、結局は破綻する。

もっとも最近ではこんな下りを書いたのが、本年6月の投稿だ。そうでなくとも、高校の世界史の授業では「朝廷の財政は破綻し、地方では内乱や暴動が頻繁に発生した」という説明を何度聴いたことか。財政が破綻すると、内乱が起きるのは、軍事費が捻出できず、兵士の給料すら未払いになるからである。そんな状態では正規軍も出動出来ないよねと  ―  世界史の先生、こんな風に分かりやすく説明してくれていたかナ・・・?

江戸幕府の瓦解も遠因は《財政破綻》と《財政健全化の失敗》である。これに成功したのが西南の雄藩、即ち薩摩と長州であったことも日本史の授業で習ったはずである。

《財政破綻》は、民主主義国、社会主義国、帝国・王国を問わず、一つの国が衰退する共通の兆候である。

難しい理屈は専門家に任せ、《財政破綻=崩壊への前兆》ということ位は知っておくべきですぜ・・・というのが経済学の初歩中の初歩という所だ。日本のメディア業界にこの認識が薄いのは、シンプルに大学で真面目に勉強した人材が入社していないということだろう。

財政が破綻への方向を辿り始めると、中央政府(及び地方政府)の債務が膨張する。破綻とは赤字拡大が制御不能になるということだ。

財政赤字は、当初の段階では制御可能だとみな考える。国債を引き受ける金融機関や家計が見つかるのも政府が(ある意味)信用されているからだ。信用されていない政府の公債なら金利を30%にしても誰も買いやしません   ―   いまアルゼンチンがそうなっています。

さて、今日の日経にこんな記事が載っていた:

政府が発行する国債を巡っては、買い入れを減らし始めた日銀の穴をどう埋めていくかが課題だ。財務省理財局長を務めた野村資本市場研究所の斎藤通雄研究理事は日銀以外の国債保有額が年50兆〜60兆円増えていくとの見方だ。市場の安定には家計を含めた民間需要を高める方策が必要と指摘する。

Source: 日本経済新聞

Date: 2025年10月21日 

財務省元理財局長がこんな発言をしているそうだ。

日銀が国債を引き受け続けて、その果てに金利引き上げを迫られ、国債相場が値崩れすると、日銀の経営が不安定化し、円安が進行し、国内のインフレに歯止めがかからなくなる。これが《通貨の崩壊》という現象だ。《円の敗北》とも言える。

だから日銀は保有している国債を徐々に整理していく方向である。しかし、いまの日本社会では《国への依存心》が高まるばかりで、誰も財政破綻と社会の崩壊を心配しない。国債の引き受け手を見つける必要がある、と。そればかりを言うのは、一言で言えば、(どこか)安心しているからである。

そこで日本の家計に国債を買ってもらう。上の発言の主旨はこういうことである。

これを読んで、小生は太平洋戦争開戦を可能にした《臨時軍事費》という言葉を思い出しました。

戦争状態が継続する限り、陸海軍はいくらでも予算を確保できる。その制度的裏付けが整ったところで、戦前期日本の陸海軍は対英米開戦までも決意することができた。また、議会にはそれを停める手段がなかった。

このエピソードを思い出したわけだ。

仮に、本当に日本の財政が破綻しても損をするのは国債を買った日本人である。「なくしたものはしゃんめえ!」とばかりに日本人が我慢すれば、アジア危機のときの韓国や、財政危機の時のギリシアのように、海外に利払いを継続するために、強烈な緊縮生活をおくることにはならない。どちらにしても、国債を多く保有するのは日本の富裕層であるに違いない。富裕層が資産をなくしても、庶民はかえって愉快であろう。格差は是正された!こんな感覚もあろう。

・・・しかし、富裕層が資産を失くすというのは、日本人全体の資産がなくなるということでもある。

財政赤字を国債で補填し、その挙句に財政が破綻するという事は、その間ずっと、国内の資産を食いつぶしてきたということと、同じ意味である。

つまり、財産税こそ実施はしなかったが、国債を買わせることで政府が合法的に富裕層から資産を強奪したわけである、ナ。食いつぶす資産がなくなった時点で、財政赤字は継続不能となり、そこで財政が現象的にも破綻する。

富裕な日本人と貧困な日本人が混じっているよりは、日本人は全て平等に貧乏人ばかりである方がまだマシであると、その時になって思うかどうかは微妙であろう。

上の元財務省理財局長だったかナ(?)、この発言は要するにこういう方向に行くしかないということでしょう。いよいよ現代日本社会も最終的崩塊が見えてきた感じだネエ・・・そう感じました。

しかし、救いもある。

いま日本で暮らす富裕層に国債を買ってもらおうとすれば、インフレ率が不透明ないま、5年物で金利5%がほしいと小生なら思う。

日本では新規購入は出来なくなってしまったが、例えばアメリカの"Ares Capital”(ARCC)を買えば利回りは9.84%に達する。これは極端としても、最も安全な米国債10年物なら利回りは本日現在で4.25%である。こんな国際的投資環境の中で、日本の国債は10年物で1.70%である   ―   そりゃあ、日銀が引き受けてきましたから・・・

政府が買ってくださいという国債を買うか?・・・買いませんよ。こんな低い利回りの債券など。それに10年たつうちに日本政府の国債自体、紙くずになるかもしれません。インフレと円安はリンクしてますから。日銀に引き受けさせるのは危ないから家計に買わせようなあんてネエ⋯⋯、江戸時代の勘定奉行だってここまで冷酷じゃあありませんよ。

つまり、財政が破綻する危険性は、今のままではアメリカよりも日本の方が高い、と。そう観ているのだ。上の財務省元理財局長の発言だが

日本の家計を深堀りするとともに、国際金融市場でも広く、増発される国債を消化していきたい

もしこんな提言なら、小生は大賛成である。「大賛成」というと語弊があるが。

日本の国債を海外諸国も広く保有してくれれば、「非常識な財政政策」に対して、国債の売り浴びせという形で日本政府に警告を出すことが出来る。日本人が求めても、資本市場がその非合理性を指摘する道が開ける。

愚かな日本人の独善を国際資本市場が指摘してくれるとすれば、実に、実に有難いではないか。戦前期日本もオープンにしておけば日本国民にも良かったのである。そうすれば「臨時軍事費」などという愚策が議会で通った直後に円は暴落していたに違いない。

無知な日本人を騙して、挙句の果てに国債が紙きれになるような失敗例は、昭和10年代、20年代だけにしてほしいものであります。


民主主義を健全に運営するには、しっかりとした庶民層がまず存在していなければならない。そんな庶民を形成するには、しっかりとした義務教育・公教育があって、人的資本への投資を安くしておかなければならない。現代は、(アメリカも似たような状況だが)社会のマス層が(自壊というわけではないが)崩れ始めている。

そんな社会状況で民主主義を健全に運営するのは無理である、と。小生はそう観ております。

政策の基礎は財政である。国際資本市場とつながっていれば、いくら民主的決定であっても、愚かな財政は市場がチェックして、実行はできないのである。

真理は民意に勝る

これは救いだ。



 


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