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2025年4月7日月曜日

「トランプ関税」が愚策であるのは明白だが・・・

関税率引き上げは、貿易戦争を招き、結果として世界経済全体の成長を押さえるので、愚策中の愚策であるというのが、正統派経済学の定理である。

その意味で、今回の「トランプ関税」は、計算上の根拠のお粗末さには目をつぶるとしても、基本的に「愚策中の愚策」であるのは明白で、これがいわゆる《敗着》となって、2年後の米国・中間選挙で与党・共和党が大敗北する直接的要因になるかもしれない。

しかし、多分、この点は分かってやっているのだろうナアとは憶測している。

ひるがえって、この日本で大きな政策を決める時には、まず閣議で全閣僚の合意をとらなければならず、閣僚の意志には官僚の意見が反映されるものだ。そして、日本の「関税三法」を法改正するとすれば、与党の政調を通す必要がある。マア、日本国の首相にはト大統領のような振る舞いは、法的に、少なくとも組織として出来ないのだ。一言で言えば、それほどの権限は有していない。よく「指示」と言っているが、実際には「お願い」であろう(と勝手に憶測している)。

戦後世界では正統派経済学の論理によって経済政策が行われてきたので、自由貿易が理想であることを正面から否定する指導者は出現しなかった。

今回の「トランプ関税」は、グローバリゼーションへの反動とナショナリズムの復権とみれば、そう観えるのかもしれない。が、新しいアメリカが向かうのは、結局のところ、グローバル経済の成長を捨てて、アメリカを中心とした《経済ブロックの成長》を追求する方向に向かわざるを得ない、と。そんな風に観ている。

10年後に国際機関《WTO》(=世界貿易機関)がまだ存在しているかどうか分からない。

20世紀初めの第一次世界大戦より前にあった《帝国主義+デカダンス》に似た時代がまたやって来るのではないか、と。そんな感覚もあるのだ、な。

ある行動が愚策であるかどうかは、その時点で正統派である理論(及び価値観)に基づいて下される判断だ。正統派ではなく異端派によれば、愚策が上策になることは多い。この種の例は、歴史上、無数にある。

いわゆる《パラダイム・シフト》は、俗にいえば「ちゃぶ台返し」なのである。世界は、結果が全てといえば、そうなのだ。

トランプ大統領自ら、「経済革命」だと主張しているが、本当に「革命」になるのかどうか、今の時点では分からない。しかし、アメリカ国内にそんな「現状否定」を望む勢力があるというのは、前から分かっていた。

世界を動かしているのは『我はかく思惟する』という理性ではなく、『我はかく欲する』という欲望と意志である。これは誰もが知っている事実であろう。

英誌"The Economist"は、まだ確定的な評価はしていない。

... Investors have lowered their expectations for American corporate earnings this year by 1.5%—the same as for earnings in Europe. This is consistent with academic evidence published before Mr Trump took office, which concluded that American tariffs would cause as much or more economic pain outside America as within.

The good news is that the global economy faces Mr Trump’s tariff onslaught from a position of relative strength. A composite measure of global growth in March, derived from surveys of purchasing managers, rose from its February reading, and indicated particular strength in the services sector, which is so far unaffected by tariffs.  ...

America’s starting-point is even stronger. On April 4th statisticians revealed that the economy added 228,000 jobs last month, well above expectations. Old news, it is true. Yet real-time data tell a similar story. A weekly index produced by the Dallas branch of the Federal Reserve suggests that the economy is growing by over 2% a year. Goldman’s activity indicator shows America outperforming other rich countries. Although Mr Trump has committed one of the worst policy blunders of all time, he was lucky enough to inherit a strong economy. How much pain can it take? 

Source: The Economist

Date: Apr 6th 2025

URL: https://www.economist.com/finance-and-economics/2025/04/06/will-trumps-trade-war-cause-a-global-recession

Google翻訳で下線部だけを和文にすると、

トランプ氏は史上最悪の政策失策を犯したが、幸運にも強い経済を引き継いだ。どれほどの痛みに耐えられるだろうか?

その行為が「失策」であるかどうかは、目指している「目的」に依存する。多分、ト大統領が目指しているのは、正統的な《西側世界》がこれまで合意してきた伝統的目的とは異なるのだろう。伝統的目的を前提すれば、ト大統領がとった関税戦略は愚策なのである。

しかし、トランプ関税が愚策であるかどうかは、ト大統領が新たに目指し始めた目的を実現する上で合理的であるのかどうかで、アメリカ人が判定するべきことだ。

ト大統領が目指している《非伝統的目的》の実現に協力できる余地は、おそらく日本にもある(かもしれない)。それが日本の国益にプラスであるなら、協力すればイイ。日本の国益を毀損するのであれば、戦後日本の外交戦略を根本から見直す作業が必要になるだろう。


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