最近の違憲判決の流れから見て、これ自体は予想の範囲にあった。が、こうした姿勢が裁判所にとって賢明なのかどうか。疑問ではないかと、小生、考えるのだな。
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違憲状態をもたらす主因として、まず衆議院小選挙区については全都道府県に定員1名を割り振り、あとは人口に比例して定数を決めるという方法。これが大いに問題だとしている。まあ最高裁の持論なのであるが、定数配分方式にまで踏み込んで違憲判決を出してきている。今回の判決は参院選挙であるのだが、要するに有権者一人当たりの定員に格差がありすぎる。そういう主旨である。
司法府が数字の大小をみて、そこまで言えるか、と。この点である。
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日本人が暮らしているのは経済活動を通じてである。法より前に暮らしがある。
その経済活動には農業や林業のような土地集約型産業もあれば、製造業、サービス業など労働集約型産業もある。地方では農産物を生産し、大都市ではサービス業に特化するのは経済の理屈に合っているのだ。
最高裁判事の思考に沿えば、農業地域は人口が希薄だから議員定数は少なくとも良いということになる。結果として大都市で大都市型の経済活動に従事している人たちの意見が政治に反映される傾向になるだろう。
それ故、最高裁が展開しているロジックは、一つの経済政策であり、極めて政治的である。
ひょっとすると、TPPに反対する国内農業団体を牽制するコミットメントとして違憲判決が次々に出ているのではないか。水面下で政権から最高裁に何らかの圧力がかかっているのではないか。そんな邪推もありうるのではないか、というより「ありうる」と書いてしまう本ブログが現実にこうしてあること自体が、最高裁判決の正当性に影を投げかけるように思う。慨嘆に値すると思うのだね。
都道府県に一名の定員を割り振る、というか地域間の平等を図ることの是非は、本来、憲法の段階で(具体的に、あるいは理念として)明記しておく方が適切である。一名の定員を各地域に平等に割り振ること自体が正義に反するとは、小生、どうしても思われないのだ。
それにしても、地元の北海道新聞が「違憲判決」を喝采(?)し、国会の怠慢を指弾しているのは一寸、というより大変に滑稽である。東京新聞がそう書くなら理屈にあうが、道新がねえ…。ほんとに分かっているのかなあ…。そんな風に読んだ。
【追記】ちなみにアメリカの上院は各州とも定員2名で「州」という地域について完全に平等だ。州別の人口をみると最大のカリフォルニア州が3387万人、最小のワイオミング州が49万人(2000年センサスによる)。一票の格差は69倍に達する。それでも違憲にはならない。なぜなら憲法で各州平等の定員が定められているからだ-他方、下院は人口に比例して定員が配分される。これも憲法に定められている。日本とアメリカでは地域の独立性や国情が異なるだろうが、民主主義と選挙を考えるうえでは大いに参考とするべきだと思われる。
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