2011年3月25日金曜日

物資不足と見えざる手

政府は便乗値上げは許さぬと唱え始めた。建設資材の買い占め、価格引き上げの動きを注視していくという。市場の監視を強めるわけだ。確かに、災害復旧時には時間との争いになることが普通なので、市場による解決より、組織的計画による解決が優越するという考え方も分かる。しかし、不足している商品があれば全て政府が適切な生産指導を行うことができるのか。生産プロセスの現場を全て熟知しているのか。

北海道でもミネラルウォーターが店の棚から消えつつある。我が家はこの3日で半ダース箱を6箱買った。普段の10倍以上の購入ペースだ。いわき市在住の兄弟に送るつもりで買った。何しろ現地にはガソリンも水も入ってこないというのだ。他の人も同じような行動をとっていれば商品が棚から消えるのは当たり前だ。

おそらくキリンやアサヒが製造しているナショナルブランドは被災地向けに出荷され、北海道内では道内産商品が並んでいくと思う。増産はされることは確実だ。しかし、水の増産にはボトルの増産が欠かせない。化学メーカーが原材料を調達しないといけない。サプライチェーンが即時有効に機能するのか?
 
商品価格を震災以前の高さに固定したまま、これら全ての生産活動を政府が計画できるのか。できっこない。計画経済の不効率は社会主義の実験で証明済みだ。不足していれば価格上昇を認めなければいけない。そうすれば全ての企業に増産の動機が生まれ、政府があれこれ命令せずとも自然に商品は増えていく。
 
今回の大震災は文字通りの天災だが、価格メカニズムの働きも神の見えざる手となる。これを素直に認めることが大事ではないか。理にかなったことを進めて、 理にかなわないことは、たとえ首相、閣僚の指示であっても批判することが大事だ。『こんな場合に互いを批判し合ってどうする』という場合ではない。天災のうえに政府の判断ミスによる人災を積み重ねてはいけない。

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