2023年10月18日水曜日

ホンノ一言: アメリカの実質金利高をどう見るかという点

 前稿では

アメリカの実質長期金利は既に大幅に上がっている。インフレ率はそうそう急には2パーセント線には戻りそうにありませんゼ。

どうするおつもりで?考えがおありと観えますが、というところである。

こんな風に、金利高止まりを懸念するスタンスで投稿したが、同じWall Street Journalに載った記事はそれよりは強気の受け止め方を反映する内容になっている。例によって、Evernoteに保存した元記事にアンダーラインを引いた箇所だけを抜粋する形で要約に代えたい。

記事はエコノミスト65名に対するアンケート結果をまとめたものである。

In the latest quarterly survey by The Wall Street Journal, business and academic economists lowered the probability of a recession within the next year, from 54% on average in July to a more optimistic 48%. That is the first time they have put the probability below 50% since the middle of last year.

The median probability was 50%, in effect a coin flip.

 Source: Wall Street Journal

Date: Updated Oct. 15, 2023 12:04 am ET

Author: Harriet Torry and Anthony DeBarros

URL: https://www.wsj.com/economy/a-recession-is-no-longer-the-consensus-3ad0c3a3

1年以内に景気後退が起きる確率の中位数は50%である。半分以上のエコノミストは景気後退は起きないと予想している、という結果だ。 

Fueling the optimism are three key factors: inflation continuing to decline, a Federal Reserve that is done raising interest rates, and a robust labor market and economic growth that have outperformed expectations.

この楽観論の根拠は三つある。インフレ率が終息しつつあること、インフレ抑制という仕事をやり終えた(と判断しているはずの)FRBという存在、予想を超えて根強い景況と雇用動向、この三つである。

※ ただ、この三点とも現状描写あるいは感想であって、「だから今後もこうなる」という根拠とは言い難い ― これは単なる私見であるが。

 An overwhelming 82% of economists said the Fed’s current interest-rate target range of 5.25% to 5.5% is restrictive enough to bring inflation back to the Fed’s 2% goal over the next two or three years.

これはその通り。現行の金利水準はインフレ率を(2,3年かかるにしても)2パーセント・ラインにまで抑え込むのに十分な高さであると、小生も思う ― 実際、時間はかかるだろうが、そうなりつつある。

Economists expect inflation as measured by the consumer-price index, which was 3.7% in September, to tick down to 2.4% by the end of next year and 2.2% by the end of 2025.

前年比で測ったインフレ率だが、来年末までに2.4パーセント、再来年の2025年の末までに2.2パーセントまで低下するだろうと予測されている。 インフレ率ターゲット<ジャスト2パーセント>に執着するデジタル思考に陥れば危機は避けがたいが、真っ当に考えればインフレは必ず沈静する。

Economists give Fed Chair Jerome Powell relatively good grades for his handling of monetary policy. Nearly half gave him a solid B, while 20% gave him an A, and 20% a C. 

パウエルFRB議長に対する評価は、半数は<評価B>、4分の1は<評価A>、残りの4分の1が<評価C>を回答している。ま、こんなところだろうと思わず納得。 

Some 81% of economists also said the recent run-up in bond yields to their highest levels since 2007 increased the probability of a recession, though not by enough to offset other factors making such a downturn less likely.

長期国債利回り(と実質長期金利の急上昇)は景気後退の確率を確かに高めるものだが、上に挙げたプラス要因の作用を相殺する程のものではない。つまり、現在の金利高止まりは景気後退を予測させるほどのものではない。

※ 私見だが、強気の根拠は「今はこうだ」という現状判断、実質金利上昇は「確実に作用するファクター」というロジック。将来見通しがこれほど強気でいいのかという感想はある。


翻って、このレベルの(記者によって互いに矛盾するような)景気動向分析が日本の経済紙「日本経済新聞」に載ることは少ない。この点は期待を裏切っている。ただ、いわゆる「役に立つ情報」が同紙に多く掲載されている点は認める。 だから価格分の価値はある。

その他の新聞メディアは、「役に立つ情報」というよりは「いま話題の情報」を主に伝えている。ズバリ、面白いがあまり役に立たない。小生が毎日視聴するニュース番組がいつの間にかテレ東の「WBS」になり、NHKとその他民放のニュース番組から離れたのも同じ理由だ。

ジャニーズもそうだろうし、旧・統一教会もそうなのだろうが、日本のマスコミ企業は視聴者の役に立つ情報を提供する「報道」と視聴者を楽しませる「教養・娯楽」という異質のコンテンツを、(自覚することなく)混在させ、鍋料理のようにして一体のものとして提供していた。ここがメディア事業としては未成熟であったのだろう。その分、各分野ごとの業務規律・経営規律が弱かったのだと思う。のんびりと寛げる島国・日本(というより日本語空間)と容赦のない相互批判に常時おかれている欧米各国との違いがここにもあるのかもしれない。



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