2016年4月14日木曜日

保守的なへそ曲がりの結婚観

朝食をとりながらカミさんとみるTVのワイドショーが本ブログに何度登場していることだろう。別に、ワイドショーが主たる情報源ではないのだが、視聴していると口を出したくなる「議論」にいつもなっている。だからこそ、「井戸端会議」なのだろう。

本日の話題は『幼稚園・保育園から大学までの教育無償化』、そのための財源についてであった。確か「お維新」の着想ではなかったかと記憶しているが、先日の投稿のとおり、真面目に議論するほどのアイデアでもないと思われるので、小生の意識からは消え去っていた。

やはりTV局は、パクっと食いつくのだなあ・・・そう思った次第だ。

すべて覚えているわけではないが、個人的なコメントをメモしておきたい:

(1)

★ 教育無償化に必要な財源は概ね7兆円。

京都大学の某教員が試算した数字だが、現在の大学進学率を与件とし、大学授業料を年間50万円ほどと前提して計算しているようだ。進学率はいいとして、日本で大学といえばほとんどが私立大学である。授業料50万円は国立大学の授業料だ。私立大学、特に医学部は数百万円かかる。積み上げ計算の詳細はわからないが、人数×50万円で大学教育費とするのは非現実的だ。

この7兆円が防衛費6兆円を超えるというのは異論はないが、医療費や年金費の数十兆円と比べれば大したことはないと話していた。日本の国家予算は90兆円である。医療費・年金費を足せば、90兆円を超えてしまう。

多分、TVで言っていた「年金費」は、「公的年金受給者の年金総額」のことだと推察される。これならば、平成26年度に53.4兆円になっているから、話しの辻褄があう(資料)。しかし、これは年金として支給された金額であって、税の投入額ではない。年金を支える財源は、税というよりは保険料である。長生きした人には支払った保険料から戻してあげるのが「年金保険」である。なので、年金費という場合、支給額ではなく税負担額を使わなければならない。医療費についても、医療保険から支給される分は税負担ではないので同様の理屈になる。

ちなみに厚生年金保険の場合、平成26年度の国庫負担額は8.8兆円になっている。教育無償化に必要な財源よりは若干多いが、大体等しい。故に、大雑把な金額としていえば、『教育無償化政策を実施したいなら、厚生年金保険をもう一つ作るのとほぼ同規模の予算を手当てしないといけない』。そういう試算になるのではないかと思われる。

(2)

★ 財源として相続税強化が有望。

これは全面的に賛成だ。ただ反対は多いと思う。いわゆる「名門・名家・上流階層」は戦後日本でも形成されてきているが、たとえば田園調布の高級住宅街が空洞化しつつあるような現象が、全国でより加速されることになるのではないかと思われる。とはいうものの、いわゆる「二世政治家・世襲政治家」の芽を摘むという効果もあり、全体としてはプラスになるのではないかと思う。

(3)

★ 資産課税を強化する。

たとえば1億円の預金を保有している人には、その資産に対して税をかける。気持ちはわかるが、日本国憲法の29条には「私有財産の不可侵原則」が規定されている。資産運用収益は所得であるから課税しても可であるが、資産そのものに課税する(=お上がとりあげる)ことは容認されていない。「資産課税」を文字通りに実施すれば、「憲法違反である」という違憲訴訟が相次ぐであろう。

資産課税を定義通りに実施するなら、シュンペーターの言うようにまずは憲法を改正して、社会主義への道を開いておく必要がある。が、こんなドラスティックなことをせずとも、現在の日本で富を保有している人の大半は高齢者である。相続税の強化で、長期的には、問題は解決されるはずである-徴収した資金を賢明に支出する能力を政府はもっているのかという疑問はあるが。

(4)

★ 専業主婦など配偶者優遇制度の廃止

これはずっと以前から指摘されており、既に段階的に実行されつつある。

ただ思うのだが、A君とBさんがいて、二人とも働いている。それで近いうちに結婚したいと思っている。結婚後も働くかどうか、育児に専念するか、Bさんは迷っている。財政学者がよく言うのは『その人のライフスタイルによって税負担が異なるのは合理的でない』という主張だ。この主張は本当に本筋をついているのだろうか?

もし税とライフスタイルとは独立であるべきだと考えるなら、結婚後に働くか、専業主婦になるかで税負担額に違いを設けない。それは分かる。しかしそれ以前に、二人が働いている状態で、結婚しようが、同棲のままでいようが税負担額には違いはない、と。こうあるべきだと主張しなければならない。小生にはそう思われるのだが、そうなのだろうか?専業主婦であるか共働きをするかどうかがライフスタイルの選択ならば、結婚するか同棲のままでいるかもライフスタイルの選択ではないのか。敢えて結婚をするのは、子どもを育てるという目標を暗黙に前提していると思うのだが、違うのか。子供は育てないと決めているならば、結婚することが望ましいとは、言えないのではないか。

税制もまた行政府が行う政策の一環だ。同棲をしている二人と、正式に結婚をしている二人はもう差別しない。そう考えるなら、税負担も平等にするべきだ。しかし、育児には家庭が必要で、家庭を築くには正式に結婚することが望ましい。そう考えるなら、専業主婦となるがゆえの利益は、そのことの社会的利益に対応するものと考えて、(一定期間かもしれないが)育児に専念する行為に対する報酬であると意味付けても、小生、それほど道理に反しているとは思えないのだ、な。そもそも今は子育てに優しい、出生率を高める方向の制度が必要なのではないか。

小生は既に子育てを終え、カミさんと二人だが、子どもが幼少期(=学齢期以前)の間、特に母親が常に目に見える範囲にいることは、子どものメンタル面を安定させ強くするという研究結果を読んだことがある。であれば、なおさらのこと、できるだけ多くの時間を子供と過ごすという「ライフスタイル」を社会的に支援しても道理に反することにはなるまい。

小生はへそ曲がりであり、かつ(極右とは思っていないが)相当に右翼である。それもあって、専業主婦優遇制度の廃止には、明確に反対なのだ、な。

【加筆】上に書いたようなことをカミさんに話すと、『旦那さんの給料だけでは生活できないから奥さんも働くんでしょ、たくさん働いたら税金が増えて、かえって使えるお金が減るとしたらおかしいよ。専業主婦を優遇するのはいいけど、専業主婦になれない人はどうするの?』このようなことを言った。なるほど・・・。確かに不合理だ。とはいえ、だから専業主婦であることの利益を消し去ることが道理にかなっていると。そうは言えないが、この点はまた別に。


0 件のコメント: