アメリカのトランプ大統領が日本から輸出される商品に対して25%の関税を課すると、自動車に対する関税25%はそのままだ、と。そんなレターを送って来た。
「自動車は日本経済の基幹」ということもあって、日本中が大騒ぎ(?)になっている、というより「交渉失敗」だと悲観してよいのか、「失礼だ」と激怒してよいのか、激怒してどうなるものかという諦めもあるのか
イイですよ
と、このさい開き直ってしまうTVコメンテーターも現れたりして、人によって表情はいま実に様々である。
この「イイヨ」という硬派の反応が人気(?)を高め始めているようなので、ちょっと嫌味を書いてみたくなった。
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この「イイですよ、どうぞ」と語っている人たちの言い分だが、少し前までは1ドルが100円だった。それが今では140円台半ばだ。なので、アメリカに輸出する商品については、米国内販売価格($ベース)を変えていない場合、売上げ収入が5割近く増えている勘定になる。日本国内のコスト増、米国内の輸送コスト上昇などもあるので、利益の増加率となるとその分だけ下振れるが、同程度には増えているだろう。
そこに25%の関税率だ。米国内販売価格($ベース)を変更せず、関税は全て日本側がかぶるとしても、増えた利益が元に戻る程度、マイナスにはならないだろう、十分乗り越えられる・・・。どうやらそんな理屈で
関税25%、乗り越えられます。大丈夫です!
こう語る御仁はTV画面の向こうで意外と多い — 国内の新聞はとるのを止めたので分からないが。
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でも、ちょっと待って・・・これが本日投稿の主旨である(あくまでも嫌味としての投稿だ)。
このところ輸出企業の利益が増えてきたのは円安進行のためだ。
その円安は、輸出業者にとってはプラス、輸入業者にとってはマイナスだと、全てのメディアは大衆にそう説明してきたはずである。
その輸出業者のプラスが関税率引き上げで帳消し。元に戻るわけだ。とすれば、インフレという円安の負の効果のみが日本には残る理屈だ。
「イイですよ」という現時点の反応は、
日本は結局損をしただけネ。まあイイですよ。我慢しますから。
何だか拗ねているようでもあり、
もう諦めますヨ
ハッキリとこう明言する方が趣旨がよく伝わるのでないか、と感じる。
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上がった関税だが、それをアメリカで転嫁すれば、アメリカの消費者は値上げに泣く。これはアメリカ国民にとって損だと日本側では話している。が、関税収入は米国政府の懐に入るのだ。
日本から見ると、価格転嫁するから採算は悪化しない。損失がないようにも思える。が、$ベース価格の値上げによって輸出台数は減る。これは¥ベース価格から期待される需要が減るのと同じだ。日本側が自動車不況に陥るのは避けられない。
一方、上がった関税をアメリカで転嫁せず、米政府に納める関税額だけ日本側が全額かぶるとすればどうか。この場合は、日本側の利益が減って、輸出採算が大いに悪化する。やはり自動車不況だ。ただ、$ベース価格は変更なく、アメリカ国内の売れ行きは変わらない。故に、アメリカ国内に生産拠点を移す直接的な動機が強まる。これがトランプ関税のそもそもの狙いだ。
米政府が関税収入を得て、日本側メーカーが販売減少か、採算悪化のいずれかで自動車不況に陥るのは二つのケースで共通している。が、事態の進行シナリオとしては複数ある。何故ここをきちんと話題にしないのだろう?どちらも「日米我慢比べ」などという状況ではないのではないか?
但し、上の予想は全て経済学で言う《部分均衡分析》だ。米国内ライバル企業の行動、ドイツ、韓国など日本以外の自動車大国に課する関税がどうなるか?これらも無視できない要因だ。
関税はいわゆる《保護貿易政策》である。自由貿易を是とすれば保護貿易は邪道という理屈になるが、実際には「戦略的保護貿易」で経済発展に成功した例は、歴史上、多数ある。
アメリカ国民がこれから苦しみます。ここは日米我慢比べです。
ノー天気に語っている解説者は、端的に言って阿呆に見えます。ニュース解説なら、もっと真面目にやったほうが良いと思うのだが・・・
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