たとえ新聞やTVを相手に「情報断ち」をしても、ネットからは断片が入って来る。いくら目張りしても、どこかの隙間をみつけて家の中に入ってくるカメムシに似ている。
今日も
ウクライナとアメリカの平和交渉は混とんとしてきました。
Source: アゴラ AGORA 言論プラットフォーム
URL: https://agora-web.jp/archives/250228222304.html
こんな一文が目に入った。
昨日、ホワイトハウスを舞台に激論を繰り広げた挙句に決裂した、アメリカ=ウクライナ会談のことである。その後、上のような記事が出回っているわけだ。
確かに「混沌」としてきた。が、これはいわゆる将来予測でメシを食ってきた野次馬の目線からいえば、「線形的予想」、というか「単純な外挿予測」である。
野球で3回までに2点差がついた。とすれば、9回までやればその3倍、6点差がつく。先行されたのなら負けてしまう。こう考える人は悲観論者だ、先取点をとって勝っているなら6点差で楽勝だ、そう考えるなら(とんでもない)楽観論者というわけだ。
世界を予測するのに単純な外挿予測は当てはまらない。
今の場合、
混とんとするより前に、ウクライナという国が消滅してしまえば、ウクライナとアメリカの平和交渉も自動消失する。
情勢は、予測によって動くのではなく、力学によって動くものだ。戦争をしているなら軍事力と外交手腕に着目して将来予測をするべきだ。
「混沌」などと言う楽観的予測にはとても賛成する気になれない。
アメリカの軍事支援は西側ヨーロッパ諸国がまとまっても(量的に)補えない。イギリスは(最初からそうだったと観ているが)賢く立ち回っているようであり、ドイツはもう既に青息吐息というところ。そもそもドイツはロシア融和外交で経済的繁栄を築いて来たのである。開戦当時から在職しているマクロン仏大統領は、昨年の選挙で与党が大敗北して昨年末には4人目の首相を任命したばかり。最大の政敵である極右政治家・マリーヌ=ルペンを検察を使って不正経理で葬り去ろうとしている真っ最中である。これでは国内を統治するので精一杯だろう。後は推して知るべし。ハンガリーなどは最初からロシアに同情的である。
日本も太平洋戦争で酷い負け方をした。試みに<太平洋戦争 戦没者>で検索すると、
太平洋戦争における日本の戦没者数は、約310万人とされています。そのうち軍人や軍属は約230万人、民間人は約80万人です。
と表示される。
次に<太平洋戦争 1944年以降 戦死者>で検索すると、
太平洋戦争で1944年以降に戦没した日本人の数は、約281万人です。これは全戦没者数の約91%を占めています。
という結果になる。
太平洋戦争は1941年12月に始まり、42、43、44年と続き、45年で終わったが、戦没者の90%超が後半1年半に集中しているわけだ。
1944年1月時点は、まだサイパン島が落ちておらず、日本の敗戦が「決定的」だとまでは言えなかった。そこで真剣に和平を求め停戦していれば、戦没者の9割以上は助かったかもしれない。
しかし日本は和平を求めなかった。何故なら日本には日本の正義があったからである。
戦争を支配する論理、重視するべき計算とはこういうものである。
劣勢が決定的になった後に停戦を選んでも"too late"であるのは歴史が教えてくれている。日本人が経験した歴史をウクライナ指導者に伝えることも日本として出来る事の一つであるには違いない。『耐え難きを耐え、忍び難きを忍び・・・』といった精神は、ウ国の歴史全体がひょっとすると、そんな歴史であるかもしれず、言いたいことが伝わる可能性があるというものだ。
あと一月もたたないうちに、『ゼレンスキーはもはや狂人だ』と、そんな風評がアメリカ発で世界に拡散されていくのではないだろうか?
予想されうる状況ではあったものの、憐れムベし、憐れムベし……