2022年3月15日火曜日

断想: Local Conflict+Putin's Gambit+Biden's Defense →危機拡大、という紛争ループ

先日投稿したThe Guardianの記事の中にもあるが、ロシア対ウクライナ間の地域紛争はずっとあったわけである。何もキエフ大公国にまで遡らなくとも、日本史に対応付ければ吉宗将軍後の天明・寛政期を含む時代に相当するが、女帝エカテリーナ2世がウクライナを併合し、更にトルコとの2度の戦争に勝利してクリミア半島を獲得したほか、多くの偉業をロシアに遺してから250年余り、何回となくあった数々のウクライナ独立劇とその挫折を辿ると、両国が決して良縁であったわけではないというのは歴々たる事実なのだ、な。

今回、また武力衝突となって《不和》が表面化したわけだ。

地域紛争は地域紛争として《局地化》しておけば、さして国際的なハレーションを起すことなく、一先ずは終息したに違いなく、ウクライナ発の過激派テロが予想されるにしても、それはモスクワにとっての危機、せいぜいがロシアにとっての危機としてマネージするべき事柄であったろう。

これを世界的な危機レベルに拡大させた主要因は、一つはウクライナ軍を指導するために米軍が入っていた点だろう。

その背景にウクライナ政府がNATO加盟を希望しロシアと敵対する意志を隠さなかったことがある。ウクライナの意志にアメリカが応えたのか、アメリカの働きかけにウクライナが応じたのかは、この分野の専門家ではないので分からない。が、この進展を許せば、プーチン大統領のメンツは(ロシア国内で)つぶれる。2024年のロシア大統領選挙に出馬する意志を隠さないプーチン氏には致命的失策になる。そこでロシア、というよりプーチン大統領が武力行使に踏み切ったが、プーチン大統領の侵攻に黙って引き下がるとバイデン大統領のメンツが(アメリカ国内で)つぶれる。アフガン退去のみっともない情景がまだ目の裏に残っているバイデン大統領にとっては致命的失策だ。今秋に予定されるアメリカ・中間選挙で民主党が大敗すれば早くもレームダックになる。かといって米軍は動いてくれる見込みが立たない。アメリカ国民も派兵には消極的である。それで困った。今回の世界情勢はここから発している。

要約すれば

プーチンの先攻対バイデンの防御

チェス用語で言えば

Putin's Gambit vs Biden's Defense 

これが今回のウクライナ紛争の基本的図式だろうと小生は達観している。

有効な戦略要素である"Stake Holders"として、プーチン大統領は中国・習近平に協力を求め、それに対してバイデン大統領はNATO加盟国、ファイブ・アイズ構成国、その他同盟国に同調を呼び掛け《国際的世論操作》と《世界的経済戦争》を始めた。

その結果、本来は仲の悪い2国の地域紛争であるのが、世界的な危機に拡大し、しかも最終的決着までには長い時間を要するという情勢になってきた。

ヤレ、ヤレ・・・これではまるで世界版の「応仁の乱」だネエ。東軍、西軍に分かれた所も同じだ。

日本はアメリカの同盟国であるせいか、つまり「西軍」のメンバーであるせいか(ネットを含めて)世間の反応は「東軍憎し」で

正義は勝つ!勝たねばならぬ!!

の一色だ。が、本質的には滑稽の一言。要するに

政治の失敗の責任をとるべきところが、開き直って「正義の戦い」を外に拡大している

こういう事でしょう、と小生には思われる。つまりは、プーチン大統領、バイデン大統領、お二人とも次の選挙のことが心配なのである。

これが物事の本質だろう。

この三流政治家が、お前たちが考えていることは全部マルっとお見通しだ!

と、言いたいところだネエ。

そうそう・・・ウクライナのゼレンスキー大統領。狂言回しの役回りだ。彼もまたホンネで何を考えているか分からない御仁だ。それと常に見え隠れする《イギリス》という世界歴史の黒子役、今回も仕事をしているナアという印象だ。

日本国内の政治家の胸の内は分からないが、片方のバイデン政権の思惑に全面的に協力している日本のマスコミは視ていてホントに滑稽である。そう思う2022年の3月である。

現代の世界には多数の国が並存し、大国もあれば小国もある。それぞれが経済的実力に応じた武力を有し、国防は絶対善、つまり個別的自衛権を大前提としている。これでは《世界平和》を維持できる論理がない。

世界には<中央政府>がない。国連を<幕府>とみるとすれば極めて弱体である。応仁の乱が勃発した日本と同じで、《裁定者》が不在なのである。多くの武装集団が分権的に自立していた封建社会の論理とちょうど似た論理で紛争現象が頻発するのが21世紀なのかもしれない。だとすれば、封建時代が小紛争は頻発しても大乱はなく長期間続いたカン所を勉強するのも悪くはない。

ともかく、現実がこうであれば、現実に応じた《平和維持のための統一ルール》が要る。互いに「正義」を主張して徒党を増やせば、その行為が「火に油を注ぐ」結果になる。危機拡大の紛争ループである。第一次世界大戦もこれであった。第二次大戦も危機拡大のメカニズムは同じだった。

正義論は不可。ルールが要る。

『特定の価値観を共有する』という普遍化の理念。この理念、というか価値観が現実の前で風化する。新たな価値観が形成されるまで、21世紀を通して、このプロセスが進むものと予想する、というより希望している。

今後の大きな研究テーマになるだろう。


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