2014年5月19日月曜日

自民党・保守本流の「おれがルールブックだ」

保守本流とは戦後日本の復興を演出した吉田茂首相につながる人達をいう。理念的には武力を否定した経済重視主義をとっていて、中国や韓国とは長期間の友好の積み重ねがある。人物としては池田勇人や佐藤栄作、田中角栄といった名前があがる。

保守本流は、永年の自民党政治を支配してきた。派閥としては池田派の流れをくむ「宏池会」や佐藤派の流れをくむ「経世会」が大規模集団である。その保守本流に属する政治家、具体的には古賀誠氏や野中広務氏、加藤紘一氏がこのところ共産党の機関紙『赤旗』のインタビューを受けては安倍政権の政策を批判しているというのでニュースになっている。

主に「集団的自衛権」である。それを行使するなら憲法改正でやるべきだという主張だ。このままいくと、徴兵制復活の可能性も心配だ、と。その前に、「いかなる戦力も保持しない」という9条2項を何とか書き直さないと徴兵制はさすがに不可能と思われるが、とはいえ保守本流の政治家としての立場を考慮すると、当然、そんな意見をもつだろうとは予想できるし、小生もこの意見に尊敬というか、好意のような気持ちを感じる。

もし、戦後日本をずっと支えてきた保守本流政権が、「憲法9条は集団的自衛権をも否定しているのでございまして、従って日本国はいかなる集団自衛行動をとることもできない。政府としてはそう認識したうえで、自衛隊はあくまでも個別的な自衛権を行使するための組織であると、そう考えているのでございます」と、ずっとそんな風に言い続けてきたなら、確かに安倍政権は「ない」といってきた公権が「ある」と言い始めたわけだから、これは自民党が政党として成り立たなくなるほどの大変化である。というか、国会が「それを言うなら同じ自民党内閣として憲法改正案を提案せよ」と言うのが自然である。

しかし、そうではなかった。政府は「権利として持っているが、使わないのだ」と言ってきた。ということは、政権によっては権利を行使するという考え方がそこにはある。安倍総理は保守本流の政治家ではない。だから「使う」と言っている。それを「いや、我々が憲法をどう解釈するかを決めてきたのだから、勝手に解釈を変えるな」と、そこまで言えるか?率直なところ、納得しかねる理屈でござんすなあ。頑固な年寄りの言い分だ。

昔、日本プロ野球で審判に関するトラブルがあって、ある監督が「そんなことが野球のルールのどこに書いてある?」と詰め寄ったところ、その審判は「私がルールブックだ!」と言い返したという。どうも最近の保守本流の発言は、「私たちが憲法だったのだ」、そう言いたいのではないかと、勘ぐりたくなる時がある。憲法は文字でハッキリ書かれてある。書かれていないことは、その時点で国民が選んだ国会で解釈すればよいし、内閣は時代に適合した解釈を憲法の範囲内で提案する権限をもつだろう。

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