2014年5月17日土曜日

「保護」されるものは全て"Vulnerable"である。

先日来、世間を騒がせていた『美味しんぼ』がとうとう一時休載になった。漫画には暴力をテーマとするヴァイオレンス物もあれば、人が次々に殺害されるスパイ物もある。『ゴルゴ13』をその昔小生も愛読していたが、真似をする人間が出てきたら問題だと考える指導層がいなかったのは幸いだ。『ブラックジャック』に日本医師会が抗議をしなかったことも幸いである。『美味しんぼ』という作品を創作して、それを社会に発表する権利を原作者は持っているはずだが、その権利が制限される理由は「公共の福祉」を阻害するからだ。これが理由になっているはずだ。つまりは風評被害だ、な。

しかしだねえ……あの位の漫画表現で傷つくような公共の福祉は、本当に大丈夫なのだろうか、と。正直なところ小生はこう感じる。

一般に傷つきやすいものは「守られているもの」、「保護されているもの」、つまりは弱者なのであるが、その他にも何かの秘密を抱えたものも含まれるだろう。そんなことはないと信じるが、たかが漫画を差し止めざるを得なかった本当の理由は、何か踏んではならない虎の尾を踏んでしまった、開けてはならない秘密の扉が開いてしまうかもしれないと思わせてしまった、伏せてある事柄が露見してしまう危機感を感じさせてしまった……本当にこんな事情は皆無なのでございましょうネエ。

「個人情報保護」に守られて自分の立場が成り立っている人、「特定秘密保護」に守られていることにより支持されている政府、すべて傷つきやすく、秘密の露見によりいつ倒壊してもおかしくはない存在である。そう思われないか?

森鴎外は帝国陸軍の軍医であり最前線に配置されたこともあったようだから、日常でも入浴はあまりせず、その代わりに絞ったタオルで体を拭く習慣があったそうだ。たまには入浴されないとアカで汚れますよと言われると、小生の身体に汚いところなど一点もないと話していたそうである。

森鴎外のような自信があれば、そもそも秘密保護法制などはいらないだろう。『美味しんぼ』に描かれてあることが、すべて真っ赤な嘘であり、完全なフィクションであれば、福島県は平気でいればいいのではないか。実際に発生した風評被害は損害賠償請求すればいいのだから。というか、出版元は賠償責任を怖れたのかもしれない。とすれば、やはり内容に自信がなかったのかもしれないねえ…。

思うのだが、漫画が全くのウソ八百だとして、それでも(実際に県が提訴するとして)裁判所は風評被害による賠償責任を原作者や出版元には課さないような気がするのだ。小学館は毅然としていてほしかった、そして実際に『人気コミック漫画による風評被害賠償責任裁判』を傍聴してみたかったなあ…と、そんな残念な気持ちを正直もっているところだ。

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