その心理ドラマだが、これから1、2年の間に予想される日本の政界を先読みすることほど面白いテーマはないかもしれない。
まあ、国の行く末がかかっている時に「面白い」というのも気が引けるのだが、不安の中で一生懸命に計算をする多数の関係者が繰り広げる人間ドラマは、これは文句なしに面白いのだ、な。
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今月20日に自民党次期総裁が選出される予定だ。ところが、主だった派閥がすべて現総裁支持となり、どうやら無投票で現・安倍総裁が選ばれると思いきや、野田聖子議員が出馬に意欲を示していると報じられている―出馬要件である20名の推薦人を集めるのに苦労しているとのことだが。
・・・詳しいことは分からないが、分かるはずもないが、現時点で(本気で)次期総裁になろうと思う愚かな自民党議員はいないはずである。
安保法案が可決されれば、具体的にどのような措置に関してであれ、違憲訴訟が相次ぐだろうとは今から予測できるところだ。そして、どうも最高裁は違憲判決を出す可能性が高いのではないだろうか・・・。
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実際に違憲判決が出るとする。
司法批判に打って出るマスメディアは皆無だろう。さすがに産経であっても、判決に疑問を呈する辺りが限界と見る。
さて、そこで・・・
政府が一部修正の方針を言明する。その場合、日本の国際的信頼性は失墜し、迷走状態になる。そもそも、この時点で現・安保法案を提出した安部総理以下、幹部はすべて総退陣せざるをえない ― ま、最高裁判決まで時間がかかるかもしれないので、その時の内閣がどうなっているかはわからぬが、訴訟が果たして出てきた時点で打撃は大きいとみる。
「修正の要なし」と言えば、違憲状態にある法律で国防政策を運営することになる。とても持たない。そもそも予算要求ができるかどうかさえ不確実だろう。行政府の徴税権にもクウェスチョン・マークがついてくれば正に「国家の危機」である。というより、直ちに内閣不信任案が提出されるはずだ。
さて、そこで・・・
司法無視の批判を浴びながら「解散!」となれば、結果は大敗だろう。大敗しなければ、司法の権威に傷がつき、日本社会の安定の基盤が損なわれる。
あるいは・・・
不信任案を否決すれば、理屈として司法批判を言わざるを得ず、国民感情を考えればこの路線ももって2ヶ月だろう。そして、いずれかの選挙で大敗して終りとなる。
「この先、行き止まり」なのだ、な。
憲法改正という王道を歩まずに奇道をとった報いか・・・、単なる政府機関である国鉄を改革するのさえ、土光会長を引っ張りだしてから「官から民へ」の理念を旗印に臨調を設け、ゆっくりと舵をきっていった。
内閣による憲法解釈については、再解釈する権利もあると考えるのが理屈だ。そして集団的自衛権は、本来、日本ももっていると考えなければ奇妙である。にもかかわらず、これらのことは全て国民が受け入れることが大前提だ。そして国民の優に過半数は、安保法案を今国会で成立させることに反対しているという結果が、世論調査で続いている。
昭和16年の対米開戦時点で、既に帝国陸軍から退役させられていた「天才的参謀」石原莞爾は、『この戦争は負けますな』と語っていたそうである。
そろそろ出口戦略を考えなければならない時機であるとみる。当事者は大変だろうが、横から見ているギャラリーにはこれほど面白い政治ドラマはない。ま、こう言っちゃあ身も蓋もないってもんでござんすが。
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このような推移がかなりの確率で実現してしまう可能性がある。故に、誰であっても自民党次期総裁には立候補しないはずである。
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