職業生活の終盤に入ってくると、短期の目的に集中することが増える。その分、夢を抱くことは減る。夢が減るので、実際に目覚める前にみる夢もチンマリとツマラナイことばかりを見るようになる。要するに、人間の器が小さくなる。これは悲しいことだ。
悲しいことに、今朝もくだらないことを目覚める前に一生懸命考えていた。ちょっとシミュレーションをしてみたのだな。
もし「お国」が経営管理する公的年金などはなく、各自の創意工夫でやりくりしてきたと仮定すれば、いまどうなっていただろうか、と。
無年金?老後不安?
イヤイヤ、そんなことはない。夢の中では意外といい結果になっていた。そんな筋だったのだ、な。
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毎月の保険料支払い額は高額である。特に年金保険料は高い。
職業生活を40年続けるとする。年金保険料を毎月平均で5万円納めてきたとする。そうすると支払い合計で一年60万円、40年では元本が2400万円になる。これを投資してきたはずだ。それが40年でどれだけ増えているか、投資成果の評価になる。
小生が仕事をしている間には「バブル景気」もあったし、「失われた20年」もあった。グローバル資本主義の繁栄もあったし、リーマン危機もあった。が、もし自分で自由に米株や英株、欧州株にも投資できたとすれば、2400万円を3倍強の7500万円には出来ていたと、これは自信をもって言える。
米株のIBM、GE、Fordは若い頃から憧れの対象であった。英国の鉱山株(Rio TintoやAnglo Americanなど)は大英帝国の薫りがしてやはり持つのが夢であった。
実際にこんな投資をしていれば国にとられるよりは、ずっと資産を増やせていたはずだ・・・いや、全く夢の中でもカネのことを考えるとは、前に投稿した『徒然草』が書いている通りだ。
起きてからYahoo!で調べてみた。
IBMは1980年前後の14ドルから2000年には118ドルまで上昇した。その後、エクセレント企業としての輝きを失っているが、それでもいま153ドル。10倍に上がっている。フォードを買って持ち続けていれば、リーマン危機で後悔していたろう。しかし、1980年前後の0.99ドルの株価が2000年には24ドルにあがった、その後の崩壊の中で半値まで下がった2002年ごろに売却していれば・・・それでも12倍だ。キリがないので止めておくが、もし自分で投資先を自由に選んでいれば、元本を3倍強に増やすことができていたはずだという想定は、小生の感覚では極めて保守的なのである。
まあ、概算で(もし公的年金制度という厄介なものがなければ)引退時に1億円の資産を築いていた、まあそんな人生であったのではないかな、と。それを世界規模で投資をするとして、1割は現金でもち、残り9千万円を手取り4%で回すとする。そうすれば360万円の年間収入となる。いまの前提では年金はゼロだから、引退後は手取り360万円を柱に夫婦二人が暮らしていくことになる。手元流動性は1千万円である。もし世界経済が成長するとすれば、9千万円の資産額が3割増しの1億2千万円に増えることもあり、その場合「成長の果実」はすべて自分自身が獲得できる。
・・・・・・、これは夢の続きである ー まあ、すべて「取らぬ狸の皮算用」ではあるが。
とはいうものの、現実の生活設計と上のシミュレーションは金額的にそれほどかけ離れているわけではない。いや、おそらくはIT株を基本に今の現実よりは多額の資産を築けていたに違いない・・・。
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現実には自身で築けていたはずの財産は「年金積立金」という名の国有財産として管理されている。その国有財産の配当を「年金」として受け取るに過ぎない。そして国の都合で、政治情勢によっては、減額されたりする。
小生の引退後の生活は、自分の収入であったにもかかわらず課税されて(公的保険料とはつまり税負担と変わらぬだろう)国家管理されている財産7割と自分が管理する財産3割によって支えられる計算である。
私人に基礎をおく純粋の資本主義社会であれば、国家が個人を生活面で助けるなどということは絶対にない。自分の人生は自分で、そして家族と支えあって生きる。自分の人生はすべて自分で決めるし、家族との情愛の経済的基盤もここにある ー 故に、「家族」を踏みにじる「徴兵」などという制度と「国家による生活保障」とは表裏一体なのであるが、これはまた別の話題だ。
現実には、生活基盤の7割は国が管理している。
日本は(そして欧州も)すでに「実質・社会主義国」であると感じるのは、むしろ自然な思いではないだろうか。
冷戦終結の先例をみるまでもなく、経済制度として競争優位性があるとは思われない。
今朝の夢もまったく内容のない絵空事ではなかったようだ。しかし、そうはならなかった夢のようなことを改めて本当の夢の中でみるというのは、どういうことだ。「正夢」ではないわな、定義からして。
備考:
基礎年金の公費負担は些末な点なので上では無視している。保険料雇主負担がどうなるかという論点も些事なので触れなかった。