2017年8月18日金曜日

一言メモ: 韓国の対日個人請求権を論理的に考えると

本日の報道によれば
文氏は日本の朝鮮半島統治時代の徴用工に絡む請求権について、「個人の権利は残っている」との韓国の司法判断を踏襲する考えを明言した。
(出所)産経ニュース、2017年8月18日配信

この状況は、1965年の日韓請求権協定にかかわらず元・従軍慰安婦の対日個人請求権は消滅していないという司法判断が2011年8月以降に韓国で下されるようになり、その後の紛争激化に至っていることから、当然予想されていたはずだ。

同協定に関するネット上の解説をそのまま引用すると次のような説明があり、小生の多くない予備知識ともだいたいは合致している。
この協定は、日本が韓国に対して無償3億ドル、有償2億ドルを供与することなどで、両国及びその国民の間の請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と確認する内容である。したがって、戦時中などに生じた事由に基づく請求権は、いかなる主張もすることができない。また、この協定に関する紛争があれば外交経路で解決するものとし、解決できない時は第三国を交えた仲裁委員会に付託することになる。
(出所)コトバンク

もちろんこの解説は日本語で書かれている日本人向けの説明である(に違いない)。

慰安婦問題をはじめ韓国の対日請求権問題は、これまでの経緯をざっと調べれば調べるほど、細密な論点が絡み合い、一刀両断にはいかないことがわかる。

そもそも「戦時中に生じた事由に基づく請求権はいかなる主張もすることができない」という明文があるなら、それと同時に「この協定に関する紛争があれば外交経路で解決する」ものと記述している趣旨をどう解するのか。戦時請求権が完全消滅しているなら戦時請求権に関する「紛争」は起こりうるはずがない。矛盾である。まあ、この辺りに日韓外交の積み重なりが象徴されているのだろう。

「すべての対日戦時請求権は消滅した」と日本が主張し、韓国政府(というより司法府)が個人請求権は消滅していないと、つまり個人の権利の有無がそこで判定されているなら、かつ請求権を有する元・従軍慰安婦は未だ戦時被害を弁済されていない事実が現にあるのなら、まず韓国政府が請求者に代理弁済し、請求権者の不便を解消するのが順番として本筋ではないか。そうすれば、少なくとも韓国内において問題はまず解決される(という理屈だ)。対日請求権が残っていると行政府が考えるなら、支払金額の払戻しを外交ルートで求めるのが協定に沿った最もロジカルな手順ではないか。残るのは純粋な外交問題だけとなる。しかし、そんな措置は勉強不足のためか聞いたことがない。実効ある問題解決をせず少女の彫刻作品を多数展示して記念碑群とするのはどうにも合点がいかない。ロジックが通らない。被害者本人たちより「関係者」がどこか宣伝じみていて美しくない。問題に取り組む韓国・行政府の姿勢全体が杜撰である。国家的名誉も毀損されるのではないだろうか。が、これまた外野席からみたときの美的感性の一例にすぎない。

ま、要するにゴールは最初から動く余地があった。そう考えるしかない。

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