2018年1月11日木曜日

一言メモ: 「慰安婦合意は間違った合意であった」と日本は認めうるか?

予想されていたことだが、韓国の文在寅大統領は2015年12月28日に日本政府と朴槿恵前政権との間で成立した慰安婦合意は「間違った合意であった」と語った。

具体的にはまず元慰安婦達を大統領府に招き以下のように直接的に謝罪した。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が4日、慰安婦被害者を青瓦台(チョンワデ、大統領府)に招請して昼食会を開き、韓日政府間12・28慰安婦合意が「間違った合意」だったとして公式謝罪した。
(出所)中央日報(日本語版)、2018年1月4日17時4分配信

その後、間違った合意ではあるが再交渉は求めないとして以下の発言をしている。
従軍慰安婦問題を巡る日韓合意は両国間の公式的合意という事実は否定できないが、誤った問題は解決しなければならない。
(出所)産経ニュース、2018年1月10日配信

韓国では意見が割れ、日本では概ね批判的な反応が多いようだ。

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韓国が公式に表明したこのような認識を日本政府が共有することはロジックからして不可能であろう。

なぜなら、「間違った合意をした」と日本政府が認めるなら、日本としても「間違い」を犯したことになるからであり、当然の論理として日本の外交責任者の責任問題につながるからだ。合意成立時の外相であったのは岸田政調会長であり、次期首相に最も近い人物と目されている。論理としても、人間関係からしても、無理な筋である。

大体、韓国はすべての失敗の責任を前政権にとらせることができるが、日本では政権が交代しているわけではなく、総理も同じである以上、上のような「間違い」を認められるはずがないとは、最初からわかりきっていることだ。

いや、むしろ話はこうなるかもしれない。韓国が「間違い」だとする内容の合意案に日本が合意したのは、それが間違いだと日本は分からなかったからである。韓国が「間違いではない」とする合意案が実は「間違い」だと日本は思わなかった、つまり日本は騙されたことになる。故に、合意に基づいて日本が支出した10億円を韓国はだまし取ったことになる。こんな主張も相当の論理を有しているだろう。

更に挙げられる。もし朴・前政権の間違いは文・現政権の責任ではないという論理を認めるなら、戦前期・日本政府の責任を占領期を経た後の戦後日本の政府に求めることも無理になるのではないか。70年前になる戦前期の行為の責任を韓国が日本に求めるなら、2、3年前の行為の責任を日本が韓国に求めてもよいだろう。


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色々な観点から無理筋ともいえる無理押しをあえて韓国政府が採ったのは、消去法によれば残されたたった一つの選択肢であったからだと思われる。

この件に関しては日韓の外交当局の間で何の水面下におけるすり合わせもしていない(はずだ)。勝機の検討もなく、正にぶっつけ本番。日本の真珠湾奇襲と同じであるのが奇妙である。

「まあ半年か一年は暴れてみせましょう、しかしその後はわかりません」。これと同じだ。「行くしかないだろう」という点では今回の韓国外交は特攻作戦と同じだ。「正義は我にあり」の道を高々と歩こうと高揚している可能性がある。

あるいは先日投稿したように、韓国は既に中国の外交戦略の一駒になっているが故に、真の目的である中国の国益(≒アメリカの損失≒日本の損失)が韓国の利益としてトリクルダウンすることを期待している、こんな可能性もあるのかもしれない。ならば事大主義である。名誉ある降伏を考えてばかりいる敗北主義的作戦であるともいえる。

いずれにしても、今回の韓国外交は非正規的な戦術であるには違いなく、何かに差し迫られて選びとった結果であるのは確実である。

ということは、日本もまた韓国を外交的に追い詰める姿勢をとっていたということではないだろうか・・・。だとすれば、開戦前夜のアメリカ外交について一部に批判があるように、足元における日本の対韓外交にもまた批判に値するいくつかの点がある、と。そうも言えるかもしれない。

ここまで書いてきて、何となく旧・民進党代表の前原代表が自党凋落の危機に直面して選び取った捨て身の作戦を連想してしまう ー まったく関係はないのだが。あれもまた、後を考えない一期一会、オールインのギャンブラー戦術だったネエ・・・。両方とも相手のある話だ。文在寅さん、北に騙されなければいいけどネエ。人を騙して苦境にたつと、今度は足元を見られて自分が騙されるものだ。

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