川内原発再稼働が、今夏の政治的危機をもたらす可能性は、以前から指摘されていた。内閣支持率の低迷がここ当分は続きそうなだけに、盆明け以降の大きな政治問題になるかもしれない。
噂では首相の体調が悪化していると言う。もしダウンすれば、日本の株価は2割は急落するだろう。
この点に関して、大方のマスメディアの反応は予想どおりである。
安全が保証されないままで再稼働を認めてよいはずがない。
安全基準をクリアしたからと言って、安全であるわけではない。
責任は直接的には事業所が負う。しかし、規制当局も一般の責任はある(と思われる)。
最終的な責任はどこに所在するのかが曖昧なままでは無責任と言うべきだ。
云々・・・
まあ、大体、、こんな感じだ。
要約すれば、リスクを国民に負担させるのは政府が無責任である。これを言いたいらしいのだな。
しかし、このような発想のほうが真の意味で無責任である。日本政府がリスクを引き受ければ、「日本国民」はそのリスクを回避できる、と……こんなはずはないことくらい分からないのだろうか。危険から目をそらしたい(目をふさぎたいと願っている)点は、日本の戦後・左翼的発想から常ににおい立つ共通の迷妄であり、なぜこうなのだろうとずっと不思議な思いでいる。
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再生エネルギーを利用しようが、石油・天然ガスなど化石燃料系を使おうが、原子力を利用しようが、いずれのエネルギーを選んでも、日本全体としてエネルギーリスクを回避することは不可能である。
原発という選択肢をとることの効果は、ある特定のリスク(=原発事故)を引き受けて、別の特定のリスク(=中東リスクなど海運リスク、外交リスク等々)を抑えることにある。二酸化炭素排出、発電コスト面での利点もある(と言われる)。
つまりは、リスクというコストも含めたときの最適なエネルギーを選ぶという問題だ。原発事故をひき起こすかもしれないというリスクも、天然ガスの供給国が日本に対して無理難題を押し付けてくるというリスクも、どちらも日本にとっては大問題であることに変わりはない。そして、どちらも関係者の知恵で予防することが求められていることに変わりはない。どちらが予防しやすいかが今の論点である。
どんなエネルギーを選んでも、日本は常に危険であり、ヴァルネラブル(Vulnerable)である。これが出発点だろう。
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にもかかわらず、民間企業が「勝手に」原発を再稼働させることに拒否反応を示す人たちもいる。それは国が責任を引き受けるべきだという感性に基づいている。
というか、理想的には脱原発にコミットし、安全な再生エネルギーを中心にして国の未来を切り開くべきだという理想が根源にある。
理想は高い。しかし、再生エネルギーを増やせば、電力コストが上がる。これが現在の生産技術だから仕方がない。ところが、同じ脱原発派は、コスト上昇に応じた電力価格引き上げに反対することが多い。電力価格を規制するべきだと主張することが多い。
小生の感覚では不思議なのだが、これらの条件をどう充足すればいいか?目指すべき方向というのはあるのか?
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現在、どの電力会社も「無配」である。配当を支払えない会社の株価は本来はゼロであって当然だ。それでも株価が形成されているのは利益回復・配当再開・株価上昇への期待があるからだ。
もし本当に現状の経営状態が永続化するのであれば、長期的には、電力会社はすべて倒産するか、補助金事業にするか、国家直営にするか、そのいずれかでなければならない。
それでもいいと原発反対派は考えているのであろうと推察する。
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思い切って、戦前期・日本のように「電力国管」を再現しますか?これまた社会民主主義が行き着くべき一つの帰結だ。
しかし、「親方日の丸」の国家直営組織は果てしなく不効率になるものだ。日本経済が丸ごとエネルギー官僚の人質になるだけである。
はっきり言えば、原発部門を電力会社から分離して、JRタイプの、というか日本郵政タイプの「(仮)日本エネルギー機構」の株を国家が保有することで原発に国が責任をもち、そこで生まれる利益を民間の発電事業者への補助金として支給する。そうしなければクリーンエネルギー拡大はできない。
この方向のみが(脱原発派にとっては)採りうる道だろう。が、政府が電力株を買い取れる?・・・民営原発を禁止する法案を通せばよい。そうすれば買取りのための資金はほとんど要らない。
こういう方向を、経済産業省は拒否するはずがない。政治家も嫌がるはずがない。国が関与すれば、その分だけ権力がそこに生まれるからだ。それでも敢えて言い出さないのは、言えばあまりにも本音が露わになるからだ。というより、憲法で保証する財産権不可侵の原則もある。電力株をタダ同然にする法案などそう簡単には出せない。
故に、脱原発論者の方から提案するのが責任ある態度というものだろう。
ただ反対するのは無責任である。慨嘆にたえない。
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