2012年3月9日金曜日

中国経済、いよいよアクセルを踏むか

中国経済については本ブログでも昨年12月1日にこんなことを書いている。
中国の預金準備率引き下げも3年ぶりである。中国のインフレ率はまだなお5%程度と高く、政策当局はこれを4%程度まで押さえ込みたいと考えているはずだ、そのように小生は予測した。だから先進国が対欧州で足並みを揃えるとしても、中国が直ちに金融緩和に動くとは思わなかった。おそらく市場にとっても、中国が参加する形のグローバル協調緩和政策は、ちょっとしたサプライズではなかったか。実際ニューヨークのダウ30種平均は430ドルも上げた。英独仏の株価も3~5%も上げたというから、相当のプラス・ショックではあった。
本日、CNNMoneyではこんな報道が流れてきた。中国の消費者物価である。
NEW YORK (CNNMoney) -- Inflation in China slowed dramatically in February, as temporary price hikes related to Lunar New Year faded.
Consumer prices rose 3.2% from a year ago, China's National Bureau of Statistics reported Friday -- a steep slowdown from a 4.5% inflation rate in January.(Source:  By Annalyn Censky @CNNMoney March 8, 2012: 10:29 PM ET)
同じくBloombergではこんな風だ。
March 9 (Bloomberg) -- China’s inflation eased to the slowest pace in 20 months in February, giving policy makers more room to stimulate the world's second-biggest economy as investment and export growth weaken. 
Consumer prices rose 3.2 percent from a year earlier, the National Bureau of Statistics said on its website today. That was less than a median estimate of 3.4 percent in a Bloomberg News survey of 35 economists and January's 4.5 percent rate. Data in the first two months of the year are distorted by the timing of a weeklong Chinese holiday. 
Moderating inflation pressures may give the ruling Communist Party more room to keep boosting wages and to ease price controls on resources such as energy and water. The government this year may also cut required reserves for banks and the benchmark interest rate, according to Patrick Bennett, a strategist at Canadian Imperial Bank of Commerce in Hong Kong.
“With inflation continuing to trend downwards, it leaves policy makers with fewer obstacles to relax economic policies,” Helen Qiao, Hong Kong-based chief China economist at Morgan Stanley, said before the release. 
・・・
Inflation Target 
Premier Wen Jiabao this week set an inflation target of about 4 percent for 2012, unchanged from last year. The goal takes into account risks from imported inflation and rising costs of land, labor and capital and will leave room to change the way prices of resources including electricity and oil are set, he told lawmakers at the National People’s Congress.
中国のインフレ率は政策目標を下回るようになっている。既に昨年末には準備率引き下げで一歩拡大へとスタンスを変えているのだが、今年ははっきりとアクセルを踏むのではないか。そんなデータが出てきている。OECDの景気動向指数をみても、中国経済はピークアウトしてから既に1年半程度が経過し、経験則的からも底打ちするタイミングに来ている。

ギリシアの債務調整不透明など、暗い話題が続く欧州である。欧州の停滞は中国経済にも影を落としている。そうしたところが、アメリカ経済の拡大トレンドがかなり明瞭になり、中国経済がギアチェンジできるだけの条件がそろってきた。明るい話題も出てきている。

あとは日本の政治。これだけだねえ・・・もう十年一日のように、こればかりである。<持病>ですな、日本社会の。誰の目にも短所と映る行動パターンであれば、日本人は根は真面目だし批判にも弱い、反省もするだろうし、注意もするのではなかろうか。しかしながら、失われた20年はそんな風に過ぎ去ったのではない。バカだ、チョンだと罵倒されながら(ギリシアのようになって)過ごして来たのではない。日本の停滞を招いている主因の一つに日本的ヒューマン・ファクターが挙げられるのだとすれば、それは反面では日本人の長所に数えられる、というか長所だという自意識がある側面が作用しているのだろうと思う。そうでなければ、危機と隣り合わせでこのユッタリとした政治ゲーム。それをじっくりと見守る有権者。余裕ある待ちのスタンス。あまりに奇妙なことである。

正直な所、小生、ギリシアの暴動に時に羨望を感じたりもするのである。

2012年3月8日木曜日

今日の話題は<ボヤキ>です: 司法試験、公認会計士試験、etc.

今日はぼやきを書かせてほしい — 公開している本ブログでぼやくなど、本来はないはずだが、他人のぼやきを目にするのは嬉しくもあり、そんなボヤキは贅沢というものであろうとか、人は色々な気持ちになると思う。それをこそ、小生、密かに喜びとするものである。意地悪だねえ、ほんとに。

× × ×

ぼやきというのは、国家試験と就職についてである。普通、仕事の選択、人の採用は市場メカニズムに任せられている。それゆえ、教育投資をたっぷりとかけて、才能にも恵まれた人は高い収入を得る。誰でも出来る仕事に携わる人は供給過剰になっているので安い給料に甘んじることになる。

医師になるには医学部に進学し、最終的には国家試験に合格し、研修を受けないといけない。研修は(原則)希望する地域で受けることが可能であり、『適正な給与の支給と研修中のアルバイトの禁止などが定められた』(Wikipediaより)。確かに収入としては低額であり、医学書は高額だし、研究の個人負担もあるかもしれない。それでも医師になるための投資支出と、当人が人的資本として成熟していくプロセスとの間には、一対一のパラレルな関係があるように思うのですね。特に以前の過重労働にあえぐ臨床研修医と比べれば「月とスッポン」」である。いろいろあっても、医師になる人、教育する人、カネを出す保護者、支援する政府などのバランスがうまくとられている。そう感じるのですね。

息子は法律家になるためロースクールに通学している。職業に就くには新司法試験を受ける。受けるのはロースクールを卒業した後の5月である。在学中に貸与される奨学金は3月で支給が停止される。卒業するのだから当然だ。合否は夏に判明する。合格すれば11月から10ヶ月間の司法研修が始まる。その研修は昨年度までは特別措置により有給であったが、今年度から制度に沿って無給である。加えて、アルバイトは勉学に集中するとの意味合いから禁止される。そのため生活費が貸与される。貸与された生活費は返済しなければならない。

理屈が通らないと思うのだな。受験後、研修が始まるまでの7ヶ月間、その間の生活費の工面を卒業生ができると期待する根拠は何か?アルバイトか、保護者の支援を期待するという趣旨であろうが、それならば研修が始まったあと、アルバイトの継続を禁止する根拠はなにか?資金が貸与されるからだ。しかし、貸与は当人負担と同じ意味である。当人が負担するのだから、アルバイトを禁じるとか、その人の行動を拘束する権利は国にはないだろう。

どうも医学教育の制度的成熟度をみると法律家養成制度と全くバランスがとれていない。そう感じるのですね。公認会計士の場合は、別の状況でもっと大変かもしれない。国家試験に合格した後、実務研修を2年以上受けることが必要だが、合格者数と受け入れ機関の数との需給がバランスしておらず、そのため『実務要件を充たさない一般事業会社や会計事務所に就職したり、生活のためにパチンコ屋でアルバイトをして生活をしている者』(Wikipediaから引用)が発生している。これが<待機合格者>である。

制度は国が決めるものである。自由契約に基づく市場メカニズムに任せるのではなく、制度を決める以上は、市場メカニズムに勝る結果を生み出さないと存在意義がない。司法試験は、法律専門職に携わる人のスクリーニング機能を果たしている。と同時に、専門的職業人としての品質を保証するシグナリング機能も受け持つものである。このように制度で職業資格を規制するなら、そうすることで社会的にはプラスの価値を生んでいなければならない。専門的職業を、他の職業機会と同じく自由に開放してもよいのである。優秀な人は多くの顧客を獲得し、そうでない人は顧客を失うだろう。政府機関は独自に採用試験を実施すれば良い。それでもよいのである。それよりは現行制度の方がはるかに合理的である。そう考えるに十分な根拠がなければなるまい。

現行の司法試験、公認会計士試験など、国が決めた職業試験制度を眺めると、その不合理性によるマイナスは、制度が保証するプラスを(ひょっとすると)上回っているのではないか。そんな風に感じられるのだ、な。それは近年の制度変更が、まあ「イソギ働き」で、少数の人の大きな声に影響されすぎたのではないか?そんな風にも勘ぐられるのであります。

2012年3月7日水曜日

最近の石油価格上昇を楽観して良い国と悪い国

石油価格上昇は先進国の景気を悪化させる主因である。これほど一貫して確認されてきた法則はない。2008年のリーマン危機ですら、その背景に石油価格急騰があった。石油価格急騰とそれがもたらす景気先行き懸念の高まりがあったからこそ、金融不安は現実のバブル崩壊につながっていった。ここの関連は大事だ。金融激変の背景には、リアルな面での相対価格変動があるわけだ。

その石油価格が再び上昇し始めていて、回復の緒についたと思われる世界経済に冷水をかけている。


ニューヨーク市場(WTI)は上図にみるとおり昨年10月から40%弱上昇した。この急な石油価格上昇が今後の景気回復の足を引っ張らないはずがないという意見が増えている。

ハミルトンによる著名なブログeconbrowserでは以下のような見方が述べられている。
Although the prices of oil and gasoline have risen significantly from their values in October, they are still not back to the levels we saw last spring or in the summer of 2008. There is a good deal of statistical evidence (for example, [1],[2]) that an oil price increase that does no more than reverse an earlier decline has a much more limited effect on the economy than if the price of oil surges to a new all-time high.
実際、上のブログでも指摘されているようにアメリカで販売されている自動車のうちSUVなど軽トラック 部門の動向は2007年の2月よりまだ28%も低い数字である。どうもリーマン危機以降のアメリカ人は、ようやくにして省エネルギーに目覚めたというか、これまでの消費行動とは明らかに変化の兆しが認められる。ここはアメリカ経済をみる上で注目するべきポイントかもしれない。

更に、下の図を拝借させて頂いた。総消費にしめるエネルギー支出の比率をアメリカの家計部門についてみたものだ。


これによれば最近の石油価格急騰を反映して、確かにエネルギー支出の比率は上がっているが、家計の消費全体において今やエネルギー支出は低い割合にとどまっている。石油価格上昇がアメリカ経済を悪化させる経路として、それがアメリカ人の消費行動を急変させる ― たとえば燃料多消費型の大型車から海外の省エネ車に需要が急激にシフトするなど ― といった点が挙げられていた。そのような負のショックは、今後生じるとしてもボリュームとしては限定的であると予想される。

こうしたことから最近の石油価格急騰が回復過程にあるアメリカ経済に重大な負の影響を与えるとは考えにくい。これが趣旨である。石油価格上昇に対する抵抗力はアメリカにおいて随分高まっている。もちろん、このこと自体は、日本経済にとっても一面ではプラスなのである。

反面、日本経済は石油価格上昇に対してかなり脆弱になっている。そう考えておくべきだろう。その理由は、言うまでもなくエネルギー構造の「先祖返り」である。原発再稼働がいつになるか分からない状況で石油価格が上昇すれば、それはそっくりエネルギーコストに上乗せされる。電気料金をあげなければいいのだと単線的に考えてはいけない。エネルギー生産においてより高い石油代金を海外に支払うという事実がある以上、国内の購買力合計は必ず減るのである。当面、電力会社に負担をさせても、それは電力会社の資金繰りを圧迫し、設備投資・更新の余力を奪い、供給余力を低下させて製造業の海外シフトを加速させるだけのことである。復興事業の高まりは、国内の生産を増やすというより、単に日本の輸入を増やし、経常収支を悪化させるだけ、そうなるかもしれない。それが明らかになった段階で急激な円安が始まるかもしれない。もちろん、それは悪夢にとどまると思うが。

天然ガス価格も上がっている ― 密接な代替品であるから当然であるが。

今夏には、多分、新エネルギー計画の大枠が見えてくると予想される。そこで原子力発電がどう位置づけられるのか、再エネがどう加速されるのか、電力買取価格がどのように設定されるのか、産業構造はどのように変わっていくと展望されるのか等々、戦略的に重要な点が決定されることになるだろう。どちらにしても原発再稼働は避けて通れない問題だ。新規建設はまず認められないと予想するが、ずるずると全原発停止のまま放置すると、石油価格急騰が日本の製造業、経常収支、ひいては為替レート、国債市場に<想定外>のショックを与えることになるかもしれない。おそらく当局は経済的というよりか、日本の場合は政治的というべきだが、乱気流(Turbulence)に入った時の強権的アクション・プログラムについて、既に極秘のシミュレーションを終えているはず、小生にはそう思われるのだ、な。

このように、いま日本は相当に、というか非常に危ない橋を渡っている。日本の政治家やマスメディアは悠然と構えているように見えてしまうのだが、事実悠然としているのであれば、彼らがそんな余裕をもてる根拠を、小生は想像できない。

2012年3月6日火曜日

公務員採用抑制 — この涙ぐましいほどの媚態戦術から何をみる?

経済学にフェルドシュタイン・ホリオカのパズルという逆説がある、というよりあった。それは本当に国際的な資本市場が機能していれば、投資は収益率の高い国で盛んになり、収益率が低い国では投資が低迷する。たまたま収益率が高い国の家計があまり貯蓄しないとすれば、資金が余っている国から調達できるはずである。それゆえ、その国の投資水準と貯蓄水準は何の関係もなくなる。経済学のロジックにそえば、こんな予想ができる。しかるに、マクロデータで検証すると、実際は貯蓄率の高い国では投資も高く、貯蓄率の低い国では投資も低い。こんな傾向がみられることをフェルドシュタイン・ホリオカの二人は見いだした。

これはパラドックスである。というより、あったと今では言うべきだ。なぜなら1990年代後半以降、2000年代にかけて、正にフェルドシュタイン・ホリオカが予想したように、投資と貯蓄とは何の関係もなくなったからだ。アメリカは盛んな設備投資、IT投資を行うのに他国の — 主として日本であるが — 貯蓄資金を自由に活用した。そしてアメリカ経済の復権をみごとに果たした。リーマンショックという金融危機到来後は、ドル安に任せることによって、実質的な債務調整というオマケまで演じてしまった。マネーの貸借は時代を問わず行われて来たが、往々にしてトラブルのツケは貸した側が負担するものである。

× × ×

日本政府が進めようとしているリクルート活動を知って、上の話しを思い出した次第だ。本日、以下のような報道がある。
政府は、2013年度新規採用の国家公務員数の上限を前年度から2割超減らし、4700人以下(防衛省採用分除く。以下同)とする方針を固めた。
6日の行政改革実行本部(本部長・野田首相)で、行政改革担当の岡田副総理が全閣僚に協力を要請する。消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革の遂行を目指す野田政権として、行政改革に力を入れることで、国民に増税への理解を広げる狙いがある。 
政府・民主党は2009年の政権交代以降、自公政権時代の09年度に7845人だった新規採用者数を、11年度は09年度比39%減の4783人、12年度は同27%減の5761人に抑えた。12年度は東日本大震災への対応強化のため採用を増やしたが、13年度は改めて、「09年度比で4割超削減する」4700人以下に抑えることにした。
(出所:YOMIURI ONLINE, 2012年3月6日07時56分)
資金繰りがきついときには人の採用を減らし、余裕ができたら人を多めに採用するつもりなのだろうか?

昨晩、知人の警察官OBの人から話しを聞いたのだが、警察でも若手有望人材のリクルート活動に本腰を入れるよし。というのは、退官する人の数が近年急増している背景があるからであり、必要な警察業務を遂行するためには、退職する世代を補充する若手の人材がいる。その若手の人材が警察内部では不足しているという現実があるそうだ。それはそうだろうなあ、と。若い世代はそもそも絶対数が減少している。有望な若手人材の取り合い合戦になっているのが今の状況である。その知人は退官後、リクルーターに任命され、小生が暮らす町を管轄にして道警本部、所轄署が進める人材発掘活動のサポートをするとのことだ。意欲のある人材争奪戦に警察も参入するということだ、な。そしていま、というかそれに反して、日本政府は採用人数を減らすという。バカではないか・・・と。

職員数は仕事の量に応じて最適配置するべき生産要素である。業務計画の見直しなくして、職員採用計画を先にいじるなど、論理的にありえない。 『行政改革に力を入れることで、国民に増税への理解を広げる』ために<職員数>を抑制するというが、その「行政改革」とはどこの官庁のどのような業務の改革なのだろうか?その改革プランが先にあるはずだ。そんなものがあるとは寡聞にして聞いたたことがない。人を減らすことが即ち行政を<改善>することならば、自衛隊だけを残して、他の職員をゼロにしてはいかがか?いや自衛隊だって本当に要るのですか?なければ地域社会が自発的に自衛部隊を作るだろう。そもそも中央政府って本当に要るのですか?ゼロベースで議論することもできるのだよ。ずっとそう言いたいなあ、と、気持ちとしてはもっている。

カネが余ったら、投資先に苦慮して土地にでも投資するかとなる。カネが不足したら、上手な資金調達を工夫することなく、ただ投資を節約する。こんな単細胞的経営者がいれば、企業はあっという間に衰退するだろう。目的に応じて手段は決まる。政策があって職員数は決まる。採用を抑制するなら業務量スリム化を進めるべきだ。労働節約的な行政システム改革を推進すればよいのだ。しかしそんな理念・戦略は語られていない。増税、つまりカネを増やすために人を減らすというだけだ。民主党は日本国政府の管理運営に何の定見も持っていない。その証明ではなかろうかと思う。

一番の疑問は、こんなことをしたいと政府与党が言っていると、そのことのみを報道するばかりで、理屈からして下敷きになっているはずの行政システムの改革方針を確認しようとしないマスメディアの報道姿勢である。「あっ、そうですか・・・」ということで、流しただけかもしれない。しかし、それでは日本のマスメディアが、より一層、低品質・高コスト体質になってしまうのではありますまいか。


2012年3月2日金曜日

日曜日の話し(3/4)

前の日曜日は、16世紀のベルギー ― というか、オランダ ― の画家ブリューゲルの雪の絵の話になった。まるで尻取りのようだが、その頃、日本人による美術創作はどうなっていたか?

時代は戦国時代であるが、織田信長による統一戦争が始まるのは1560年の桶狭間の戦いだとみてよいだろう。とすると、ハプスブルグ家による「欧州制覇の戦い」が繰り広げられたブリューゲルの時代よりは少し後である。信長に見出された天才、狩野永徳は1543年に生まれ、秀吉が日本統一を成し遂げた90年に世を去っている。ブリューゲルと少し重なっている。永徳というと中学校の美術教科書にも載っているはずの唐獅子を思い出すが、晩年の作品「檜図屏風」も渋い。夕暮れ時に燭台の灯の中でほのかに浮かび上がる金屏風はカトリック教会のステンドグラスにも勝るとも劣らぬ荘厳な美的世界を作り出すだろう。

もう一人、水墨画家の雪村周継(1504年~1589年)を挙げるべきだろう。雪村の生きた時代は、そのままブリューゲルが生きた時代と丁度重なり合っている。先日、NHKの「日曜美術館」でやっていた。一枚『列子御風図』を拝借させて頂こう。


画聖・雪舟に対して、画仙・雪村との異称がある。雪村が、晩年、独り退隠の日々を過ごした三春(現・福島県郡山市)には弟の義父母が暮らしている。

下は京都・野村美術館に所蔵されている風濤図だ。これも日曜美術館で紹介されていた。


風濤図
(出所: 野村美術館より)

異なった文化圏に属する異なった人が異なった対象を異なった技法で表現しているが、確かに<美の本質>は人間の生得の観念として存在するのかもしれない。そう思わせる何かがある。

美ではなくて、善についても全ての人間は<善>という観念を生まれた時から持っている。そう考えるなら<直観主義>というか、根は<理性主義>にあると見るが、アングロサクソン流の功利主義とは異なった哲学に立つことになる。

投資不適格判断 ― ギリシア破綻はすでに織り込み

独紙Financial Times Deutschlandではギリシア破綻を予想しつつあるようだ。そのきっかけはS&Pによるギリシア国債評価である。

ヘッドラインは「直近のギリシア引き下げが意味すること」。

Was die jüngste Hellas-Herabstufung bedeutet


ギリシアの第二次財政支援がまとまって、まだ舌の根も乾かないうちに、市場はダメと評価した、そんな論調である。
Den Schuldenschnitt für Griechenland haben die Märkte abgehakt. Dass aber Standard & Poor's den Staat als "teilweise zahlungsunfähig" eingruppiert, ist für Privatinvestoren und Banken des Pleitekandidaten brisant.
先日の財政支援は不十分だという判断である。もう間に合わぬ。
Nun hat es eine Ratingagentur offiziell klargestellt: Griechenland ist zahlungsunfähig. Standard & Poor's (S&P) verpasste Hellas in der Nacht zum Dienstag die Note "Selective Default" (SD). Default bedeutet Zahlungsausfall. Die Einschränkung "selective" - also "teilweise" - beruht darauf, dass der geplante Schuldenschnitt nur einen Teil der Verbindlichkeiten Griechenlands betrifft: Es geht ausschließlich um die Anleihen, die von privaten Gläubigern gehalten werden. Besonders für die griechischen Banken bedeutet das herbe Verluste. (FTD, 28.02.2012, 17:32)
それ故、ギリシアは破綻した。S&Pは明確にそう判定した。先日の債務軽減はギリシアが負担する債務の一部分をのみカバーするに過ぎない。ギリシアの銀行は巨額の資産を喪失するに至るだろう。それはギリシアの銀行資本が毀損されることを意味する。金融不安高まりがイタリア、スペインの危機につながる確率は相当程度あると見るべきだろう。

ドイツで<ギリシア死に体報道>が広まれば、第三次財政支援はメルケル首相がいくら頑張っても、国内を通るまい。これでギリシアの破綻はほぼ確実となったのではなかろうか。破綻から回復するにはユーロから脱退するのが効果的、というよりそうしなければ不可能だ。こちらもまた概ね確実だと見る。

あとは南欧地域の経済成長を支援するための<財政トランスファー・システム>をどの国がいつ発案し、ドイツが合意の意を表明するかである。これが現時点の小生の関心事項。それを表明した時点でドイツ株式市場は大きく下げ、フランス、イタリア、スペイン市場が盛り返す。これは何である、な。欧州政界とつながった投資家の間に<インサイダー取引>の好機が到来することを意味する ― 現時点の日本において東電株もそうである。もし政治が信頼を失い、欧州が混迷すれば、それは世界経済にとってはメガ・リスクとなる。

理屈からすれば、そんな道筋が思い浮かぶが、はてさてどうなることか?

2012年3月1日木曜日

徐々に浮かび上がるグローバル景気の方向

ドイツのIFO研究所が景気動向指数(IFO Business Climate Indicator)を公表した。これによるとドイツ経済の拡大基調は変化なし。特に建設投資が非常に旺盛である。

グローバルにみると、どこも一様にどんどん拡大を辿っているわけではない。とはいえ、概要をみると、やはり昨年夏から急落した景況感は既に底打ちして回復しつつある。そういう判断である。


同じことをOECDの景気動向指数(Composite Leading Indicator)でみると、足もとの景気判断は共通するようである。折れ線グラフの高さの平均線をとおる座標軸には高低差があるが、これは数値化する時の方式によるもので、実質的な意味はない。グラフの示す上下動は概ねパラレルである ― ほぼ同じ経済時系列から構成されている指数だろうから、まあ、当たり前ではあるが。


OECDの指数を見てもグローバル景気は、昨年夏以来の低下局面は、既に底打ちし、今後は回復へ向かう段階にあることを示唆している。

但し、ユーロ圏の経済は既に底打ちしているのかどうか、まだ分からない状況だ。その中で、ドイツ経済は<絶好調>、というほど弱みがないわけではないが、やはりこの背景として<ユーロ安>の恩恵をドイツが(ほとんど)単独で享受している。この点を挙げてもよいのではないか。だとすれば、ドイツ経済の現在の好調は破綻した南欧地域のお陰であるとも言えるわけであり、低生産性地域に対する経常的かつ資本的な資金移転をもっと本気で実行しても、というかそれこそが経済政策の本筋ではないか。そんな方向を予感させるデータである。

もちろんドイツのみについて書いているわけではない。PIGS諸国に対して強い姿勢であると見られる、オランダ、北欧諸国など「欧州の勝ち組」と言われている地域全体のとるべき姿勢が今日の話題である。