2016年6月13日月曜日

米金利: まだ金利引上げのチャンスを探すものなのか?

FRBによる米金利引き上げは、過ぎてみると昨年2015年のある時期に必要な分量でやっておくべきだった、と今は思っているのではないだろうか?


8月には上海暴落。12月に引き上げを決めたら年明けには再び上海急落に端を発するダウ平均の暴落。

「いまは無理だよね』と思いつつ、再引き上げを延期してチャンスを探し、いよいよ上げようと思っていたら雇用統計の悪化があった。ちょっと待つかと思っていると、英国のEU離脱問題がクローズアップされてきた。『いまは無理だよね』に戻ってしまった。

今回の景気循環は世界的には設備投資循環として理解できる。今は過剰設備の状況にある。その中で米経済はほぼ完全雇用状態に近いと判断されている。雇用増加数が伸び悩むのは当たり前だ。完全雇用状態に近づいているのは日本経済も同様だ。4月の全国有効求人倍率は1.34にまで上昇した。全都道府県で1倍を超え、求職者数を上回る求人がある状況であるーそれでも「歓迎できない」と報道されているのは、景気判断云々ではなく、就業構造に関する問題であって、こちらは20年単位で考えるべき構造問題だ。

ま、どちらにせよ常に何かがあって上げるべき金利を引き上げられずにきた。上げるべき消費税率を上げないと決めてしまった。

適切な時期に決めるべきことを決めないでいれば、後になってより激しい反応が出てくるのは経済の常である。

自律調整できたはずのアメリカ経済も、判断の遅れのため完全雇用の制約にかかり、成長率の低下から投資が減少し、消費は旺盛なもののマクロ的には景気後退に入っていくかもしれない。典型的なヒックス的不況に落ちていきそうだ。

逃したチャンスはただ逃がしたという事実だけがあるのであって、忘れた約束事のように遅ればせながら実行しても、もはや事態を悪化させるだけである、と。傍から見ているとそう思うのだなあ。

2016年6月11日土曜日

世界株価と世界経済: 一喜一憂するのは幼稚にすぎる

安倍首相が消費税率引き上げ再延期を決める理由に世界経済の危機をあげたときに(一部を除く)専門家はおおむね『景気はいまそんなに悪くはないですヨ、危機なんてどこにもないです』、そう話していたものだ。

ところが世界の株価は、その後、非常に不安定になってきている。NY市場では連続の下げであり、それを受けて東京市場も低下を続けている。

 JPモルガン・プライベート・バンクの米株式ストラテジスト、ナディア・ロベル氏は「マクロ経済データは強弱まちまちで、英国のEU離脱の是非を問う国民投票も控えている。こうした中で株式市場は、米国だけでなく世界全体のマクロ経済環境に引き続き苦慮している」と分析。「バリュエーションの観点から見ると、利益成長の見込みはゼロかゼロに極めて近い。相場は2月の安値から非常に大きく上げてきたことから、投資家はこれから利益確保モードに入るだろう。昨年夏の相場の変動が大きかったことは誰もが覚えているためだ」と続けた。

(出所)ブルームバーグ、2016年6月11日 

利益成長の見込みはゼロだ、世界全体のマクロ経済環境に引き続き苦慮している、と。これは典型的に「何が起こるかわからない」という状況だろう。昨年夏の上海暴落のトラウマがあり、今年は英国のEU離脱の是非をとう国民投票がある。世界には先行き不安が広がっているのは事実である。

文字通り、どうなるかわからない。<専門家>の皆さんが言っていたことは、違っていたのではないですか、というわけだ。

ここにきて国際商品市況の上昇トレンドも変調になってきたことを強調する<専門家>も現れてきた。

まさに一喜一憂。

7月の参院選の後になって、<専門家>が何をどう語っているか?
誰にも予想はできないであろう。
それは現実が予想できないからだ。危機のさなかではないが、危機の入り口(かもしれない)。
何が起こるかわからない、いまは。こう考えるなら首相が言っていたとおりになる。

そうではないというなら、景気回復トレンドに変調はない。BREXITも大丈夫だ。中国も大丈夫だ。商品市況もまた持ち直す。そう主張し続けなければならない。そう主張する人は「消費税率10%、上げられる」というべきだ。

しかし、<専門家>はえらく慎重になってきたようだ。どうなんでしょうね、こういうのは?

そう感じる人は多いのではあるまいか。

まあ、個人的にはこういう時こそ、リスクを取って種まきをするべきだとは思うが。

2016年6月9日木曜日

越後長岡という町の「業」なのか

この夏の参院選が迫り各政党は臨戦態勢、というか既に戦闘モードに入ったようである。
 参院選で共闘する野党4党の党首級が8日、参院選の応援のため新潟県長岡市で合同の街頭演説を行った。長岡などを地盤としていた田中角栄元首相を「政治の師匠」とする生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎代表も駆け付け、生活で側近だった元職で無所属の野党統一候補、森裕子氏への支援を呼び掛けた。ただ、小沢氏は田中元首相の弟子を自任しながら、北陸地方ではない新潟県を「北陸で最大の県」と発言する基本的なミスを犯すありさまだった。
(出所)産経ニュース、2016年6月8日 22時39分

長岡市には前の週末に訪れて、山本五十六記念館、河井継之助記念館を回ってきた。この話題は既に投稿しているが、戊辰戦争、太平洋戦争と長岡に縁のある人はいつも奮戦し、討ち死にしているところに一抹の悲哀を感じるのは、歴史好きなら共通の心理だろう(と思われる)。考えてみれば、田中角栄という政治家もそうである。政治的な意味合いではあれもまた一つの討ち死にではなかったか。

田中角栄記念館は既に柏崎市西山町に開設されている。柏崎市と長岡市は30キロはなれているので別の街だ。旧幕時代には柏崎市は親藩の越後高田藩、長岡市は譜代の長岡藩にあった。幕末には両藩は敵味方に別れたが、高田藩では長岡藩に対する同情の気持ちが強かったと伝えられている。長岡に本社を置く越後交通は政治家・田中角栄と深い縁があり、田中本人が社長をつとめたこともある。長岡市のホテルはホームページ中の観光案内で田中角栄記念館を紹介している。田中角榮もまた長岡・柏崎を含む北越から輩出した政治家であったわけであり、ひょっとすると長岡市にも政治家・田中角栄を追憶する施設ができるかもしれない。

そうなれば、河井継之助、山本五十六、田中角栄と近代日本で奮戦空しく散った悲運の人材三人がそろうわけであり、歴史好きには実にこたえられない場所になる。

それにしても、弟子の小沢一郎氏が新潟県を北陸に数えたという間違い・・・、新聞というのは細かいことを言うものだねえ。まあ、確かに新潟県は「関東甲信越地方」であり、「北陸地方」ではないことに行政区分上はなっている。他方、電気は東北電力から買っている。直江津までは北陸本線が通っていた ー 2015年3月からは金沢が終着となった。

古い呼び名では、福井県が越前、富山県が越中、新潟県は越後である。そして新潟・山形の県境には鼠ヶ関があった。太平洋側では福島の勿来関を越えればみちのくであったと同じで、日本海側では鼠ヶ関を越えればみちのくという感覚だったのだろう。山形県は出羽国である。要するに、新潟県までは「越ノ国」、ひと続きの北陸の土地として京の都の人々には認識されていた。

「新潟は北陸」としてとらえても感覚的にはマッチしている。それが自然であって、「間違い」というのは役人根性に過ぎる。

話が脱線した。その北越の政治家・田中角栄を師匠とする小沢一郎氏が、今回また再び長州・山口県出身の政治家・安倍晋三氏と対決する。そして、(おそらく)敗北するのであろう。越後長岡と縁ができた政治家の悲哀であるとすれば、これまた長岡という土地がもっている「業(ゴウ)」かもしれない。

2016年6月8日水曜日

財政赤字のツケはいよいよ直接国民に回る情勢になってきた

日本のメガバンクの筆頭である三菱UFJが国債入札の特別資格を返上するとの報道あり。
 三菱東京UFJ銀行は国債の入札に特別な条件で参加できる資格を国に返す方向で調整に入った。日銀のマイナス金利政策のもとで国債を持ち続ければ、損失が発生しかねないためだ。国債の安定消化を支えてきたメガバンクの「国債離れ」は、市場から大量の国債を買い上げてお金の量を増やしてきた日銀の異次元緩和に影を落とす。

 特別資格は「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」と呼ばれる。発行当局と意見交換する場に参加できるなどの特典がある一方、発行予定額の4%以上の応札を義務づけられることが、三菱東京UFJ銀の重荷になっていた。

 今回は財務省も資格の返上を受け入れる見通しだ。プライマリー・ディーラーには現在、メガバンクや大手証券など計22社が名を連ねている。日本の金融機関が資格を返上するのは初めてだ。これまでは外資系証券が本国のリストラなどで撤退した例のみだった。

 系列の三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券は投資家に国債を販売する業務を担うため資格を維持する。
(出所) 日本経済新聞、2016年6月8日

民間金融機関の「国債離れ」は既に2年前から伝えられていたことだ。

5月14日に3メガバンクグループが発表した2014年3月期の決算は、いずれも最高益を更新するという好決算だった。一方、貸出とともに各銀行の収益源となっている市場運用では、3グループの間で興味深い違いが出た。 
最大のポイントは国債保有残高の動向だ。三井住友フィナンシャルグループは13年3月末の26.2兆円から14年3月末で13.8兆円まで減らした(三井住友銀行単体ベース)。金額にして12.4兆円、実に約5割の減少だ。一方、みずほフィナンシャルグループは8.8兆円(みずほ銀行とみずほ信託銀行の2行合算ベース)、三菱UFJフィナンシャル・グループは8.1兆円(三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行の2行合算ベース)減らした。
いずれも金額ベースでは8兆円以上というドラスティックな減少額だが、前期末比での減少率でみると、みずほが約3割、三菱は約2割と、三井住友ほどではない。
メガバンクに限らず、国内銀行は資金需要の低迷を受けて貸出が思うように伸びず、預金量が貸出量を上回る預金超過の状況が常態化してきた。そのため、貸出に回せなかった預金の一部は安全資産である国債投資に振り向け、その保有残高を膨らませてきた。 
にもかかわらず、メガバンクがこの1年で急激に国債の保有残高を減らす方針に転じた背景にあるのが、昨年4月に日本銀行がブチ上げた大量の国債買い入れによる金融緩和だ。黒田東彦総裁が「次元の違う金融緩和」と述べたが、巨額買い入れを支えたのが、3メガバンクグループによる大量の国債売却だった。 
日銀の異次元緩和によって、国債発行残高に占める日銀の保有割合は18.6%(13年12月末)と1998年6月末の19.5%に次ぐ過去2番目の高さに上昇した。デフレ脱却を目指す日銀は、国債買い入れによる金融緩和を今年も継続する。 
そこで気になるのは、メガバンクが大量に売り、それを日銀が買い取るという構図が今後も続くのか、だ。
 (出所)東洋経済オンライン、2014年5月16日

銀行は日常業務で国債を担保に使用することもあるので、最小限の国債は保有しておく必要がある。言えることは、資産運用としての国債保有は過去のことになりつつあるということだ。

今回の三菱UFJの決定は、日本のメガバンクが国内のカネ余りの捌け口として日本政府の国債を買っていく、結果として財政拡大が日本の景気を下支えしていく、こういうマクロ経済戦略は継続困難となってきた。こういうことである。

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ひと昔前(まだそんな過去ではないか?)には、政府の赤字国債で助かるのは一般国民、国債利回りの急激な上昇(=国債相場の急落)で損失を被るのは、国債を買うしか経営能力のない銀行、そして銀行を当てにしている株主たち、つまり日本の富裕層である。そんな話が井戸端会議をにぎわせていたものだ。

しかし、日本のメガバンクはもう財政破たんで直接には損失をこうむらない ー 全く被らないというのは日本に本店を配置する限り無理であろうが ー 政府の動きに対して頑健な体質をつくりつつある。

ということは、日銀が国債を買うしか政府は財政を運営できない。いつか限界が露呈した時、日銀が国債評価損を引き受ける。日銀を倒産させるわけにはいかないので、政府が税金で日銀を支える。

日本の財政も、単に銀行にしわ寄せするという段階から、日本の国民にダイレクトに負担を求めるという段階になってきた。

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消費税が8%とか10%とか、焼け石に水のような細かな話があるかと思うと、年金額を4割減額するとか、保険料を3割アップするなど出来そうにない議論があったりする ー そもそも年金額を4割削れるなら、消費税率を8%から10%に引き上げることで迷うはずがあるまい。

予想できるのは、相続税率の引き上げである。消費税率の引き上げより、やってみれば相続税率の引き上げのほうが、それも累進的な引き上げのほうが、社会的抵抗は小さいはずである - まあ自民党には無理かもしれないが。

ただ子供であることを理由に親の資産を継承できるという判断がいつまで社会的に容認されるだろうか?それでなくとも、資産の不平等は所得の不平等よりも高い。

個人金融資産は1700兆円。実物資産を加味した正味資産では2700兆円(2014年度国民経済計算確報、ただし個人企業を含む)。他方、国債残高は840兆円。個人が保有する資産は、いずれ誰かが相続する資産である。

親の死に際して親の資産を国が奪うのは一種の暴力であるには違いない。相続税率100%というわけにはいかないであろう。それでも、相続税率引き上げで財政が再建できるというとき、日本国民の何パーセントがその方向に反対するだろうか?相続財産などあまりないという子弟のほうがずっと多いのだ。

私有財産権はなるほど神聖だが、親の資産は子の私有財産では決してない。

・・・・・・田園調布や成城学園、芦屋や帝塚山などいわゆる「高級住宅街」が消え去っていくときは予想するよりずっと近い。そう思っているところだ。地方都市の名士が代々住んだ豪邸もいずれ文化遺産として市町村の保有になるだろう。

世代全体として今の高齢世代は財政赤字で得をしてきた。最後に資産をお国に納めて(子供は落胆するだろうが)、生涯収支のバランスをとるなら、必ずしも将来世代に迷惑をかけるとも言えないのである。

・・・ ・・・

ウン? みんな国有財産になってしまう? そんなことはない。
収納して公有となった実物資産は、若くて野心がある能力のある人に払い下げればよい。この時点で政府の債務と相殺されて財政は再建される。

何パーセントか、外国人に払い下げれば刺激的だろう。こうして資産は再び民間で稼働する。払い下げられた新たな企業家が分割払いで国に返済すればよい。

2016年6月6日月曜日

新潟県: 観光地ではないがお薦め訪問地

下の愚息が新潟市にいるので週末に旅行をした。とはいえ、新潟市は観光地としてそれほど有名ではない。愚息から評判の良い温泉地をきくと、たとえば瀬波温泉はどうかという。自分も泊まったことがあるが、相当良い、と。それで温泉地のある村上市に一泊し、二泊目は新潟市内に宿をとった。

村上の宿はお薦めの汐美荘にした。確かに接客サービス、館内の清潔度、料理の味と量どれをとっても秀の評価に値する。




佐渡島は、思ったよりずっと島影が小さい。郷里の四国・松山の正面に見える興居島は佐渡島よりずっと小さな島だが、一軒一軒の家まで見えるかと思うほど近くにあるので、港に立つと視野全体の何割かを島が占めるほどに大きい。それに比べると、佐渡島はずっと遠くにあり、写真にそのまま撮ると写ったのか映らなかったのか分からない。

芭蕉の名句
荒海や 佐渡によこたふ 天の河

本当に佐渡の島影が眺められたのか疑わしくなった。(見えないが)佐渡があるはずの西の空には天の川が銀漢下り落つるようにかかっている、そういう叙景の句ではないかと今は想像する。


汐美荘は夕映えの美しさを謳っている宿である。しかし、季節は夏至の近く、日没を待っていてもなかなか日は沈まず、夕食の時間が近づいてくる。食事前には温泉入りたいので、この位でいいかと撮影したのが、下である。




温泉に浸かっているうちに更に荘厳の度合いを増したのが残念だった。

村上市は新潟県最北端にある町である。新潟市に戻る列車をまっていると向かいのホームには酒田行きが停まっている。



ちょっとした旅情を感じる。『鶴岡、酒田は行きたいところなんだよね。昔の庄内藩でね、やっぱり戊辰戦争の激戦地だったんだよ』、連れのカミさんと話す。

新潟市に戻ったその日は、愚息の運転で弥彦神社をみておく。





風格があって規模の大きい神社である。昔の越後一宮で、主祭神は天香山命(アメノカグヤマノミコト)である。この神は神武東征にも功績があったそうで、武士や軍人にも崇敬され、今に至っているよし。境内には古い杉の巨木が林立し、年代の古さは一目瞭然としてわかる。交通の便が悪いにもかかわらず、言葉の響きから察すると中国からの観光客だろう、ここ弥彦神社にも大勢来ていたことには、一寸吃驚する。

三日目は長岡に行く。歴史好きな小生は新潟ときけば当然に長岡市である。山本五十六、河井継之助、更には米百俵、良寛とくる。食べるほうでは、ヘギソバである、な。




敗戦の将となったが、歴史に名を残したの河井をはじめとする長岡藩士、藩士の家族達の本望であったには違いない。が、それにしても、このような家屋で、このように展示されているのは、気恥しく思うのではないかねえ・・・、親切な高齢のボランティア(だろうか)のお爺さんが、丁寧な解説をしてくれた。ありがたいことであった。『長岡藩は、7万石しかなかったんです、越後高田藩はずっと大きくて、親藩だったんですから(投稿者注:戊辰戦争当時は譜代の榊原家が統治)、そこが西軍に裏切るなんて情けないことでしたろう』。小生の田舎は、やはり親藩の松山藩である。一戦して大した損害も受けなかったのにすぐに降伏して、土佐藩に占領されてしまった。子供たちは『いくさをしたら、マの字に、ケの字・・・』、こんな手毬り歌をうたって遊んだと、司馬遼太郎の『坂の上の雲』には紹介されている。田舎は松山ですとは・・・言えなかった。

いま長岡城があった場所にはJRが通り、駅舎が建っている。新政府の意地悪であったのかもしれない。

『幕末で町は全部焼け、太平洋戦争でも空襲をうけてすべて焼けてしまいました。運の悪い町です』と笑いながら語る説明員のおじいさんの声が耳に残った。


長岡は生真面目な町である。
歴史好きにはこたえられない。










2016年6月2日木曜日

確かに今回の景気後退は2008年とは違う

2015年以来の景気後退はー内閣府による公式の景気基準日付では前回の景気後退はまだ2012年3月から11月までの期間であると認定されているままなのだがー確かに2008年9月に発したリーマン危機とは違う。

典型的な設備投資循環であると言えるだろう。

景気循環観察の古典的手法は商品市況に着目するもので、実質GDPの前年比に基づく議論は第2次大戦後に発達した方法である。どちらが正確であるか、それぞれ一長一短である。ここでは主要品目の国際取引価格を簡単にみておこう。

まず石油。引用元はすべてNASDAQである。



Source: NASDAQ

最近の石油関連株価の上昇は石油価格の反転が背景である。

次に、銅。


銅の国際価格は、設備投資、特にインフラ投資を反映して変動する。

石油価格と同様、リーマン危機の後に急落した後、ごく最近に至って底打ちしたかという図になっている。ただ、銅は石油に比べて、それほど明瞭には2009年から2016年に至る投資循環が形として表れていないともいえそうだ。むしろ、2011年にピークを付けてからは低下トレンドを辿っている。これはリーマン危機後に拡大した中国の公共投資(及び投機)によるものと推察される(詳しく確認してはいないが)。

さらに木材。


こちらは石油価格とほぼパラレルな変動を示している。ただリーマン前の価格急騰は見られず、むしろ2008年にはピークアウトしていた。石油価格に対する木材価格の先行性が認められるところは実に面白い。むしろリーマン後の価格上昇が目立つが、これも銅価格と同じく、中国の建設投資を反映していると憶測される(これまた詳しく確認はしていないが)。

小麦価格をみておこう。


リーマン危機後に急落しているのは同じである。その後の変動は銅価格に近似しているようである。2016年に入って、ごく最近の動きをみると、やはり3年に及ぶ低下を経て底打ちの気配が認められる。

このように、世界経済はリーマン危機による恐慌を谷とする中期設備投資循環の谷を過ぎようとしている段階だと思われる。

その意味では、これから更に世界経済が深い底に落ちていくという見方は現実的ではない。ただ、これにも条件があって、中国経済が輸出主導型高成長経済から国内消費主導型中成長経済にソフトランディングできるかどうか。そのマネジメントに失敗しないかどうかによる。ほかの新興国にもそれは言えることである。いま心配されているのは、経済的不安定が容易に政治的不安定に直結し、マネージできる課題がマネージできず、問題が危機になるという事態であろう。

いずれにしても、2008年の恐慌は、設備投資循環と建設循環が重なり合って谷を構成し、それとオーバーラップして「金融工学」という発展途上のテクノロジーの未熟さが露呈したところに発現したものであった。だからこそ"once in a century crisis"、「百年に一度の危機」であったわけだ。

今回の景気後退は特性が違う。ただ、日本が高度成長から中成長に移る境目で生じた「40年不況」を乗り越えるため、政府は戦後初めて赤字国債発行による補正予算を編成し、山一証券倒産を防止するため日銀特融にも踏み切った。政策決定面におけるこの種の飛躍は、多分に当局の人間的要素に依存するものである。

問題解決に失敗し、後退が危機に転化してしまう事態は、珍しいことではない。その意味では、世界経済はいま危機のすぐ傍にある-危機そのものにはないとしても。そう言おうとすれば、言ってもいいよね、と。これを間違いであると決めつけるなら、そちらこそ「間違い」であろう、と。

これも一つの観点だろう。
そんな風に見ているところだ。

ただ、まあ・・・、あえて言うなら、「軽減税率」も決まっていることだし、消費税率の10%引き上げは可能なんじゃないの?そうは思っていたので、やはり「再延期」は意外感があった。延ばすなら、その分、軽減税率の余裕はなくなるんじゃないの?そう思ったりもする。



2016年6月1日水曜日

中国株価の見通しが難しいのだが

昨日は安倍首相がサミットで発言したという「リーマン前」発言はなかったという話が出てきた。「何だかおかしいよなあ」という声に屈したのだろう。

しかしながら、だ(小生がへそ曲がりであるのは自分でもわかっている)。
On Monday, the Shanghai A-Share Index slipped under the neckline of an intermediate head-and-shoulders top, sliding through a very thin Ichimoku cloud. Not surprisingly, volatility is at its highest in two months. The move adds weight to a view that over the medium term a trading band between 2,750 and 3,200 points is being established. However, we shall also allow for cautious probing down to the psychological 2,500 level, maybe even 2,200, acting as a magnet because this index is still in a long-term bear market. Downside pressure increases if we hold below the neckline, then below the lower edge of the cloud. This should push the index down to the lows of January and February at 2,750 points.
Source: South China Morning Post, 2016-5-10

上海市場の株価が2500を割るかどうかが心理的節目になるかもしれない。5月中旬の時点でそう見ている。どちらにしても上海市場は中期的な視点では依然として弱気でみるべき市場である。そんな見方が示されているーもちろんこの見方も多数の見方の中のサンプルでしかない。現実には、その後2800台から昨日は2900台に戻している。ではあるが、2015年に5000超まで暴騰した株価は明らかにバブルである。そのバブルが崩壊したことも明らかだろう。にも関わらず、まだなお3000近くの水準にある上海市場は調整不足である。これまでの経験則から憶測すればピーク比▲70パーセントの1500に向かって低落中であるとすら見るべきなのではないか・・・。

東京市場の株価は特に最近は上海市場とシンクロしながら変動していることが観察されている。実際、みずほFG社長も『リーマン級危機はすごく意識している』と日本経済新聞(5月30日付け)で述べている。そこではこうも述べている。
 みずほの方針転換を促した一つは「歴史観」だ。“経済危機10年周期説”。1987年の株暴落「ブラックマンデー」、97~98年の「アジア通貨危機」、そして2008年の「米リーマン・ショック」。佐藤社長は「見事に10年ごとに大きな危機が起きている。これは単なる偶然じゃないと思っている」と解説する。
 根拠は「資本主義は成長の過程で必ず負のエネルギーをためていくので、時々はき出さないと次の成長に向かえない」という考え方。米リーマン・ショックが起きたのは8年前。あと2、3年で10年目を迎える。「危機的なモノがここ数年で起きると思う。それをいち早く見つけた者が生き残れる」と強調した。
経済予測は天気予報よりもっと当たらないものだーマクロ経済理論の看板をかけてはいるものの、実際には「マクロ経済の一つの見方」くらいにうけとるのがよい。理屈とは別に、経験則が侮り難いということはビジネスに身を置いていれば納得するものである。

他方、投資家(投機家?)として著名なソロス氏は今年4月時点でもなお以下のように語っている。
著名投資家ジョージ・ソロス氏はこのほど、中国政府は大量失業が経済に大きなダメージを与えることを認識しており、失業者の受け皿としてサービス業の発展を促進していると指摘。これが中国の金融危機の爆発時期を先送りすることになるが、結果的に規模を拡大させる恐れがあると警告した。
ソロス氏は、サービス業が製造業の失業問題をすべてカバーできないと強調。また、経済の安定成長を維持させるため、中国政府が貸し出しペースを加速させていると指摘し、これが大きな金融危機の発生につながると警告した。
一方、ソロス氏は自身がアジア通貨を空売りしていると宣言しており、中国経済にネガティブな見方を示したほうが自身に有利だとの見方も出ている。
(出所)ロイター、2016年4月26日

これまた、多数の情報の中のサンプルに過ぎない。自分が思うとおりのデータを探して、自分の見方に合致するデータを実証的根拠として示しても、単なるデータマイニング、いやもっと悪質なデータクッキングに堕してしまうのは明らかだ。

それでも、上のような見方がある以上、「今はリーマン前のような雰囲気があることを否定できません」という意見を一笑に付すとすれば、素人ならいざしらず、もし経済専門家でありたいというなら、失格であると言わざるをえないだろう。

特に、今後1年間は何があるか分からないというのが、現時点の不透明さを表現する適切な言葉だと思うのだ、な。