典型的な設備投資循環であると言えるだろう。
景気循環観察の古典的手法は商品市況に着目するもので、実質GDPの前年比に基づく議論は第2次大戦後に発達した方法である。どちらが正確であるか、それぞれ一長一短である。ここでは主要品目の国際取引価格を簡単にみておこう。
まず石油。引用元はすべてNASDAQである。
Source: NASDAQ
最近の石油関連株価の上昇は石油価格の反転が背景である。
次に、銅。
銅の国際価格は、設備投資、特にインフラ投資を反映して変動する。
石油価格と同様、リーマン危機の後に急落した後、ごく最近に至って底打ちしたかという図になっている。ただ、銅は石油に比べて、それほど明瞭には2009年から2016年に至る投資循環が形として表れていないともいえそうだ。むしろ、2011年にピークを付けてからは低下トレンドを辿っている。これはリーマン危機後に拡大した中国の公共投資(及び投機)によるものと推察される(詳しく確認してはいないが)。
さらに木材。
こちらは石油価格とほぼパラレルな変動を示している。ただリーマン前の価格急騰は見られず、むしろ2008年にはピークアウトしていた。石油価格に対する木材価格の先行性が認められるところは実に面白い。むしろリーマン後の価格上昇が目立つが、これも銅価格と同じく、中国の建設投資を反映していると憶測される(これまた詳しく確認はしていないが)。
小麦価格をみておこう。
リーマン危機後に急落しているのは同じである。その後の変動は銅価格に近似しているようである。2016年に入って、ごく最近の動きをみると、やはり3年に及ぶ低下を経て底打ちの気配が認められる。
このように、世界経済はリーマン危機による恐慌を谷とする中期設備投資循環の谷を過ぎようとしている段階だと思われる。
その意味では、これから更に世界経済が深い底に落ちていくという見方は現実的ではない。ただ、これにも条件があって、中国経済が輸出主導型高成長経済から国内消費主導型中成長経済にソフトランディングできるかどうか。そのマネジメントに失敗しないかどうかによる。ほかの新興国にもそれは言えることである。いま心配されているのは、経済的不安定が容易に政治的不安定に直結し、マネージできる課題がマネージできず、問題が危機になるという事態であろう。
いずれにしても、2008年の恐慌は、設備投資循環と建設循環が重なり合って谷を構成し、それとオーバーラップして「金融工学」という発展途上のテクノロジーの未熟さが露呈したところに発現したものであった。だからこそ"once in a century crisis"、「百年に一度の危機」であったわけだ。
今回の景気後退は特性が違う。ただ、日本が高度成長から中成長に移る境目で生じた「40年不況」を乗り越えるため、政府は戦後初めて赤字国債発行による補正予算を編成し、山一証券倒産を防止するため日銀特融にも踏み切った。政策決定面におけるこの種の飛躍は、多分に当局の人間的要素に依存するものである。
問題解決に失敗し、後退が危機に転化してしまう事態は、珍しいことではない。その意味では、世界経済はいま危機のすぐ傍にある-危機そのものにはないとしても。そう言おうとすれば、言ってもいいよね、と。これを間違いであると決めつけるなら、そちらこそ「間違い」であろう、と。
これも一つの観点だろう。
そんな風に見ているところだ。
ただ、まあ・・・、あえて言うなら、「軽減税率」も決まっていることだし、消費税率の10%引き上げは可能なんじゃないの?そうは思っていたので、やはり「再延期」は意外感があった。延ばすなら、その分、軽減税率の余裕はなくなるんじゃないの?そう思ったりもする。
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