2018年3月2日金曜日

公開ヒアリングが公開リンチとな?

厚労省によるデータ分析上の「不手際」が政府の法案撤回にまで発展した以上、ことは大事になってしまった。調査を担当した課長や局長、答弁資料作成にあたった係長や課長補佐クラスは針のむしろにいるような心持ちだろうと推察する。

だから「宮仕え」は嫌なのだ。

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不思議に思っていること。

そもそも「調査原票」らしきものがTVでも流れているが、よいのだろうか?
というか、違法にはならないのだろうか?

「労働時間等総合実態調査」は平成25年度に実施されている:
調査対象は、労働基準法別表第1第1号から第5号まで、第8号から第15号まで、及びその他の事業に該当する主として民営の事業場のうちから、業種・規模・地域別事業場数を勘案して、厚生労働本省において決定された対象事業場数をもとに、各都道府県労働局において無作為に選定された11,575事業場である。ただし、裁量労働制に係る事業場数を一定数確保するため、専門業務型裁量労働制及び企画業務型裁量労働制の導入事業場が優先的に選定されている。
(出所)労働政策研究・研修機構より

類似の調査は平成17年度にも実施されていると説明されている。担当部局には前回の経験というものもあったはずだ ー 経験があったということは、質問項目の設計において、比較のための継続性やテンポラリーな新設質問事項など、それなりの検討を加えたものと思われる。

ただ、定期的に実施される統計調査ではないためだろうか、統計調査の原票は統計調査目的以外の目的には使用できないという大原則の適用範囲外であるかもしれないし、ミクロベースの情報を提供することが調査の目的であるのかもしれない。反対に、調査には必ず混在する異常値、外れ値をも含めて個別データがすでに流出していることがもう既に違法な状態になっているのかもしれない。

もしTV画面にも出ていること自体が違法状態になっているなら、漏出経路などの確認は今後されるものと憶測する、というより期待したいものだ。

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厚労省の副大臣が野党が求めている公開ヒアリングは「公開リンチ」のようなものであると訴えたそうである。

確かに、統計調査とその分析を担当する人たちがTV中継される場で(=公開して)質問、というより野党の国会議員群から詰問されるという場を設けるには、そうしても可であるための法律上の根拠が必要だ。こんな風に論理的に考えると、確かに野党が求めている演出は法的合理性を欠いており、「公開リンチ」にあたるという見方もできないではない。だとすれば、なぜ上の副大臣は、「野党の主張は公開リンチを求める群集心理と違いはないと思うのであります」と、あくまでも冷静沈着にロジカルに訴えないのだろうか?

そこが残念だ。

感情的な議論は百害あって一利なし。そもそも人間社会はロジカルに振る舞おうとしても、一貫した論理を示し得ないモンスターのようなものだ ー この点は既にアローの不可能性定理によって数学的に証明済みである。まして影響力のある人物やマスメディア企業の経営者が政治問題に感情を混ぜて話せば、私たちの暮らす社会がどこに行ってしまうか、予想もつかなくなる。危ない、危ない、剣呑、剣呑・・・

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にしても、ミクロデータ段階で異常値や外れ値が見つかったとして、『これらの明らかな異常値が分析の結論を歪めているということはないのか?」と、この当然するべき質問をしている関係者は小生の勉強不足のせいかもしれないが(マスコミを含めて)一人もいないのだ。本当に一人もそう質問していないなら、唖然とするほどに低品質な話しが世間で進行中であることになる。

統計は大量情報の処理技術である。雑音のようなミスレポーティング(Mis-reporting)、アンダーリポーティング(Under-reporting)、オーバーリポーティング(Over-reporting)が混在する中で、全体の真相をどのようにデータ全体から抽出するかが(ほとんど唯一の)大事な要点だ。

ノイズの存在がデータ収集の失敗を意味すると考えるほどの素人は、そもそもデータ分析なるものに(本来は)関心を持っていないはずである。この対偶をとれば、日頃からデータ分析に関心を持つ人であれば必ず『この異常値は結論にどの程度影響しましたか』と聞くはずである。そう聞いた人がいないなら、本当はみんなデータというものに何も関心を持っていないことを意味する。にも関わらず、しきりに多数の人が詰問しているのは、何か失敗したらしいというので、今だけは関心をもっているためである。この種の素人から公開で詰問されるとすれば、それは集中審議ではなく、「公開リンチ」に該当する、と。上の副大臣の主旨がこういうことであれば、この点は小生も共感できるのだ、な。

それほど国会審議を長年みてきたわけでもないが、小生がずっと昔、側から見ていた委員会でもGDPや物価上昇率が問題になることはあった。そこでは素人の議論をこえる真面目な検討が与野党、議員、政府委員を問わず行われていたように覚えている。質問も本丸をついていてシャープ、答弁もギリギリの線でストレート。答弁資料の文章をどう書くかは(補佐クラスが案を書いていたが今は違うかもしれない)当人の知識、力量、実務能力が問われるものであった。それが質問は杓子定規、応ずる側も逃げの一手になってしまってはネエ・・・、丁々発止の論争になる理由があるまい ー「昔はよかった」というようになったらダメだという好例になってしまったかもしれないけれど。


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話は変わるが、スコッチの大手ジョニー・ウォーカー社が新ブランド"Jane Walker"を新発売することの方が、ずっと実質的に意味のある活動でござろう、な。

働き方を殿中で吟味するときになってから「集められたデータにはノイズが混入しておる」と言い立て、声高にがなり立てる戦法も「ある」といえばあろうが、かたや女性活躍を支援するために伝統ある"Jonny Walker"に加え女性向け新ブランド"Jane Walker"を発売するという決断。まあ、いかさま偽善にすぎぬとは存ずるが、ずっと中身があるとは思われぬか。<勝負>にかける気概があるというものでござる。

それをまあ、こんなデータが混じっているようでは土俵には上がれぬと、北朝鮮の真似をして時間稼ぎをして正々堂々とり組まぬと言うようでは、もともとヤル気がないとされても文句は言われぬて。

政権は ストレスばかり 高まりて
      野党にもどり 安堵して寝る

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