とすれば、組織外の人が組織と接するとき、目で見えるのは「窓口」の人である。その「窓口」は、〇〇さんという名刺を持っていて、どこの部のどの課、どの係にいる人であるかは、仕事の内容によってケースバイケースである。いくら「他の人」の意見を知りたいと思っても、担当窓口と現に交渉や連絡をしながら、Aさんとは話がかみ合わないので、別のBさんと話しをつけて、あとは相手方の組織内部の力関係で決めてもらう、と。こんな交渉スタイルは極めて不作法であるし、こんなアプローチを多数並行してやられてしまうと、やられた方の組織は混乱し、崩壊する。このロジックは当たり前のことである。
あくまでも「窓口」を通して業務を進めるのがガバメント・オフィシャル、ビジネスマンを問わず、守るべきマナーだ。
なので、組織部内の色々な人の間で、ある案件について、賛否が分かれているという状況は日常的にあるとはいえ、この事実は実は重要ではなく、機構図と決裁規則が大事なのである。組織内部の個々の意見の違いは外からは見えない。これが建前だ。
法人の意思は一つであり、二つあるのではない(でなければ契約主体にはなれない)。
この点は正論として真っ当な「仕事」をしている人ならほぼ全員が共感するはずだ。
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しかし、「窓口」を通して決定事項のみをフォローしていては、組織的不正を察知することが困難になる。
もちろん不正防止の役割を果たすために行政では議院内閣制がとられ、株式会社では外部取締役や監査業務、株主総会があるわけだ。しかし、それでも関係者が全員共謀して不正を行う可能性はゼロではない。
ジャーナリズムが果たすべき役割はここにある。
「取材」と称して、(クラブ所属であるのが建前だが)記者が庁内を自由に歩き回れていた時代に小生は仕事をしたことがあるが、今でもそんな状態なのだろうか・・・、分からないこともあるが、当時の雰囲気を思い出しても、個々の人間にアプローチして組織決定とは違う情報をとったとしても、それはそもそも組織的意思決定の中では無意味であることが多いし、大体個々の人間には考え方の違いがあるという点自体は当たり前だ。
何を聞きまわっているのか当時はまったく分からなかった(専門知識を補充して記事を書こうと勉強しているくらいに思っていた)が、そうした状況自体が組織の健全性維持に貢献していたのだろうと、今更にして考え直している。
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それでもマスメディア側は組織として提供している情報以外の内部情報をとりたがるものである。それは政策立案現場でもそうであるし、最近では統計データ関係部局もそうなってきた ー 昔なら考えられなかったことだ。
社会システムからみれば役所や企業の組織的意思決定を経た公式情報のみが重要だ。しかし、世間からみれば公式情報とは違う内部情報を面白いとも感じるし、内部情報と公表内容が違っていれば、不正がそこに隠れている、そんな可能性も想像するだろう。
とにかくロジックとしては、組織的意思決定が外部から見えていれば(差しあたっては)十分なのであり、その最終決定とその後の実行内容が異なっていることこそが不正である。
組織的意思決定に至るまでの中間的な資料の個々の矛盾、違いには実質的意味がない ― 日常的にはそうだということ。時に、何らかの不正を示す兆候となる可能性はゼロでない。が、単なる兆候は確証にはならない。
小生が仕事をしている統計的検定の論理を借用すれば、「不正あり」と前提して情報を吟味すれば、グレーゾーンの情報はクロの前提とは矛盾せず、故にすべてクロである確証になってしまう。普通はこうは議論しない。「正常状態で不正はない」と前提したうえで「このような情報は正常状態からは出てこない」という判断ができるとき、その情報は不正の確証となりうる。
こう考えるのが本来のロジックだ。
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もし内部情報と公表内容が違っていれば「違うのはなぜか」と疑問に思うし、不正が隠れているかもしれない、即ち「疑惑」が生じる、というのは分かる。しかし、その違いは組織的意思決定に至るまでの検討プロセスで生じる日常的な違いである可能性もあるので、その違いが不正を示す確証であるというには、更なる情報が必要だ。
「疑惑」がまだ「疑惑」である段階で、「確証」へ向けての取材努力をしないまま、報道でオープンにするという姿勢は、もし本当に疑惑が真実であったときには証拠隠滅につながる可能性が高い。
「疑惑」の報道は、「確証」をおさえた後で行うのが本筋であり、確証とともにスクープするのがマスメディアとしてはとるべき姿勢である。
・・・とまあ、今回の<第二次森友騒動>に関して朝日新聞が報道している姿勢にはこんな意見が多く出ているようだ。
確かに「不正がある」と前提して資料の内容をみるとグレーがブラックに見える。捜査当局も時折りやってしまう間違いの例であるが、素人はともかく、法廷では通用しない。
朝日新聞の今後の補完報道が待たれるところだ。
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