2019年1月7日月曜日

一言メモ: 「組織戦略論」に落とし穴はないのか?

ビジネススクールの主たる分野の一つは「組織論」である。これは財務・会計、マーケティング、経営戦略と並んで人気の高い領域だ。そして企業組織の戦略的最適性を分析する視点は、多くの場合、国家・社会の組織的最適性に関する議論とも重なってくる。

民主主義の優越性は何からもたらされるのか?民主主義が君主専制/一党独裁よりも長期的に優越するというが、そうであれば歴史の長期にわたって非民主主義国家が安定的に存続してきたのは何故か?民主主義的政体は、何も近代西洋にのみ認められるものではなく、既に古代ギリシア・ローマ社会で曲がりにも選挙による執政官選出が採られているなど、世界は決して近代にいたって初めて民主主義に目覚めたわけではないのだ ― この辺は随分前に投稿したところでもある。

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今日のメモ:

組織的意思決定における最適モデルといえば非常に人気のある研究テーマである。

しかし経験的観察に基づく限り、組織の最適性は環境・状況に依存するとしか小生には思えない。

民主的意思決定の優越性は何からもたらされるかという問題設定より、民主的意思決定が優越する状況とはいかなる状況か?逆に、少数の専門家に任せる非民主的意思決定が優越する状況とはいかなる状況か?こんな問題設定の方が分析やシミュレーションを行いやすい。

実際、国家にせよ、企業組織にせよ、その組織の成長と衰退はその時々の状況のいかんによって様々であり、集団的意思決定が適している時代もあれば、天才的指導者によるトップダウン式の決定が成功する場合もある、というのが経験的事実だと思う。

であれば、組織の最適性はその組織の属性からのみ導かれるものではなく、環境と組織属性とのマッチングで決定される。そう考えるのが理に適っているだろう。

もちろんここで言う「最適性」とは、正邪善悪という規範的価値ではなく、組織の存続可能性を最大化するという実証的価値に沿って使っている。

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人間や社会に関して『こうあるべきだ』などという鉄のような規範は、科学的に考えれば無いと考えるべきだろう。

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