2014年4月15日火曜日

国会議員の収入は高いか低いか

国会議員歳費の減額措置が終わるというので揺れている。

そもそもが日本の国会議員、というより県議会、市議会など地方議員を含めた議員一般の待遇は諸外国に比べて、相当優遇されているという指摘がある。

その指摘は正しいかどうか、統計データを参照して論じるのも面白いが、これまでにもとりあげてきたので、今日は別の観点を覚え書きとして記しておきたい。

議員ではなく一般公務員の俸給は非常につつましいものである。その昔、小生がまだ小役人をやっていた頃、超勤手当は半分もつかないし、毎日の睡眠時間は自宅との往復を入れれば3時間か4時間しかなく、それに官舎といえば聞こえはいいが、外観はぼろぼろで出はいりするのも恥ずかしいくらいだった。いま暮らしている北海道に移住する直前、関西地方の某国立大学に勤務し、その時は大阪近郊の合同官舎に入っていたのだが、ある時期、トイレの水が流れなくなり、直してくれるまでしばらく風呂場の浴槽に残っている水をバケツにくんで流していたことがある。官舎というのは、自分の家ではないから、自費では修繕不可なのだ。

ま、いずれにせよ、国会議員はそれよりはずっとましであり、事務次官より高い歳費を支給されると規定されている。しかし、議員の立場、というか業務の進め方に目を向けると、必ずしも一般公務員と同列には話ができないことも分かる。一般公務員は、大きな組織の中で細かく仕事を分担して業務を進めているので、一人一人の寄与は大きくはないのであって、また仕事がつくり出す価値は、その人の人的能力に加えて官公庁が有しているハード・ソフトの資源全体が併せて使用されて、生まれているものである。

それに比べると、国会議員は政党には属しているが、議員の本務である立法作業を支えるのに、どれほどの資源が投入できているのだろう。議員秘書といってもせいぜいが数人。役所なら局はおろか、一つの課にも足らず、まあ室長程度の規模で仕事をしているに過ぎない、これがほとんどの議員が置かれている状況であろう。これでは、個人商店なみのアウトプットしか出てはこない。だから、必要な人手を雇用するために歳費から自腹をきる。

議員は、国家に雇用される公務員であり、支給される歳費は給与であるには違いない。とはいえ、実態は個人事業主に類似した活動を行っており、判事や検事よりも法律事務所を経営する弁護士により近いと言うべきだろう。だとすれば、概ね2000万円が支給されていると言っても、給与所得控除は大きく認めるべきかもしれず、それよりは経費を差し引き事業所得として所得金額を確定するのが実態に合っているような気もするのだ、な。経費率を半分とすれば、所得はせいぜいが1000万円。最近は、「身を切る」という名目で様々な減額措置がなされ、収入は1600万円ほどであるというから、所得は800万円程度。こう見ると、決して高額でもないであろう。銀行であればまあ係長程度の支給額に近いのじゃあないか。

日本は、むしろ国会議員の数を減らして、一人一人の歳費はむしろ引き上げるという措置も、とんでもないというわけではないようにも感じるのだ。ともかく、何事も思い込みによる断定は禁物である。

もちろん、国会議員は歳費に加えて、立法事務費や文書通信交通滞在費が手厚く支給されている。これらの金額が適正であるかどうかも大事だろう。しかし、官公庁の一般公務員なら、これらの基礎的業務経費に相当する部分は、給与ではなく公費負担として最初から役所が負担している。議員は、たとえば出張命令を受けるわけではなく、大きな組織には属していないので、こうした負担措置はやはり必要だろう。

引き合いに出すからと言って特段の理由があるわけではないのだが、たとえば専門職の代表例として「弁護士」になれば、30歳程度で5000万円程度を稼ぐ人も、決して稀ではないときく。国会議員が果たすべき業務の重要性とのバランスを考えると、確かに非正規雇用者に比べれば高額ではあるが、高給ぶりを非難されるほど高いとは言えないのではないだろうか。マスメディアは、一方ではこういう眼差しもありうることを考慮しながら、冷静にバランスよく報道してもらいたいものである。

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