成果はあったのだろうか?
日米両政府は25日午前発表した共同声明に「日米安保(の対象)は尖閣諸島を含め日本の施政下にある全ての領土に及ぶ」と明記した。「米国は尖閣への日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対」とし、海洋進出を活発にする中国をけん制した。(日本経済新聞、2014年4月25日)尖閣諸島が日米安保の対象に含まれると明記してくれたというので、安倍内閣は「やった、やった」と歓迎しているという。しかし、閣僚が言ってきたことを大統領自ら繰り返したというのだから、実質は何も変わっていない。
TPPは「前進する道筋を特定した」という訳のわからない文言になった。
今回の訪日の成果を要約するとこんな風になるらしい。
日米両政府はTPPの協議結果や24日の日米首脳会談の合意内容を盛り込んだ共同声明を発表した。TPPは「重要課題について前進する道筋を特定した」と強調。安全保障では、沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約に基づく米国の防衛義務の対象であると明記した。(上と同じ)何しに来たのかねえ…そう考える人は多いだろう。それにしても『豚肉が、自動車が』という話を大統領がやってきてからまだやるかねえ。アメリカからみれば失礼な話かもしれない。大体、米の関税引き下げを最初から除外すると決めたのも理念・ロジックにかなわない。
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それにしても北海道新聞などこんなことを書いている。
日米関係を内政に利用する姿勢は大統領も同じだ。TPPがもたらす輸出や雇用への好影響を国内向けに強調する。対決続きの議会をなだめ、自らの2期目の実績づくりを狙う態度が見て取れる。唖然とするほどの理解ぶりではないか。
TPPにはアジア太平洋地域の貿易や投資のルールを打ち立て、中国をけん制する狙いがある。そのために農業をはじめとする日本の産業が壊滅的打撃を受けるのでは本末転倒だ。(北海道新聞社説、4月25日)
確かにTPPにはアメリカ経済を活性化する一面がある。アメリカから日本をみれば、TPPによって日本の農産物市場にアクセスできることになる。これはアメリカの得であるに違いない。だから大統領がアメリカ国内の農家のために頑張っている。確かにそう言ってもウソではない。しかし、日本人はこれを求めてはいないのか?求めていると思うから、日本の農家は心配なのだ。買いたくなければ買わなければよい。買うのはそれがいいから買うのである。それは日本人にとって得ではないか。なぜそれを言わないのか?いえばTPPから利益をうける日本人が、売れ行き不振に陥る農家の数に比べて、あまりに多いという事実が知れ渡ってしまうからだ。
前にも書いたが、農産物聖域5品目を完全自由化すれば、日本の家庭のエンゲル係数は他の先進国並みに下がり、金額にすれば毎年30~40万円程度の恒久減税に匹敵するほどの利益を得るだろう。そして、日本側が農産物を自由化しようといえば、アメリカも自動車、特にトラックの関税をゼロにして応ずることはほぼ確実である。
道新のいう「農業をはじめとする」は事実であるが、「日本の産業が壊滅的打撃」とよくもまあ付け加えたものだ。この感覚には脱帽するしかない。『真面目に議論しよう-TPPは誰がどれくらい得するのか』、そんな24時間特別番組を企画する必要があると思うのだ、な。
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オバマ大統領の訪日成果はゼロなのだろう-密約でもあれば別だが。そもそも米議会で「大統領貿易促進権限(TPA)」法案が通らず、首脳が合意してもアメリカの議会でひっくり返るかもしれない。これじゃあ、日本が真面目に譲歩するのは愚かであろう。この点は無視できない。
この秋の中間選挙で民主党が負ければ、2年間はそのままだから、そこから再開してもいいくらいだ。こうも考えるだろう。
TPPは、次の大統領選挙までほどほどに付き合いながら、それ以外のFTAをまとめていく。中国、ASEANとのFTAのほうが日本にとっては、巨大な恩恵がある。確かにそうだ。
オバマ大統領からみれば安倍総理は使い物にならないかもしれないが、それはお互い様なのかもしれない。全体的には、大統領が失ったものの方が首相より少しは大きいのかもしれない。
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