トランプ政権との関税交渉で「合意」したとの報道があった後も、「合意文書はない」、「四半期ごとに進捗をモニターし、場合によっては関税率を25%に戻すこともありうる」等々、要するに日米二国間の外交案件であるにもかかわらず、どうなるかはアメリカのト大統領の胸先三寸に任せてしまったという実情が露わになってきた模様だ。
この交渉、この関係性、今後結構、もめるンじゃないかネエ・・・と、非常に懸念されます。ただ、合意自体については
日本の石破首相、赤沢大臣、よくやったじゃないかと、日本国内では評価する向きが多いようで・・・
それもそのはずというか、交渉ごとの結果をどう評価するかは、むしろ相手側の反応を観察するとよく分かる。今回の合意については、経済学者・Krugmanもsubstack.comから届いたメールマガジンの中で以下のように述べている、というかボロカスに非難している。
This is clearest in the case of automobiles and automotive products. Trump has imposed a 25 percent tariff on all automotive imports, supposedly on national security grounds. This includes imports from Canada and Mexico. And here’s the thing: Canadian and Mexican auto products generally have substantial U.S. “content” — that is, they contain parts made in America. Japanese cars generally don’t. But now cars from Japan will pay only a 15 percent tariff, that is, less than cars from Canada and Mexico.Google翻訳で日本語に訳すと:
これは自動車と自動車製品の場合に最も顕著です。トランプ大統領は、国家安全保障上の理由から、すべての自動車輸入に25%の関税を課しました。これにはカナダとメキシコからの輸入も含まれます。そして、ここで重要な点があります。カナダとメキシコの自動車製品には、一般的にかなりの量の米国産部品が「含まれている」ということです。つまり、米国製の部品が含まれているということです。一方、日本車には一般的にそうではありません。 しかし、今後は日本車に課される関税は15%のみとなり、カナダやメキシコからの自動車よりも低いのです。確かに、ほとんど米国製部品を使ってメキシコで製造された自動車には25%の関税を課し、米国製部品など何も使わず日本で製造された自動車には15%の関税で勘弁してやるなど「何をバカなことをやっているんだ」と。立場が日米反対なら日本国内では非難轟々だろう ― というより、日本は官僚が細部を詰めるので、いくら「政治家」でも愚かな内容で交渉をまとめる強大な権力は持っていないはずである。
更に、
Wait, there’s more. Trump has also imposed 50 percent tariffs on steel and aluminum, which are of course important parts of the cost of a car. Japanese manufacturers don’t pay those tariffs.訳文は省略するが、わざわざ自動車の米国内生産費を決定している金属製品に50%の関税をかけ続けるというのだから、その分、アメリカは不利になるのに決まっている、と。日本の自動車メーカーは日本産の鋼材を関税なしで買えるのだから、と。 そんな次第で、Krugmanは
Overall, the interaction between this Japan deal and Trump’s other tariffs probably tilts the playing field between U.S. and Japanese producers of cars, and perhaps other products, in Japan’s favor.と締めくくっている。今度の交渉結果は「日本に有利だ」と。文字通り"stupid"だと、まあ散々にこき下ろしている。確かに、経済学の理屈で言えば、ト大統領の政治判断、理屈的には愚かである。しかし、
理屈としては愚かで不合理であるとしても、政治としては「これをやらなきゃならないんだ」、そういう時はある。こういう事かもしれない。おそらくロシアのプーチン大統領もそう、ウクライナのゼレンスキー大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、どの人もそうなんだと憶測する。トランプ大統領も理屈抜きでやっているのに違いない。石破首相が国政選挙で大敗したにも関わらず、首相を続投しようとしているのも、理屈を度外視しているのだろう。そもそも(得体の知れない理想を求めるのは)原理的には非合理的で、理屈に合わず、信じるから信じる、やりたいからやる、そんなものなのではないか。
普遍より主観。論理より信念。利益より大義。知の裏付けも何もない、ないないづくしの「狂人」(?)が、無視されるのではなく、熱狂的に迎えられる時代。こんな時代がやって来たのかもしれない。危ないネエ・・・しかし、「国を守る」とは、そもそも非合理的な動機が根底に無ければ、「張り子の虎」になるしかないのである。愚か者が賢人に勝利する(というより、しうる)ことは、ゲーム論でも「チェーンストアの逆説」で証明されているところである ― 個人的には、「国」なるものは全て「張り子の虎」で大いに結構。むしろそうあるべきだ、とは思っているが。
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